比江島慎にとって激動の2018-19シーズンが終わった。長く過ごしたシーホース三河を離れてオーストラリアリーグに挑戦。シーズン途中に栃木ブレックスに加わってBリーグをセミファイナルまで戦い抜いた。厳しい環境に飛び込み、苦労の絶えない1年となったが、これこそ『世界での戦い』を視野に入れた比江島が望んだ状況。シーズンを終えた心境を比江島に聞いた。
守備に集中し、「オフェンスに余裕がなかった」
──栃木に来て「ディフェンスで苦労した」と話していました。比江島選手はディフェンスも決してできない選手ではないと思いますが、どのように苦労しましたか?
1対1であればやれると思っていましたが、ピック&ロールの守り方とか、スイッチのタイミングだったり、ローポストに入った時の守り方とか結構特殊で。本当にルールが多すぎて、最初はディフェンスに100パーセントをつぎ込んでいました。考えすぎてしまい、オフェンスに余裕がなくなってしまうっていうのはありましたね。
──比江島選手の場合、ディフェンスよりもオフェンス面での貢献のほうが多く求められるイメージです。今シーズンのように、ディフェンスを多く求められることは過去にありましたか?
学生時代はありましたけど、あまりないですね。三河ではプレータイムも長かったので、ディフェンスももちろんやりますけど、オフェンスに余力を残しておくみたいなところはありました。自分がもっと成長するためには、ディフェンスがもっと必要だと思っていました。それを求めていたので、うれしいですね。
──ターニングポイントとなるシーズンを終えたばかりですが、今は身体を休めたいですか? それとも気持ちの張りを維持したまま、オンとオフをそこまで分けないスタンスですか?
いつもは代表の合宿がすぐに始まって、それに参加するので休む間がなかったです。でも今年は初めてと言えるぐらい結構休めるので、ゆっくり考えたいです。
もちろん挑戦はいろいろ考えています。でも、ファイナルの光景を見たら、Bリーグで1回は優勝をしたいっていう思いが今のところ強くなっています。シーズン最初からプレーしたとしても、考えてなくはないって感じです。
2年目の解説は「60点ぐらい」
──ファイナルの話が出ましたが、2年連続でファイナルの解説を務めました。ご自身の解説ぶりも成長しましたか?
自分の中では上手く喋れたかなと思ってます。でも、事故じゃないですけど、ちょっとトラブルがありまして……。イヤホンをつけてやり取りしてたんですけど、それが僕のだけプツンと切れてしまって。会場がめちゃくちゃ盛り上がっていたので全然聞こえなくて、一瞬「ポカーン」としてしまって。僕も適当に解釈して、的外れな答えを言ってしまったんです。ちょっと凹みました(笑)。
──昨シーズンは解説を終えた直後に、インタビューさせていただきました。その際に解説者としての自分を「30点から40点」と自己採点していましたが、今回は何点ですか?
60点ぐらいです。
──トラブルがあったことを考えれば高得点ですね。もちろん解説も大事な役割ですが、やはり選手としてファイナルの舞台に立ちたいという気持ちになったのでは?
それはもうめちゃめちゃ感じました。会場に来るのも実はちょっと嫌だったんですけどね。去年以上に今年は悔しかったですが、そこは仕事だったので。来年はプレーヤーとして、コートに立ちたいです。
「チームは全部イメージ通りでした」
──今でこそ栃木の一員として、違和感がなく馴染んだように思いますが、当初は途中加入の難しさについて話していました。
(喜多川)修平さんがケガをしていたにもかかわらず、僕が日本に帰ってきた時点で1位か2位と、チームは上手くいっていました。だからこそ最初は、自分が必要なのかなというか、何をしたらいいのかって考えてしまったこともありました。
途中出場することにもなっていて、正直もっとすんなり入れると思っていました。思い描いていたものとは少し違いましたけど、ある程度フィットできたし、良いチャレンジでした。
──思い描いていたものと違かったとありますが、それはチームに対してですか?
いえ、チームは全部イメージ通りでした。雰囲気も素晴らしいですし、もちろんファンの皆さんも素晴らしいですし、仲も良い。本当にチーム全員で戦っているという印象です。どんなプレーも気を抜かずにやるし、イメージ通りでした。
チームを勝たせるために来たのに、オーストラリアでも栃木でも結果としては優勝できませんでした。それでも、チャレンジをして成長したと思います。個人としては満足のいく、良いシーズンだったなって思いますね。