アルバルク東京

手堅い試合運びと要所でのビッグショットで決着

アルバルク東京が琉球ゴールデンキングスと激突するチャンピオンシップのセミファイナルはGAME3へともつれた。運命の一戦、琉球の激しいプレッシャーにもミスを最小限に留め、要所でビッグショットを沈めたA東京が72-60で勝利し、2年連続となるファイナル進出を決めた。

第1クォーターは琉球の18-17と、先の2試合と同じ拮抗した展開になるが、第2クォーター中盤に大きく試合が動く。A東京の5点リードで迎えた残り4分、ザック・バランスキーのトラベリングかと思われるプレーで審判が笛を吹かず会場が騒然となる中、田中大貴がバスケット・カウントを沈める。これで抜け出したA東京は、残り1分半から小島元基の値千金となる3ポイントシュート連続成功で、14点リードと突き放して前半を終える。

第3クォーターに入って一度は琉球に流れが傾き、田代直希に3ポイントシュートを決められ7点差にまで迫られる。それでもA東京はこの試合17得点と大活躍の安藤誓哉がレイアップを決めて琉球の流れを断ち切り、終了間際には田中がショットクロックぎりぎりで3ポイントシュートを沈め15点リードと再び突き放す。第4クォーターも崩れることなく手堅い試合運びを見せたA東京がそのまま逃げ切った。

アルバルク東京

「琉球を破る唯一の方法はゲームをコントロールすること」

A東京の指揮官ルカ・パヴィチェヴィッチは、「沖縄でのアウェーゲームは本当にタフだ。激しいだけでなく、スマートにプレーしなければ勝ち上がるのは並大抵なことではない」と振り返り、次のように勝因を語った。

「琉球を破る唯一の方法はゲームをコントロールすること。彼らはとてもアグレッシブかつ激しさを持ったチームで、5分あれば相手を叩き潰すことができる。GAME2は最後にミスをしたことで我々は報いを受けた。今日はゲームコントロールを高いレベルでできた。ターンオーバー4つは、琉球の激しいディフェンスの中で素晴らしい数字と思っている」

さらに指揮官は、具体的に「オフェンスリバウンド、ファストブレイク、スクリーンを使った古川(孝敏)の外角シュートなど注意すべきポイントがある。そして沖縄を倒すにはこれを40分間、高いレベルで遂行しないといけない」と肝となる部分を挙げた。実際、GAME3で琉球のオフェンスリバウンドは9本、ファストブレイクポイントは0点、古川は4得点とプラン通りやるべきことをしっかりやりきったのが大きかった。

あと一歩でファイナルに届かなかった琉球の佐々宜央ヘッドコーチは、「お互いに激しいディフェンスで第1クォーターは拮抗できましたが、第2クォーターに僕らが安易なミスをし、オフェンスで苦しい状況になってしまった」と言う。

そして「後半、もう1回、盛り返すチャンスはありましたが、東京さんのシュートが入っていました。それも実力のうちですし、安藤選手のアグレッシブに行こうという気持ちがあったから決まった」と相手のここ一番での決定力を素直に称える。また、6-21と失速した悪夢の第2クォーターについて「今の僕らとして6点に終わったとしても、あと5点、6点と失点を抑えなければいけなかった」と要所で耐えきれなかったことを悔いた。

佐々宜央

佐々ヘッドコーチ「詰めのところで足らなかった」

パヴィチェヴィッチと佐々は、かつて日本代表でヘッドコーチとアシスタントコーチの関係にあり、佐々はパヴィチェヴィッチを師匠と呼ぶ。試合後の2人の熱い抱擁が、繋がりの深さを示している。

パヴィチェヴィッチは「代表チームで一緒にやりましたが、彼のコーチとしての能力は素晴らしいもの。国際的にも彼のような才能をもった若いコーチを見つけるのは大変というのが私の意見だ。彼は若くしてヘッドコーチとなったが、(琉球の)木村達郎社長のこの決断を称賛する。琉球は佐々の下で、向上している」と愛弟子の手腕を称えた。

さらに「今年のチームは、アイラ(ブラウン)が怪我で3カ月欠場し、(ジョシュ)スコットが離脱した。このような苦境からファイナルにあと一歩まで立て直すのは本当に難しいこと。彼のやったこと、琉球がチームとしてやったことをリスペクトしている」と労をねぎらった。

一方、佐々は、師匠との力の差をあらためて感じたと振り返る。「東京さんと僕らの違いとして、最後まで相手は徹底していましたが、こちらはできなかった。例えばセットプレーを始める前にどれだけ激しくプレッシャーをかけ続けられたか、そういった徹底具合で負けてしまった。それが僕とルカの差です。選手たちは本当についてこようとしてくれていましたが、伝え方がコーチとしてまだまだ未熟でした」

そして、「ルカから僕が教わったことが、インテンシティ、アグレッシブとある中で、一番の鍵であるソリッドネスで差が出てしまいました。ビッグプレーを決める決めないでなく。どれだけ安易なミス、軽いプレーをしないか。そこの詰めのところで足らなかった」と、コーチとしての自らの改善点を冷静に分析した。

Bリーグ初年度の歴史的開幕戦で激突し、今回なチャンピオンシップ史上に残る激闘を繰り広げたA東京と琉球、不思議な縁を持った両チームの関係がこの名勝負によってより発展していくことを願いたい。