ティーマン欠場のピンチにインサイドで存在感を発揮

B1第31節、群馬クレインサンダーズは三遠ネオフェニックスに連敗を喫した。これで3連敗、バイウィーク明けから6勝9敗で東地区3位へと順位を落としている。

2試合いずれもリードする時間帯を作りながら敗れたが、ヨハネス・ティーマン抜きという苦しい状態ではあった。生命線のディフェンスが三遠の爆発的なオフェンスを抑え込むウォーターがあり、このところ低調だった3ポイントシュートも2試合とも成功率が40%近くと上向いている。内容よりも勝利が求められる時期だが、チームとしての戦う姿勢やケミストリーには一定の評価をしていいはずだ。

群馬のヘッドコーチ、カイル・ミリングは「ファウルトラブルもあり、日本人選手だけの時間が多くなりましたが、その中でも最後まで戦い抜けた」と語る。ティーマンの欠場に加えてケーレブ・ターズースキーがファウルトラブルで25分10秒の出場に留まった。群馬には帰化選手のマイケル・パーカーや、日本人ビッグマンの野本建吾がいるが、最終盤でインサイドを任されたのは八村阿蓮だった。

ミリングヘッドコーチは八村起用の意図と評価を次のように話す。「阿蓮はシンプルに素晴らしかったです。オフェンスではストレッチ4としてスペーシングが良くなりますし、フィジカルなディフェンスができる選手ですので、彼を使い続けました」

八村もミリングヘッドコーチと同様に手応えを感じた様子で試合を振り返る。「勝ちたい気持ちを前面に出せた試合でした。相手はリーグ1位のチームですが、積極的にプレーすれば戦えると感じました。僕自身、波があると自覚しているので、これを毎試合続けていかなければなりません。この後の試合も重要なので、前向きに進みたいです」

「積極的なプレーをすると自分の中で決めていた」

今シーズンの八村はウイングのポジションでクラッチタイムに起用されることが増え、この試合のようにインサイドの外国籍選手が欠ければフィジカルを生かしたプレーでチームを支えてもいる。

インサイドプレーヤーとしてもチームから求められることについて「JT(ティーマンの愛称)がいないのはチームにとってキツいですが、そこで相手にアドバンテージを取られるのは良くないです。大学までは5番ポジションをやっていたので、その経験を生かして身体を張ってディフェンスするよう心掛けています」と自身の強みを生かす。

主力の外国籍選手が抜けた試合では、チームとして戦う姿勢がより重要で、八村もそれを理解している。「野本さんとも『しっかりリバウンドを取ろう』とコミュニケーションを取っていますし、誰が出てもみんなで意識を持ってやっていくのが重要です」

さらに八村はオフェンスでも会場を沸かせた。最大の見せ場は第1クォーター終盤、リーグ屈指のペリメーターディフェンダーであるデイビッド・ヌワバとトップで対峙し、臆することなくドライブを仕掛けて、身体をぶつけてシュートを決めた場面だった。

「セットプレーからのドライブだったので迷いはありませんでした。彼もフィジカルが強いですけど、しっかり身体を使って押し込めばいけると思っていたので、それを狙いました」と振り返り、「昨日は消極的なプレーが目立ってしまったので、今日は積極的なプレーをすると自分の中で決めていました」と話す。

現在は東地区3位で、ワイルドカードではチャンピオンシップ進出圏の2位をキープしているが、この連敗で名古屋ダイヤモンドドルフィンズとのゲーム差は4にまで縮まった。しかし、八村はこの敗戦を良い経験として前を向く。

「自分の役割は変わらないので、チームが勝つために献身的にプレーし続けることが大事です。昨日、今日のようなプレーオフみたいな強度の試合が僕にとっては初めてのことなので、すごく良い経験になりますし、そこでしっかり勝ちたいのが一番です」

新たなヘッドコーチの下で求められるプレーが変わり、シーズン中盤までは出場時間が安定しない時期もあった。しかし、八村はここに来てチームを支える献身的な働きで存在感を増している。チームとしても自身としても初めてのチャンピオンシップ進出に向けて、八村の活躍はチームに欠かせない。