評価が一気に急上昇、今年のNBAドラフト注目株に
春のアメリカスポーツを代表する一大イベント、NCAAトーナメント男子決勝で、フロリダ大がヒューストン大との激闘を65-63で制した。現在はブルズで指揮をとるビリー・ドノバンの下、セルティックスのアル・フォーホード、元ブルズのジョアキム・ノアらを中心に連覇を達成した2007年以来となる全米王者に輝いた。
フロリダ大はレギュラーシーズンから安定した強さを披露し、第1シードでトーナメントに出場。大会を通して、ビハインドを負う苦しい展開が多かったが、全米屈指の堅守を軸にした粘り強さで数々の難敵を撃破した。
今シーズンのフロリダ大のロースターを見ると、高校時代に全米規模で高い評価を受けていた選手はいない。しかし、トランスファーポータルによる転校生の補強をうまく利用し、全米ベストチームを作り上げた。特に、平均得点トップ3の4年生トリオは、ウォルター・クレイトンがアイオナ大、アリジャ・マーティンがフロリダ・アトランティック大、ウィル・リチャードがベルモント大と揃ってマイナーカンファレンス出身。注目度の低い環境からレベルの高い舞台へのステップアップを目指す叩き上げ選手を、うまく活用した。
中でも、ファイナル4の『Most Outstanding Player賞』を受賞したエースのクレイトンは、まったくの無名から一気に成り上がった代表格だ。
188cmのガードであるクレイトンは、今シーズン平均18.3得点、4.2アシスト、3.7リバウンドを記録したが、高校卒業時、奨学金のオファーを受けたNCAA1部校はわずか3。アメリカンフットボールでは、フロリダ大、フロリダ州立大、ノートルダム大、ジョージア大という全米を代表する名門校からオファーが来ていた。
それでもバスケットボールが好きだった彼は、フットボールのキャリアに区切りをつけ、当時NCAA屈指の名将リック・ピティーノが指揮官だったアイオナ大へ進学。ここで才能を開花させ、大学2年時にエースとして同校をNCAAトーナメントに導く。ピティーノの退任を受けて翌年からフロリダ大に転校すると、新天地でも着実に成長し、今シーズンは大学4年間でキャリアベストのスタッツを残した。
今シーズン開幕前、クレイトンはNBAドラフトにおいてまったくの圏外だった。しかし、トーナメントでの大活躍もあって、ここに来て一気に評価が急上昇。即戦力として貢献できる存在として、2巡を飛び越え1巡下位での指名を予想する声も増えてきている。
NCAAトーナメントだけでなくドラフトにおいても、クレイトンは注目選手の一人としてスポットライトを浴びることになりそうだ。