文=大島和人 写真=B.LEAGUE

前日の勝利に続き2桁のリードを得た京都に『緩み』

西地区の2位争い、チャンピオンシップ出場権争いは、残り10試合を迎えてもまだ混沌としていた。8日の試合を終えた時点で、琉球ゴールデンキングスが25勝25敗で2位。続いて名古屋ダイヤモンドドルフィンズ、京都ハンナリーズ、大阪エヴェッサの3チームが23勝27敗で並んでいた。

この第27節、大阪と京都の直接対決は京都が84-72で初戦を取っている。9日の再戦も第1クォーターは京都が上回っていた。京都はモー・チャーロの3ポイントシュートなどでポイントを重ね、残り2分30秒から7ポイントの連続ラン。残り24秒には村上直がスティールからレイアップを決め、25-16でスタートの10分間を終える。

第2クォーターに入っても京都の優勢は変わらない。残り7分37秒にマーカス・ダブのレイアップが決まると、京都が31-19と12点差までリードを拡げた。ハーフタイムまで残り1分21秒の時点で、まだ41-30とアドバンテージを保っていた。しかし岡田優介はこう悔いる。「10点差がついたところで15点差にするか、そのままずるずる行ってしまうかで全く違う。昨日勝って今日も10点差つけて『今日も行けるぞ』という(緩んだ)雰囲気になってしまった」

大阪の桶谷大ヘッドコーチはこう振り返る。「第2クォーターの最後に合田がスティールからスリーポイントを決めたところから、やっとチームのスイッチが入った」。流れを変えたのは第2クォーター残り1分7秒からコートに入った23歳のフレッシュマン、合田怜だった。

大阪はエグゼビア・ギブソンの連続得点などで7点差まで追い上ると、残り10秒に合田がスティールを決める。直後に根来新之助の放ったジャンプショットこそ相手のブロックに防がれたが、残り2秒にセカンドチャンスから木下博之のパスを受けた合田が3ポイントを沈めた。37-41となおビハインドではあったが、大阪は反撃への弾みを付けてハーフタイムに入る。

守備で相手オフェンスの空回りを誘った大阪の逆転劇

一方の京都はファウルトラブルに見舞われていた。前半終了時のファウル数は既に「13」。浜口炎ヘッドコーチはそんな状況をこう説明する。

「2日間同じクルーのレフェリーで、同じようなコールをするリーグをやっていて、プレイヤーとして対応していかなければ駄目です。簡単に手を出してしまって、チープなファウルを吹かれることが、この2日間は非常に多かったと思う。ウチはしっかり手と足を使って、激しくディフェンスをしたい。でもそこを(ファウルを)取られ始めてしまったら、我慢して手を出さないでプレーしないといけない。難しいところなんですけれど、今日はマーカス(ダブ)、(岡田)優介、(川嶋)勇人はファウル2つで前半なかなかプレーをさせられず、(ベンチに)座っている状態が長かった」

一方の大阪は合田の活躍で弾みが付き、第3クォーターは一気に京都を圧倒した。司令塔の木下博之は「ウチはディフェンスから走る展開が武器の一つなのに、昨日はそれがあまり出ていなかった」と振り返る。ギブソン、ジョシュ・ハレルソンの両インサイドは京都に対して強みとなる部分だが、そこに偏ることは良くない。

しかし第3クォーターの大阪は『堅守速攻』からアウトサイドが躍動した。桶谷大ヘッドコーチもこう振り返る。「まずディフェンスマインドで頑張って、リバウンドもしっかり飛びついて、トランジションという形をしっかりできた。自分たちのコンセプトとしているものをしっかり表現できた」

木下は京都のオフェンスを「外国人主体で、(攻めが)1on1になってきていた。タフシチュエーションになっていた」と振り返る。ズレのない状態から強引に仕掛ければ、それは相手の思うツボだ。

第3クォーターは大阪が「23-4」という大差で取り、3クォーターの合計も60-45と逆転。。リバウンドも彼らが「15-5」と圧倒していた。それぞれ8得点を挙げた根来新之助、今野翔太の活躍は大きかったが、守備で相手オフェンスの空回りを誘ったことが点差の主因だった。

第4クォーターはダブの11得点、岡田の9得点などで京都に点差を詰められたものの、追いつくに遠すぎる点差だった。大阪が82-74で勝利し、昨日の借りを返している。

桶谷ヘッドコーチは「4チームの間で最後までもつれる」

大阪としては昨日の課題を修正できた一戦でもあった。木下はこう説明する。「昨日は相手のアウトサイドの得点が多く、そこを反省点の一つにしていた。オーバーヘルプというか、行かなくていいのに行ってしまって後手になったところがあった。(9日は)ヘルプに行かないなら行かない、行くなら行くというメリハリをしっかりつけた。相手はフリーになる機会が少なかったと思う」

8日の試合で京都は川嶋が20得点、日下光が16得点とアウトサイドが活躍を見せた。しかし9日は大阪が相手のアウトサイド陣を全員「1桁」に抑えた。

桶谷ヘッドコーチは「一番はゲームメーカー、クリエイターの川嶋くんがファウルトラブルになったところ」と別の勝因を口にする。京都は川嶋が第4クォーター残り6分37秒に5ファウルとなって退場。ファウルが尾を引いて、プレータイムも15分35秒に止まっていた。京都は試合を通した総ファウル数も27個に達して、それが後半の足かせになった。

この試合を終えて大阪が24勝27敗として、23勝28敗の京都より一歩先行した。西地区2位の琉球は滋賀に敗れて25勝26敗となっており、9試合を残して名古屋(23勝28敗)も含めた4チームの混戦が続いている。

桶谷ヘッドコーチはチャンピオンシップ出場権を懸けた戦いをこう読む。「4チームの間で最後までもつれると思う。最終的にどこまでチーム力を上げられるというところと、どれだけチャンピオンシップと同様の戦いを一戦一戦できるかが重要。どこにも負けられないし、特にウチは沖縄とまだ4戦の直接対決が残っている。そこで3勝はマストかなと思っている」

京都の岡田もやはりもつれる展開への覚悟を口にする。「もしかしたらレギュラーシーズン最後の試合まで分からない可能性もある。今日は酷い試合をしてしまいましたけれど、これを引きずらずに行きたい。残りの試合をすべてプレーオフだと思ってやっている」

西地区の優勝チームは早々に決まったが2位争い、そして全体8位のワイルドカードを巡る争いは最後まで読めない。選手も観客も緩みようがない状況になっている。そんなシビアなバトルの醍醐味を強く感じた、大阪と京都の連戦だった。