文=丸山素行 写真=B.LEAGUE

王者川崎でも止められない攻守に圧倒のパフォーマンス

三遠ネオフェニックスは勝率ナンバー1の川崎ブレイブサンダースに3度の土をつけた、リーグ唯一のチームだ。昨日行われた川崎との金曜ナイトゲーム、三遠は第1クォーターをリードして終えたが、強度の高いディフェンスに圧倒され、ターンオーバーからの失点が致命傷となり川崎に敗れた。

だがその激しいディフェンスでもジョシュ・チルドレスだけは止められなかった。203cmとは思えないスピードでディフェンスを切り裂き、細身に見える身体でも当たり負けすることなく、抜群のボディバランスで得点とリバウンドを量産。27得点13リバウンドのダブル・ダブルを記録し、まさにオールラウンダーの活躍ぶり。

それでも「多くの得点を決めることができたが、勝ちにつながるものではなかった」とチルドレスは冷静に試合を振り返った。

「コーチに求められていることはオフェンスでもディフェンス面でもアグレッシブであり続けること。そしてしっかり得点を決め、リバウンドも取って他のチームメートのプレーに繋げるような攻撃を行うことだね」

その中で自らの一番の強みをこう説明する。「バスケットに向かって攻めてゴールに近付くこと、そしてファウルをもらうことを意識している。それだけでなくリバウンドも取って、チームのためにプレーすることが強みだと思うよ」

チルドレスはその強みを存分にコートで表現して10個ものファウルを獲得し、4つのオフェンスリバウンドでセカンドチャンスポイントを演出した。また「チームのために」とあえて言わなくてもプレーを見ていれば明らかなように、決して自己中心的な点の取り方をしないところも彼の強みだ。

「忘れてはいけないのがバスケットボールが好きということ」

チルドレスはバリバリの元NBAプレーヤーとしてのポテンシャルを発揮し、それはスタッツにも表れている。だが彼の一番の長所は得点やリバウンドではなく、常に冷静でいられるメンタルだろう。

審判の微妙な判定やファウルがコールされないことに対し、怒りを露にする選手は少なくない。とりわけ外国籍選手に多く見られる。だがチルドレスはどんな状況でも落ち着いてプレーしている。その秘訣を尋ねると、誰もが忘れかけているバスケットボールをプレーすることの本質に気付かされた。

「忘れてはいけないのがバスケットボールが好きで、楽しいということです。それで自分を冷静に保っています」

第2クォーター終盤、川崎に流れが傾き、フラストレーションが溜まったロバート・ドジャーがアンスポーツマンライクファウルをコールされた時も、チルドレスはドジャーを落ち着かせようとしていた。オルー・アシャオルが審判に文句を言った時にもすぐ駆け寄って事態を収拾した。

「特に自分はチームの中で年齢を重ねているので」とチルドレスは言う。「自分よりも若いプレーヤー、例えばアシャオルのように感情的で気持ちをぶつけるようなプレーヤーがいるので、バランスを取るようにしている。他の選手が少し興奮してしまった時は抑えるようなポジションを取っているね」

33歳のチルドレスをベテランと呼ぶにはまだ早い気もする。だがその精神力は十分すぎるほどベテランの貫禄がある。それこそが『元NBA』のキャリアによるものなのだろう。

貪欲に勝利を追い求めるチルドレスは「勝てる試合はすべて勝って、2位のポジションを確保してチャンピオンシップに出場したい」と言う。

現在中地区2位の三遠だが、その背中にはサンロッカーズ渋谷が2.5ゲーム差で迫っている。だがチームのために多数の役割をこなす、大黒柱であり精神的支柱のチルドレスがいれば、不死鳥のようにどんな逆境も乗り越えていけるだろう。