後半に流れをつかんだ広島が越谷に連勝
2月2日、広島ドラゴンフライズはアウェーで越谷アルファーズとの第2戦を戦った。点の取り合いとなった前日の第1戦は最終クォーターにリードを広げた広島が100-90で勝利。この日も後半に流れをつかみ、76-65で越谷に連勝した。
試合序盤、広島は強度の高いディフェンスで越谷のターンオーバーを誘発して先行。しかし、越谷のLJ・ピークのアタックに手を焼き、ティム・ソアレスにも2本の3ポイントシュートを許すなど巻き返され、一進一退の攻防となる。続く第2クォーターも入りから6-0で広島がリードしたものの、ピークや星川堅信に連続得点を許し、思うようにリードを築けずに同点で前半を終える。
第3クォーター、広島はドウェイン・エバンスの連続得点でリズムよくスタートを切る。残り4分には三谷桂司朗の3ポイントシュートで越谷にタイムアウトを取らせ、最終クォーター序盤で最大13点のリードを築くことに成功した。終盤に2ポゼッション差まで迫られたが、再びディフェンス強度を高めて、そのまま逃げ切り勝利を収めた。
第1戦はハイスコアゲームとなったが、第2戦は一転してディフェンシブな我慢の展開が続いた。展開が全く異なる連戦を制したチームを、朝山正悟ヘッドコーチは次のように讃える。「お互いがタフにやり合う中、自分たちが最後までしっかり我慢をして、ベンチメンバーも含めてみんなが自分の役割を遂行してくれたのが、この勝利につながりました。選手やスタッフたちを評価したいです」
今節こそ連勝したものの、広島は前節の島根スサノオマジック戦では大敗を喫した。常時ビッグラインナップを敷いてくる島根の猛攻を最後まで止められなかった。特に日本人選手とのミスマッチを突いてくる島根の帰化選手、エヴァンス ルークを自由にプレーさせてしまったのが敗因の1つとなった。
今節のチーム状況は、前節よりも過酷だった。帰化選手の河田チリジが欠場となり、ビッグラインナップができなかった。越谷は帰化選手をからめたオンザコート3で、ピークを中心にオフェンスを組み立てくる。第1戦で34得点を挙げられたピーク対策が急務だった。
朝山ヘッドコーチはピーク対策について、次のように選手たちを評価した。「第1クォーターは三谷のファールが混んでしまいましたが、チーム全体としてはやることができたのではないかと思います。後半は、ダブルチームに行かずに日本人選手だけで守りきれたのは大きかったです」
朝山HC「今は何一つ失うものがない」
指揮官が語るとおり、1人の選手に負担をかけずにチーム全体で守ることが重要な状況で、先発の3番ポジションとしてピークとのマッチアップを任された三谷への期待は大きかった。
地元広島出身の三谷は、広島皆実高校在学中に特別指定選手としてチームに加入。筑波大バスケ部での活動を終えた2023年12月にプロ契約で加入し、多くの試合で先発を務めた。3×3の日本代表活動のためチャンピオンシップでの出場時間は伸びなかったが、チームの未来を背負う存在であることは間違いない。
試合開始2分13秒で2つのファールを犯した三谷は試合後、勝利の安堵とともに悔しさをにじませた。「昨日も今日もピーク選手に好きにやらせてしまいました。今日は入りから『何が何でも止めてやる』という気持ちで挑みましたが、結果に繋がりませんでした。自分が向き合わなければいけない壁がこの2試合で見えました」
反省しきりの三谷だが、チームの力を借りながら後半のピークの得点を2得点に抑えたことについては手応えを感じている。「後半は相手が嫌がるようなプレーもできたと思います。スタートで出させてもらっている以上、入りのところから自分の役割として徹底しなければいけません」
そして、そのために必要なことも冷静に分析できている。「プレッシャーをかけ続けるのは大事なことです。かけすぎて簡単に抜かれてしまう場面もあったので、嫌な間合いをとるなど駆け引きをうまくやっていく必要がありました」
広島はシーズン序盤にロスターが揃わずに苦しんたが、年明けから7勝2敗と好調。シーズン成績も17勝18敗とし、今節の結果で西地区4位に浮上した。チームの好調に加えて、自分のパフォーマンスも上がってきたと三谷は話す。
「積極的にシュートを狙いに行く場面が増えて、得点に絡むことが多くなりました。相手の得点源を抑えることや走ること、オープンを思い切り打つことなどでチームに良い影響を与えられていると思います」
さらにチームとして戦えている感触も得ている。「ベンチメンバーも得点に貢献できることが増えました。それぞれが出ている時間で役割を徹底する気持ちがチーム全体に浸透しています」
ディフェンディングチャンピオンは他チームよりも多くの試合を戦い抜かないといけない。チャンピオンチームを引き継いだ朝山ヘッドコーチからも、三谷同様に気負いなく前を向く言葉が聞かれた。「天皇杯やEASLのファイナル4とスケジュールは続いていきますが、その中でもどこまで順位を上げていけるか。今は何一つ失うものがないので、全ての試合を見据えた中でやっていきたいです」
朝山ヘッドコーチが話す通り、広島にはまだまだチャンスがたくさんある。ルーキーの三谷も何一つ失うものはないどころか、海外クラブとの対戦や上位クラブとのタイトルをかけた戦いから大きな経験を得られる、またとない機会だ。
今節のように課題を見つけて、一つひとつ向き合っていくことが成長に繋がる。フランチャイズプレーヤーとして広島の未来を背負う三谷のチャレンジングなシーズンはまだまだ続く。