全力プレーを誰もが称賛「100万回の戦いに勝利した」
ウォリアーズは開幕から12勝3敗とロケットスタートを決めたが、その後はズルズルと後退。直近ではディアロン・フォックスを欠くキングスに30点差、ジミー・バトラーを欠くヒートに16点差とホームで2試合続けての大敗を喫し、18勝18敗と勝率は5割まで落ち込んだ。トップレベルで十分に戦えるチームのはずが、統率を失い、ガッツもなく、ただただ劣勢で打ちのめされての負けっぷりに、指揮官スティーブ・カーは「自信の危機」と語った。
現地1月9日のピストンズ戦、相手は再建チームであってもケイド・カニングハムを中心に若い力が噛み合って5連勝と、若さと勢いではウォリアーズをはるかに上回るチームであり、しかもウォリアーズはジョナサン・クミンガ、アンドリュー・ウィギンズ、ゲイリー・ペイトン二世、モーゼス・ムーディー、ブランディン・ポジェムスキーが欠場。特にクミンガやウィギンズのようなパワフルなフォワードの不在は苦戦を予想させた。
実際、楽な試合にはならなかったが、第1クォーターの終盤に逆転してからはウォリアーズがずっとリードする展開で、終盤の追撃も辛うじてかわして107-104の勝利。ステフィン・カリーが17得点10リバウンド6アシストを記録したが、この日のヒーローはステフではなくギー・サントスだった。
ウォリアーズのファンでも「ギー・サントスって誰?」と思う人は少なくないだろう。2022年のNBAドラフト2巡目55位で指名されたフォワードだが、ほとんどローテーション外に置かれてきた。そのサントスがベンチから26分の出場で13得点5リバウンド3アシスト2スティールを記録。特別目立つ数字ではないがコートでの存在感は抜群で、試合後にロッカールームで2年目の22歳に手荒い祝福をお見舞いしたウォリアーズの面々は、サントスの活躍のことばかりを語った。
「今日のサントスは100万回の戦いに勝利し、試合に勝たせてくれた。1年ずっとチャンスを待ち続け、そのチャンスをモノにしたんだ。バスケの試合はシュートが決まるかどうかよりも大事なことがある。ディフェンス、リバウンド、ハッスル、スプリント。今日のギーのすべてだよ」。そう語るのは指揮官カーだ。
試合の中では無数の勝負が繰り広げられる。ボックスアウト、ポジション争い、ルーズボールにディナイ、フリーの味方を見つけること、相手の意図を読んで守ること。サントスはこうした小さな勝負のすべてに全力でぶつかり、その多くに勝った。
ドレイモンド・グリーンはこう話す。「この苦境から抜け出すには3ポイントシュートを打ちまくればいいのか。そうじゃない。フィフティ・フィフティのボールに飛び付くような小さなハッスルを重ねるんだ。ギーはそうすることで試合を変えた」
Gui Santos put on a show tonight 🤩 pic.twitter.com/OLvE2JmFK5
— Golden State Warriors (@warriors) January 10, 2025
そしてステフ・カリーもサントスをこう称賛した。「彼が何度ポゼッションを奪い取ってくれたことか。ああいうハッスルはチームに伝わり、相手チームを委縮させる。コートのどこにでもギーは現れ、試合が終わる頃には相手はうんざりしている。あの存在感は素晴らしいものだった」
見るからにマッチョで若々しいエネルギーを放つサントスは、自分にチャンスが与えられたこと、そして勝利という形で期待に応えられたことを素直に大喜びしていた。「チームを助けるために、僕にできることは全部やるつもりだった。みんなが僕に声援を送ってくれたおかげで気分良くプレーできたよ」
直近のヒート戦での出番はガベージタイムの3分のみで、気力も体力も有り余っていた。「今日はケガ人も多くて、いつもより多くのプレータイムがもらえるんじゃないかと期待していた。いつだってその気持ちでベンチに入っているけど、今日は特別だった。試合の流れを変えるために自分にできることは小さなプレーであり、そこに全力を尽くすつもりだった。もし相手の誰かを突き飛ばさなくちゃいけなくても、それが僕の戦いであればやり抜くだけ。コートの雰囲気を僕が一変させるつもりだった」
誰よりも激しくコートを駆け回ったサントスは、3ポイントシュート6本中4本成功とシューターとしての能力も示した。カリーは「ギーの3ポイントシュートはオマケみたいなものさ」とジョークを飛ばしたが、サントスは日々の研鑚の成果に自信を持っている。
「オフの日でも練習場に行く。リバウンドはマシンがやってくれるし、たいていはコーチが練習に付き合ってくれる。毎日きっちり打ち込んでいるから、試合でも自信を持って打てる。外したら? その時は『次から3本連続で決めるからいいさ』と思うだけさ」
残り10秒、106-103の場面でサントスにフリースローの場面がやって来た。安全圏に逃げ出せるか、1ポゼッション差のままか、という緊迫した場面で彼は1本を決めている。「正直に言うとド緊張していたけど、ステフの気分で打ったよ。『ギーのヤツは緊張するけど、ステフなら平気な顔をしてるだろうな』と自分に言い聞かせたんだ(笑)」