「短い出場時間で何を残せるかが課題です」
12月16日、群馬クレインサンダーズは専修大4年生の淺野ケニーとの新規契約を発表した。淺野は関東大学バスケットボールリーグで優秀選手賞を受賞し、U22日本代表に選出されるなど、世代を代表する選手だ。12月18日の秋田ノーザンハピネッツ戦でプロデビューを飾り、ここまで5試合に出場して平均4分53秒のプレータイムを得ている。
合流して約2週間が経過した現在の様子を聞くと「生活やチームの雰囲気には慣れてきたところです。チームの皆さんには本当によくしてもらっています」とチームに馴染んでいる。それと同時に早くも自分の課題も見えてきた。「大学の最終学年にはインサイドをやってきたこともあって、まだBリーグのレベルには慣れていません」
「慣れていない」というのは意外な言葉だった。昨シーズンは三遠ネオフェニックスで特別指定選手として活動して、平均14分40秒出場していた。昨シーズンとの違いを淺野はこう続ける。「昨シーズンはプレータイムをもらえていたので、ある程度の結果は出せたと思います。今は短い出場時間で何を残せるかというのが課題です」
さらに大学バスケを卒業してプロ選手として歩み出したことで、気持ちの違いもあるようだ。「特別指定選手は3月に活動終了というのが決まっていました。昨シーズンまでは、あくまで『大学に戻った時により良いプレーができるように』といった感じでウエイトトレーニングのメニューを組んでもらっていましたが、今はBリーグのシーズンに合わせたトレーニングをしています。それ以外のところでも、一つひとつがプロ選手として扱われるので、立場が変わったことを実感しています」
群馬はB1昇格後、2021-22シーズンに八村阿蓮(東海大4年時)、2022-23シーズンにハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア(東海大2年時)といった有力大学生をチームに招いているが、いずれも特別指定選手としての活動であった。今回、淺野は現役大学生ながら特別指定選手ではなくプロ契約を結んだ。このチームにとって異例の契約を淺野もしっかり受け止めている。「特別指定ではなく、ロスター枠を1つ使うプロ契約で加入ということでチームからの期待やリスペクトも感じています」
「今はまだコーチが自分に経験をさせてくれている」
契約のみならず、起用方法でも異例なことが続いた。加入後2試合目となった12月21日の島根スサノオマジック戦では先発起用された。淺野自身も期待の高さを感じているが、自分の現在地を冷静に分析する言葉が続く。「今はまだヘッドコーチが自分に経験をさせてくれているだけだと思っています。スタートだからすごいとかは全然なくて、コートに立ったら吸収していく意識を持っています。今はローテーションに入ることが目標です」
続く12月29日のアルバルク東京戦でも、存在感を示すプレーがあった。第1クォーター終盤にレオナルド・メインデルからターンオーバーを誘発して、そのままファストブレイクポイントに繋げた。クォーターの締めくくりとしてはこれ以上ない盛り上がりを作り、第2クォーターに向けた反撃の狼煙となった。その後も、メインデルやセバスチャン・サイズ、ライアン・ロシターといったリーグトップクラスの選手とのマッチアップが続いた。
結果的にファウルとなったものの、ロシターのポストアップに身体を張ったディフェンスで対応した場面では会場から大きな拍手が湧き上がった。淺野は「まずはディフェンスで穴にならないように、リーグの強度に慣れたディフェンスをできるようにしたいです」と話したが、その奮闘は誰もが認めるものだった。
淺野の合流後、島根やA東京といった上位チームにも連勝が続いている群馬だが、引き続き上位陣との連戦が続く。今週末の名古屋ダイヤモンドドルフィンズを経て、8日には天皇杯クォーターファイナルで三遠との対戦が待っている。
古巣との対戦を淺野も心待ちにしている様子だ。「昨シーズンお世話になり自分を成長させてくれたチームですので、大野さんやコーチ陣、選手やブースターの方に大きくなった姿を見せられたらと思っています。本当に負けたくないです(笑)。そこが一番です!」
プロキャリアをスタートさせたばかりの選手にとっては、伸ばすべきところが多いのは当然だ。淺野にとって一つひとつの経験が着実に身になっているだろう。将来的にはどのようなプレーヤー像を思い描いているのだろうか。「Bリーグには2メートル近い日本人選手のスコアラーはいないので、自分がそうなっていきたいです。スポットシューターで終わるのではなく、プレーの幅を広げて日本を代表する選手になりたいです」
レギュラーシーズンの折り返しまであと少し。現状はチームにとっても淺野に経験を積ませるフェーズかもしれないが、東地区2位でチャンピオンシップが視野に入ってるチームにとって、今後の淺野の存在がチーム力の底上げに直結してくるのは間違いない。