岸希&ロー・ジョバ

ジョバ「ここまで来られたのはすごいことです」

ウインターカップ2024、慶誠は決勝で大本命の京都精華学園に54-59で敗れた。あと一歩で日本一を逃したが、熊本県勢として初の準優勝は快挙だ。この大きなステップアップを牽引したのが司令塔の岸希、ゴール下の要であるロー・ジョバの3年生コンビだ。

岸の巧みなボールハンドリングと視野の広いゲームメークが慶誠の安定したハーフコートオフェンスを作り出す。ジョバは他の留学生と違ってゴール下だけでなく、3ポイントラインの外でボールを持ってもそこからの3ポイントシュートにパワフルなドライブと多彩な得点パターンを持つセンターだった。

決勝ではファウルアウトに16得点と本領発揮とならなかったジョバだが、準決勝では40得点25リバウンド5スティール4アシスト、ベスト8では35得点17リバウンド2スティールなど大暴れだった。ジョバはこう大会を総括する。「あと少しで優勝できましたが、ここまで来られたのはすごいことです。良い経験ができました」

今は流暢な日本語を話し、「好きな言葉は熊本弁の『そうばい』です」と笑顔を見せるジョバだが、来日当初は言葉の壁もあって苦しんだ。この辛い経験を耐えたからこそ今がある。「1年生の時、日本語があまりしゃべれなくて家に帰りたい、お母さんに会いたいと思いました。でもお母さんに、『どこに行ってもそうなるから我慢して』と言われました。2年生から日本語ができるようになり、帰りたいと思わなくなりました」

ジョバのバスケットボール選手としての右肩上がりの成長は、仲間に恵まれて充実した高校生ライフを送れたからこそ。日本への適応を助けてくれた盟友が、ジョバが「姉妹です」と絶大な信頼を寄せる岸だ。

「私がお姉ちゃんです」と語る岸は、こう続ける。「他のチームメートは友達という感覚が強いですが、ジョバは国や文化の違いがあり、日本のしきたりについて教えることもあってぶつかることも多かったです。他の選手よりケンカすることも多かったですが、その分、信頼関係を築けました。そのおかげで姉妹のような関係になったと思います」

岸希

岸「私が逃げたらジョバとの距離も離れてしまいます」

岸はジョバへの敬意を「賢い選手で、日本語を覚える意欲もとても強かったです」と語り、彼女の日本語が不自由だった時も寄り添り続けた。「上手く言葉が伝わらない時も逃げないと決めていました。そこで私が逃げたらジョバとの距離も離れてしまいます。お互いに妥協せず、責任を持ってやってこられました」

ジョバから教わることもたくさんあったと岸は振り返る。「日本人は人の前で失敗するのが恥ずかしいと感じる人が多いです。でもジョバが来てびっくりしたのが、練習の中でも積極的に意見を言えること。失敗を恐れない気持ちはジョバにすごく教わりました」

そして「私自身、チーム自体もすごく助けられた。ジョバがあってこその慶誠高校です」と、自分より24cm大きな『妹』への感謝を強調した。

岸個人は1年生の時から中心選手としてコートに立ち続けたからこそ、過去2年間は思うような結果を残せず苦しんだが、最後は負けた悔しさとともに大きな充実感を得ることができた。「1年生からチームを引っ張ってきた自覚、責任はすごくありました。1、2年生と結果を残せていなかったことで自分自身を責めることがすごく多かったです。最終的にはこういう結果を残せたことで、自分を初めて褒められると思います」

ジョバは高校3年間を「一番成長できたのはメンタルです。日本に来た当初はベイビーみたいでしたけど、自分一人でいろいろとしないといけないと思って、できないことをできるようになりました」と振り返り、今後についてはこう語る。「もっと3ポイントシュートを決められる、強いドリブルができる選手になりたいです。将来はプロ選手になりたいです」

岸とジョバ、切磋琢磨して才能に磨きをかけた『姉と妹』。2人の次なるカテゴリーでの飛躍を期待したい。