「憶測がチームの邪魔になっている」
ヒートのジミー・バトラーを巡るトレードの噂が過熱し、チームがバスケに集中できない状況を受け、ヒートのパット・ライリー球団社長が声明を発表した。「通常、こういった噂にコメントすることはないが、憶測がチームの邪魔になっている。だからはっきりさせておくが、我々はジミー・バトラーをトレードには出さない」
マジックとの試合を控えたオーランドでの練習を終えて、指揮官エリック・スポールストラはこう語る。「私はチームを試合に集中させたい。誰かがコメントすれば、その内容が何であれ火に油を注ぐことになる。我々とは関係のないところで噂が過熱している状況は好ましくない」
バム・アデバヨは、バトラーが移籍を望んでいると思うかと質問されて「ビジネスの側面もあるけど、僕らは家族であり兄弟なんだ。僕らが気にしなければならないのは、トレードの話じゃなく試合だよ」と答えた。
しかし、本当にトレードの噂を消し去るなら、ヒートはバトラーの望む契約延長を提示しなければならない。バトラーはヒートと3年1億4600万ドル(約220億円)の契約を結んでいるが、今はその2年目で、3年目はプレーヤーオプション。これを破棄すればバトラーは今シーズン終了後にフリーエージェントとなる。ヒートが彼を最大限に評価しているのであれば、すでに新契約がオファーされているはずだが、それがないまま開幕を迎え、今もその動きはない。
バトラーは35歳になり、常に100%の全力を出して戦うスタイルが災いしてケガが増えている。今回のマジック戦も体調不良で欠場し、これで今シーズンの28試合中8試合を欠場することになる。サラリーキャップの縛りが厳しくなる今、これから年齢的な衰えが目立ってくるであろうバトラーに無条件で大型契約を与えるわけにはいかない、というのがヒートの考え方だ。
おそらく、ヒートとバトラーはお互いを必要としているが、契約というビジネスにおいてはシビアな交渉をせざるを得ない。ヒートは中長期的に競争力のあるチームを作るべく、バトラーの契約においては『節約』したい。バトラーはいまだトップレベルで活躍する自信があり、簡単には譲歩したくない。どちらも相手が折れるのを待ちながら、その合意点を探るのが今シーズンで、バトラーは欠場する試合は増えていてもコート上での影響力を落とさないことで健在ぶりをアピールしようとしている。
ただ、ライリーとバトラーは割り切っていても、トレードの噂が過熱することは避けられない。チームメートにとっても、バトラーが急にトレードされる可能性を感じたり、チームに残るにしてもフロントと感情的な軋轢がある状況は試合への集中を妨げられる。例年スロースタートなのがヒートとはいえ、14勝13敗でこれから調子を上げていかなければいけないチームにとって、この『雑音』は大きすぎる。