「日本代表を世界に見せる最初のチャンス」
4月17日、NBAデビューシーズンを終えた渡邊雄太が日本に帰国した。タフでエキサイティングなバスケ漬けの生活の中でシーズンを全うして「最高な1年」と振り返ったが、一方でグリズリーズで安定した出場機会を得られなかったこともあり「満足は一切していない」と総括した。
2ウェイ契約の渡邊にとっては、今もなおアピールが必要。オフもサマーリーグに参加して自らの実力とプレースタイルを示すことになる。それと同時に、この夏の日本代表としての活動にも意欲的だ。東京オリンピックに向けて「オリンピックを東京でできるなんて、一生に一度あるかないかの稀なこと。日本代表として、いろいろな人の前で自分のプレーを見せる良い機会でもあるので、すごく楽しみです」と語る。
8月31日に開幕するワールドカップについても、渡邊は参加の見込み。「世界から遠ざかっていた日本代表にとって、今の自分たちがどのレベルに達しているのか。日本はかなり強くなってると思っているので、それを世界に見せる最初のチャンスだと思っていて、自分たちがこのレベルにいるのかというのが明確になってくると思う。僕自身も楽しみにしてますし、良い大会になるんじゃないかな」
アメリカで活躍する渡邊や八村塁が加わり、ニック・ファジーカスが帰化選手として加わったことにより、日本代表の戦力は飛躍的にアップした。アメリカ組の参加はBリーグ組を触発したことで、チームの底上げもなされた。渡邊と八村、ファジーカスの3人が勢揃いした時の日本の力は未知数であり、渡邊はそんな日本の伸びしろに期待している。
ただ、伸びしろは期待値でしかなく、渡邊は世界を知るプレーヤーとして現実を見据えている。「現実的な話をして、僕もNBAでやってきて彼らを目の前でずっと見てきたので、今の僕らがアメリカ代表に勝てるかと言うと、それは正直厳しいと思う。日本が強くなったから勝てるという、当然そんな簡単な話ではないです」
NBAで世界トップレベルのバスケットを体験してきた渡邊だからこそ、その言葉には重みがある。それでも、ワールドカップまで、オリンピックまでにチームを成長させることの大切さを否定するわけではない。むしろ、そのために代表活動に参加すると言ってもいい。「これからワールドカップに向けての成長度という部分ではかなりあると思う。この夏の準備をいかにできるか」
「勝負に絶対はないので、最初から負けるつもりでやるつもりは一切ない」
長年、日本人はNBAで通用しないと言われてきたが、渡邊はその『絶対的な法則』を打ち破った。勝負に絶対はない。渡邊が日本を世界の高みへと導く。