「すべての試合をこんな感じで戦えたらいいね」
デイミアン・リラードはタイトル獲得を切望していた。クリス・ポールやジェームズ・ハーデンと同じように、フランチャイズプレーヤーとしてチームを引っ張って富と名声を獲得しても満足せず、タイトル獲得を求めて移籍を選択した。ポールやハーデンに比べてリラードは決断に時間を要したし、トレイルブレイザーズに後ろ髪を引かれる思いをありありと残してバックスにやって来た。
だが、そのすべては報われた。その価値がリーグ戦優勝には遠く及ばないのは明らかだとしても、リラードはトロフィーを掲げることができた。優勝会見の冒頭で、彼は「今は幸せな気分だ。ずっとタイトルが欲しかったから」と言った。
サンダー戦でのスタッツは35分の出場で23得点4リバウンド4アシスト。試合で一番のインパクトを残したのはトリプル・ダブルのヤニス・アデトクンボだったが、リラードはそれでいいと考えている。もはや彼は『ブレイザーズのリラード』ではない。平均20本、プレーオフになれば25本のシュートを放ち、40得点超えを連発しても勝てなかった時代に彼は自ら区切りをつけた。今はバックスの2番手、あるいはアデトクンボをエースとして盛り立てるチームプレーの先頭に立つのが役割だ。
それはサンダー戦でのパフォーマンスからも見て取れた。アデトクンボがインサイドで2人を引き付けて数的有利を作る。サンダー守備陣としてはリラードにオールコートでプレッシャーをかけ、ブリッツで潰し、そこから速い展開に持ち込みたいのだが、アデトクンボの引力が強すぎてリラードを2人で守る瞬間を作り出せない。
かつてのリラードであれば自分で攻め続けていただろうが、今の彼はアデトクンボが生み出すズレを自分のために使うのではなく、エクストラパスでさらに広げることを選択。自分で攻めることで相手の脅威でもあり続け、そのバランスの良さが際立った上でのフィールドゴール12本中6本成功、フリースロー7本を獲得して6本を決めての23得点だった。
「若くてハングリーな西カンファレンスの首位チームが相手のタイトル戦で、僕らはチームプレーに徹した。試合開始から終了までディフェンスを意識し、これまで築き上げたものを示した。それもまた、最高の気分でいられる理由でもある」
リラード加入2年目の今シーズンは、開幕から2勝8敗と最低のスタートとなった。指揮官が経験豊富なドック・リバースでなければ解任されてもおかしくないところだったし、要所にベテランが揃っていなければチームが空中分解してもおかしくなかった。だが、そこからバックスは持ち直し、今回のNBAカップ優勝まで駆け上がった。
「勝てた試合が少なくとも4つか5つはあったと思うと、今回の勝利ですべて帳消しとは思えない」とリラードは語り、こう続けた。「でも、開幕時点のチームと今のチームは別物だ。僕らはコーチ陣の分析と戦略を信頼している。すべての試合をこんな感じで戦えたらいいね」