ニコラ・ブーチェビッチ

新スタイルがハマり3ポイントシュート成功率47.4%

ブルズはここまで10勝15敗。開幕前にデマー・デローザンが退団、アレックス・カルーソとジョシュ・ギディーをトレードして若返りを図り、アップテンポなバスケへとスタイルを変えたが、プレーイン圏内だった過去2シーズンよりも勝率を落としている。ここからトレードデッドラインの2月まで、将来に向けたチームのテコ入れを進めることになるだろう。

まだ25試合が経過しただけで、ブルズのすべてが悪いわけではない。ハーフコートバスケで力を発揮するデローザンが抜けだことで採用されたアップテンポなバスケは多くの選手の能力を引き出しており、昨シーズンのチーム得点王だったデローザン(24.0得点)の退団にもかかわらず得点は増えている。ただ、それと同時に失点も急増しているのが勝てない要因だ。

これまでもブルズはデローザン、ザック・ラビーンとニコラ・ブーチェビッチの『ビッグ3』の実力を過大評価してきた。プレーオフ進出がかなわないにもかかわらず、だ。トレード交渉の場でも、ブルズの彼らへの評価が高すぎて話がまとまらず、それがブルズの再建を停滞させた。

今夏、フリーエージェントとなったデローザンは勝てないブルズに見切りを付けて去っていった。『ビッグ3』は崩れたわけだが、ラビーンとブーチェビッチは評価を落としておりトレードできない。だが、ブーチェビッチについては状況が変わりつつある。アップテンポなバスケにフィットし、ここまで21.3得点、9.8リバウンドを記録。フィールドゴール成功率は昨シーズンの48.4%から58.7%に、3ポイントシュート成功率は29.4%から47.4%へと急上昇している。特に3ポイントシュートは試投数が4.1から4.8へと増えているにもかかわらず大幅に効率が良くなっている。

34歳と若くはないが、契約最終年となる来シーズンの年俸は2150万ドル(約32億円)で、リスクの少ない『お買い得』な選手へと変貌した。トレード市場で彼を求めるチームは複数現れるだろう。サラリータックスの基準を下回るブルズは、上位チームのサラリーを引き受けることも可能で、これを組み合わせればブーチェビッチの取り引きは非常に魅力的なものとなる。

一方でラビーンは5年2億1500万ドル(約320億円)の高額契約が2027年まで残っており、トレードを成立させるのは難しい。それでも足を手術して25試合にしか出場できなかった昨シーズンから復活を果たし、選手としての評価は回復しつつある。

これまでブルズはチームの変化に消極的すぎて、それが長きに渡る低迷を招いた。過去9シーズンでプレーオフ進出わずか2回、その両方ともファーストラウンド敗退。ブルズはマイケル・ジョーダンの黄金期が終わった後、2004年から11シーズンで10回のプレーオフ進出と東カンファレンスの強豪であり続けた。黄金期再来とは言わずとも、プレーオフの常連としての姿を取り戻せるか。ここから2月まで、そして今シーズン終了後の動きは、ブルズの将来を大きく左右するものとなる。