「勝ち方を知らないチームの弱さが露呈してしまった」
シーズン最後のホームゲームで富山グラウジーズに連敗し、横浜ビー・コルセアーズの通算成績は14勝44敗。翌日、他チームの結果により3年連続での残留プレーオフ行きが決まった。富山に連敗を喫した13日の試合後、川村卓也はチームの低迷、自身のふがいなさに憤っていた。
「僕が来てから3年目のシーズン、過去2年間を振り返っても、あまり成長を感じられなかった3年目を過ごしてきました。結果が出ないながらも追い求めていく姿勢はチームにありましたし、それを結果に結び付けた上で、やっぱりホームのコートで、ブースターのみんなに笑顔で帰ってほしかったという思いは特に強かったと思います」
それでも、横浜文化体育館での連戦は、2点差と3点差での惜敗。「勝ち方を知らないチームの弱さが露呈してしまって、エゴを捨ててやらなきゃいけない部分と、エゴを持ってでも強気で攻める部分。そこの判断ミスっていうのは少なからず相手よりも多かったと思います。相手が良いバスケットをしたのは事実なんですけど、ただ前半の自分たちの良かった部分を忘れてしまった。相手の方が試合巧者だったと思っています」と川村はこの連戦を振り返る。
勝ち方を知らない──。これが川村が冷静に見たチームの現状だ。チャンピオンシップ進出のために負けられない富山を相手に、競ったゲームができたのは収穫であり、これは川村も「やってきたことが間違ってたとは思えない試合内容だった」と認める。だが、その上で「勝たなきゃ経験値にならなくて、それを知っている選手がこのチームに少ないというのはあります。三河とやった時のフリースロー1本、昨日のアレク(湊谷安玲久司朱)のフリースロー1本だったり。それは外したから悪いんじゃなく、そういうゲームメンタルに慣れていない」
逆に富山は勝ち方を知っていた。トーマス・ウィスマンが敗因に挙げた「第4クォーターで相手の外国籍選手が19得点、こちらは4得点」と同じことを川村も指摘する。「ジョシュア(スミス)を、(レオ)ライオンズをどう止めるのか。最後の5分間はそこに尽きます。相手は自分たちの強みを分かっているんですよね。自分らのオフェンスはセルフィッシュに1on1したり、ボールを動かさずに10秒を切ってから『やべえやべえピック&ロール』とか、そういう詰めの甘さ。勝ちに近付くための方法を知っていたのは富山でした」
「自分たちが良い時はどんなバスケットをしているのか」
横浜は過去2シーズン、残留プレーオフに回っても、そこできっちり勝つことでB1残留に成功してきた。ある意味、この土壇場においては『勝ち方を知っている』チームだ。ただ、本来は行ってはならない舞台。「僕個人としては、今年は絶対に行ってはいけないと思ってこのチームと契約しました。その中でこの結果を招いたことは、受け入れがたい部分もあります」
「もちろん、ブースターさんたちや関係者の皆さんに、横浜は残留プレーオフで勝てると自信を持ってもらえるなら、それはポジティブなことだと思いますけど、僕にはそれはない感情で。僕はそこに行くこと自体、耐えられない。3回同じことをやってはいけないし、組織としてもプレーヤーとしてもそうです。緊張感だったり戦い方だったり雰囲気だったり、それをこのチームが理解しているのは強みだと思います。だけど絶対に勝ちきれる自信は今の僕にはないし、その日を迎えてみないと自分とチームの調子は分からないから何とも言えません。自分を引き上げることは自分自身にしかできないので、大事な場面で自分がしっかりとしたパフォーマンスをする自信は持っているつもりです。ただ、安易に勝てるとは思っていません」
11連敗中ではあるが、その中にはチャンピオンシップ進出を争うチームを苦しめた試合もある。「決してすべてが悪いわけではない」と川村も言う。「すべての選手が自分たちの良さをもう一度考え直して、自分たちが良い時はどんなバスケットをしているのかを振り返って、そのイメージを持って次の練習に来ることが大切だと思います」
「エナジーを出すとか集中するとかは当たり前の話で、なぜ富山をあれだけ苦しめられたのか。なぜ三河を苦しめた時間帯があったのか。そこをもう一度、コーチ陣を含めて自分たちが自己分析して理解することで、きっと良いゲームができると思っています」
「俺が持ってるものをすべてぶつけて横浜をB1に残す」
その中で、川村自身にはどんな仕事ができるのだろうか。そんな質問を投げ掛けると、「こんな試合が終わった後に? 難しいなそれは……」と苦い表情を見せたが、少し考えてこのような決意を語った。
「でもまあ僕は、僕自身B2に落ちたいって思ってる選手じゃないし、自分が属したチームをB2に落とすわけにはいかないと思ってるんで。僕は必ずこのチームをB1に残すために全力でやりたいなと思っています。今、俺が持ってるものをすべてぶつけて横浜ビー・コルセアーズをB1に残します。それしか僕には見えないんで。やれないんで」
この時だけ自分のことを『俺』と言ったのは、それだけ強い気持ちの表れなのだろう。そこにあるのは、プロバスケットボール選手としてのプライドと、ブースターへの思いだ。
「皆さんの声、気持ち、熱いものに応えられないのが本当に悔しいんですけど、でもきっとこのチームは良くなっていくと思うし、このチームが持つポテンシャルはまだ見え隠れしてるけど、きっと根深くて良いものがあると思っています。勝つことだけがすべてじゃない、って優しい言葉をかけてくれる人がいるかもしれないけど、僕らの世界では勝つことがすべてな部分も結構あるので、そういう思いに応えたい。ブースターに刺激されるんじゃなくて、僕らがブースターを刺激できるように、みんなの笑顔を奪わないように、全力で自分にできることをやりたい」
『歓迎できないポストシーズン』に回ったことで、横浜は結果としてホームゲームをまた戦うことになった。今度は平塚開催だが、残留プレーオフでブースターに勝利を届けることが使命となる。B1残留を巡るドラマは、まだまだ続く。