最後まで肉薄した展開も終盤で得点が伸びず敗戦
バイウィークまでの14試合を12勝2敗で終え、強豪ひしめく中地区で首位を走っていた三遠ネオフェニックス。中断明け初戦で西地区首位の島根スサノオマジックをホームに迎えたが、終始拮抗した展開となる中、終盤に得点が止まり79-85で敗れた。
三遠は試合開始からボールマンに対して激しいディフェンスを仕掛け、島根からターンオーバーを何度も誘発。得意とするトランジションに持ち込みたかったがファウルで潰される場面も多く、波に乗りきれない。フリースローを確実に沈めてリードを広げるかに思われたが、島根の高確率な3ポイントシュートに手を焼き、第2クォーターにはリードを許してしまう。序盤の攻防を三遠の大野篤史ヘッドコーチは次のように振り返る。「ゲームの入りは良かったです。選手たちは三遠のディフェンススタイルを表現してくれました。ただ自分たちがやられたくない形での3ポイントシュートを決めれてしまいました」
指揮官の言葉通り、試合を通じて島根の3ポイントシュートの成功率は36.7%、前半にいたっては50.0%の高確率で成功を許してしまった。今シーズンの島根は3ポイントシュート成功率37.2%(リーグ1位)で、総得点に占める3ポイントシュートの割合も33.9%(リーグ8位)と高く、長距離砲を得点源としている。吉井裕鷹も大野ヘッドコーチと同様に3ポイントシュートでの失点に言及した。「3ポイントシュートのチームに30本打たれて、36%で決められてしまいました。リバウンドはもう少し抑えられるのではないかと思います」
もう1つディフェンス面でポイントとなったが、島根のビッグラインナップに対する対策だった。三遠はウィリアムスニカを先発起用したが、序盤でファウルトラブルとなり、試合を通じて8分42秒の出場に留まった。多くの時間帯で『3ビッグ』編成の島根に対して、吉井がビッグマンの対応を任された。日本代表でも4番ポジションを担うこともある吉井だが、この日のディフェンスは満足できる内容ではなかったと話す。
「昨シーズンまでは、(ぺリン)ビュフォード選手と安藤(誓哉)選手だけがボールを持つ印象でした。今シーズンは、どこからも1on1仕掛けてくる感じで。エヴァンスルーク選手も1on1してきて、そこを決められてしまったから負けたと思います」
大野HC「こういう試合はミスした方が負ける」
また、オフェンス面でポイントとなったのがアシストだ。三遠は1試合あたり平均22.1本のアシストを記録しているが、この試合はわずか12本に終わった。当然のことだが『アシスト数が多い=ボールがよく回って得点に繋がっている』という図式が成り立つ。今シーズンに勝利した試合ではすべて20本以上を記録しており、敗戦となったアルバルク東京戦では11本、琉球ゴールデンキングス戦では13本とアシストの数が勝敗に直結している。
負けパターンとも言えるアシストの少なさに関して吉井は「1on1が多かったり、三遠っぽくないバスケになってしまいました。明日はチームでバスケできるように改善していきたいです」と話し、目指すスタイルを体現できていなかったという。
上位対決となればお互いの良いところいかに潰し合うかが重要になる。試合の中では前述のようにいつも通りできなかったこともあれば、十分に戦えていた時間帯も存在した。その積み重ねで最後の最後までわからない展開となったが、大野ヘッドコーチは勝負を決したポイントをシンプルに捉えている。「最後は自分たちがミスをして、相手が決め切ったのが勝負を分けたところでした。こういう試合はミスをした方が負けます。自分たちはその精度が足りなかったと思います」
このバイウィーク中、日本代表活動に吉井、大浦颯太、佐々木隆成が参加した。日本代表に選出されることは当然誇らしいことであり、活動から得られる経験は個人としてもチームとしても大きいものになるだろう。しかし、この間チームの練習には参加できない。
吉井は「タフでした。3人も三遠から代表活動に行っていたので、練習できたのが2日でした」と代表活動を振り返るが「でも言い訳にはならないです。そんな中でも、できた部分とできなかった部分を見極めてやっていこうと思います」と前を向いている。
この試合の結果、三遠はA東京に先行を許し中地区首位から陥落。しかし、長いシーズンを考えれば、この敗戦を経験したからこそ、見えてくることもあるだろう。昨シーズンは中盤に連勝を伸ばしたものの、終盤まで勢いが続かずチャンピオンシップでも敗退した。大野ヘッドコーチが話す通り、上位対決は1つのミスが命取りとなる。この経験を糧に三遠がさらに強くなることを期待している。