立ち上がりの3ポイントシュート攻勢で名古屋Dが優位に
B1で今最も苦しんでいるチームは、名古屋ダイヤモンドドルフィンズだろう。オールスタ―選手のジャスティン・バーレルが1月28日の川崎ブレイブサンダース戦で負傷し、2カ月に渡って欠場している。加えて滋賀レイクスターズ戦ではガードの石崎巧、フォワードの鵜澤潤といった頼りになるベテランも負傷で不在だった。
名古屋Dは西地区の2位グループに位置しているが、バーレル不在の13試合に限れば2勝11敗と低迷している。結果として三河の独走を許すとともに、京都ハンナリーズや大阪エヴェッサ、琉球ゴールデンキングスに追い付かれてしまった。
『負け方』も良くない。25日の滋賀レイクスターズ戦は82-81とリードし、さらにマイボールで第4クォーター残り8.9秒を迎えていた。しかしスローイン時の5秒バイオレーションでターンオーバーを許すという信じられないミスから、83-82の逆転負け。その前週、19日の秋田戦も最大21点差を奪い、前半を19点リードで終えたにもかかわらず、オーバータイムの末に逆転負けを喫している。
ヘッドコーチのレジー・ゲーリーは、チームのどん底状態をこう説明する。「過去10試合を振り返るとオーバータイムで3回、ブザーで3回くらい負けている。21点差を逆転された試合もあった。そういう試合が続いたので、精神的にちょっと参っているところもあった」
第1クォーターの外国籍選手オン・ザ・コート数は両チームとも「1」。名古屋Dは198cmのジェロウム・ティルマン、滋賀は203cmのジュリアン・マブンガをセンターで起用するスモールラインアップだった。お互いに外からのシュートを多投する展開になったが、名古屋Dは中東泰斗が開始直後に3ポイントシュートを沈めると、高確率で『飛び道具』を沈めていく。中東以外にも笹山貴哉、ティルマン、船生誠也、中務敏宏と計5名がこの10分で3ポイントシュートを決め、26-15で第1クォーターを終えた。
勝ち運に見放された『トラウマ』を抱えながらのプレー
名古屋は両チームのオン・ザ・コート数が「2」になった第2クォーターも、ティルマン、ディビッド・ウィーバーの両外国籍選手を中心にスコアを重ねる。44-25という前半終了時のスコアは、直近の結果を知らない観戦者から見れば順風満帆の展開に思えただろう。
数字を見ても盤石だった。昨日は5ファウルで退場になり「自分がファウルするとチームも苦しい展開になる。今日はファウルせずにディフェンスすることを意識した」という張本天傑は前半0ファウル。リバウンドも名古屋が24-13と大きくリードしていた。
滋賀の遠山向人ヘッドコーチはそんな構図をこう振り返る。「こっちが特に前半はあまり作れていない、悪いペリメーターのシュートが多かった。それを外してオープンにディフェンスリバウンドを取られたというのが一つある。あとは(張本)天傑選手や中東選手と、ウチの日本人選手に(身長面で)ミスマッチができる。周りがヘルプに行かなければいけなくて、そこへウィーバー選手にダイブされた」
一方で中東はそんな展開、そして第3クォーターの入りをこう振り返る。「秋田戦のこともありますし、リードしていても追い付かれる試合が続いていたので、安心感はなかった。3クォーターも少しずつ点差を詰められる展開だったし、全く油断はしていなかった」
ただ第3クォーターに点差を少しずつ詰められたといっても、13点差まで。中東は10得点2アシストとこの時間帯の主役となり、名古屋Dは64-48の16点リードで最終クォーターに入る。
第4クォーターに入っても名古屋Dが2桁のリードを保っていた。しかし滋賀は残り4分58秒に狩野祐介が3ポイントシュートを決め、点差は64-53と11点差に詰まる。重苦しい空気はまだ払拭できていなかった。ゲーリーヘッドコーチも「滋賀の流れになった時にちょっと選手の顔、姿勢を見ると『またか』という雰囲気が出ていた」と振り返る。
滋賀をカットされたウィーバー、リベンジの大活躍
そんなシビアな第4クォーターに12得点4リバウンドと大活躍したのがウィーバーだ。今年1月上旬にカットされるまで滋賀でプレーしており、名古屋Dに途中加入したセンターだ。ゲーリーヘッドコーチも「前にプレーしていたチームが相手で、もちろんモチベーションが高かったというのはあると思う。ウチに来てから徐々に良くなっていて、今日みたいなプレーができたのは本当にうれしい」と振り返る勝負どころの奮闘を見せた。ウィーバーは試合を通しても21得点10リバウンドでダブルダブルを達成し、2ポイントシュートは『10分の10』という大当たりだった。
最終的には84-69という不安、葛藤を感じさせないスコアで名古屋Dが滋賀を下している。連敗を4で止めるとともに、2017年に入って8試合目のホーム戦でようやくつかんだ『初勝利』だった。
ゲーリーヘッドコーチは選手の奮闘をこう称える。「タフな試合、悔しい負けの次の日しっかりカムバックしてやってくれた。本当に選手全員を誇りに思っている」
一方で指揮官はチームの現状をこう説明する。「ウチが強いチームだというのはみんな分かっている。ただケガ人が多い中で勝っていかなければいけない。フラストレーションは溜まっています。バーレル選手はウチで一番のインポートプレイヤーで、川崎がファジーカス不在でプレーするのと似たようなところですから」
バーレルの復帰についてはメドが立っていない様子。指揮官はこう述べる。「もっと早く戻ってくると思っていたんですが、なかなか戻ってこない。まだ予想はつかない。スタッフができるだけのことをやって、早く治そうとはしているけれど、まだ何も……。なるべく早くということしか言えません」
名古屋は24歳の笹山と中東、25歳の張本が主力を担う若いチームだ。司令塔の重責を担う笹山はこう口にする。「一つのシュートが入ればとか、簡単なところでの一つのパスが通ればとか、あと一つというところが毎回できていなかった。決して僕たち自身ができないことではない。コミュニケーションや、細かい一つひとつのこと……。そこだけかなと思っています」
笹山はこう続ける。「2年目で主力として出させてもらっている以上、責任感はすごくありますし、勝たせないといけない使命もある。経験、経験といわれる中でも、しっかり結果で表していきたい」
20代前半の選手たちが主力不在、連敗という状況下で主軸を担うのは過酷なことかもしれない。しかし苦しい経験の生きる日は、きっと来るだろう。
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