「コートに入る瞬間から準備ができていたか」
ブルズ戦のラスト4秒を残して、ニックスはジェイレン・ブランソンの得点で2点を勝ち越していたが、このリードを守り切れない。スクリーンを使って抜け出して3ポイントシュートを狙うコービー・ホワイトをジョシュ・ハートが後ろから倒してしまい、フリースロー3本を決められ、123-124と逆転された。
しかし、まだ3秒が残されていた。このチャンスを託されたのはもちろんブランソンだ。今回もパトリック・ウィリアムズの1対1となり、ステップバックで放ったシュートはリムの内側を2度3度と叩き、ボードに繋がる支柱の上を転がって外へとこぼれ落ちた。
ニックスはこれで5勝6敗、いまだ波に乗れていない。開幕時点では、東カンファレンスにおけるセルティックスの唯一の対抗馬がニックスという評判だった。OG・アヌノビーにミケル・ブリッジズとリーグ最強のロールプレーヤー、多彩な能力を持つ万能センターのカール・アンソニー・タウンズ、ハードワークができ精神的にもブランソンを支えられるハートと、昨シーズンにMVP級のパフォーマンスを見せたブランソンを中心とする最強のメンバーが揃った。
新加入選手が多いニックスがチームとして機能するまで、しばらく時間が必要なのは間違いない。心配なのはブランソンが昨シーズンの勝負強さを発揮できていないことだ。昨シーズンと比較すると得点は28.7から24.3へ、アシストは6.7から6.5へ、フィールドゴール成功率は47.9%から46.3%へ、3ポイントシュート成功率は40.1%から37.7%へと数字を落としている。まだシーズン序盤だし、数試合の活躍で取り戻せるわずかな差だが、昨シーズンに見せた支配力を欠いている印象も受ける。
「高校の頃からずっと得意にしているシュートだった。自信を持って打ったつもりだ」と、ブランソンは決まらなかったラストショットを振り返る。「でも相手も粘り強く守った。決まらなかった以上、話せることは多くないよ」
ブランソンはこのブルズ戦の前日に敵地でセブンティシクサーズと戦い、途中で足首を痛めてベンチに一度は退いている。そして連戦となるブルズ戦にも先発出場とハードワークをこなした。満身創痍でも勝負どころで恐るべきクラッチ力を発揮した昨シーズンに続き、彼は負荷管理など頭にないようにプレーし続けている。
ケガを抱えながら2日連続でプレーした理由を問われると「仲間たちに『何があっても戦うことを止めない』と示そうと思ったんだ」と説明し、満身創痍でも勝負どころで恐るべきクラッチ力を発揮した昨シーズンのパフォーマンスを再現できないことについて「言い訳をしてもカッコ悪いだけ」と語った。「無理にプレーをしているわけじゃない。試合数だってまだ少ないしね。望んでいた結果にはならなかったけど、そこから学べることもある。取り組むべき課題を認識して、前に進めばいい」
そしてブランソンは、勝敗を分けた要因をクラッチタイムの攻防とは別のところに見いだそうとした。それは自分がラストショットを外したことよりも、軽率なファウルをしたハートを擁護しているように見える。「みんな最後の2分間を見て『ああすれば良かった』といろんな議論をするけど、そうじゃない。ロッカールームを出てコートに入る瞬間から準備ができていたか、そこから見直すつもりだ」