ドウェイン・ウェイド

写真=Getty Images

「ここでは泣かない。今は喜びに満ちているんだ」

4月9日にアメリカンエアラインズ・アリーナで行われたセブンティシクサーズ対ヒートは、感動的な形で試合終了の瞬間を迎えた。

ドウェイン・ウェイドが今シーズン初の先発出場を果たし、現役最後のホームゲームで30得点をあげ、チームが122-99で勝利したからだ。唯一残念だったのは、ヒートのプレーオフ進出の可能性が潰えたこと。同日グリズリーズに勝利したピストンズのプレーオフ進出が決まったのは、ちょうどシクサーズ戦の第3クォーターあたりで、会場の誰もがウェイドにとって最後のホームゲームになることを理解していた。

試合前には、盛大なセレモニーが執り行われた。前アメリカ合衆国大統領のバラク・オバマ氏からもメッセージが届き、キャリア16年の功績を称える動画が上映され、「MVP!」チャントで出迎えられたウェイドは「泣かされそうになったよ」と笑顔を見せると、「みんなのことが大好きだ。チームメートのみんなにも、今シーズンを通じて自分のダンスにつき合ってくれてありがとう。自分を支えてくれてありがとう。チームのみんなのことも大好きだ。ヒートネーション、ありがとう!」と感謝の気持ちを伝えた。

すでに勝負が決していた第4クォーター残り1分2秒にベンチに下がったウェイドは、スタンディングオベーションで称えられた。シクサーズの選手からも拍手を送られ、彼はチームメート、コーチたちと言葉をかわしてコートを降りた。

試合後には、今シーズンの恒例となっているジャージー交換を行い、ブルズ時代にチームメートだったジミー・バトラーとジャージーを交換。そして、チームメート全員もウェイドのジャージーを手に持ち記念撮影し、2003年からヒート一筋のキャリアを送るユドニス・ハズレム、長男のザイールともジャージーを交換した、

試合後のインタビューで、ウェイドは「ここでは泣かない。今は喜びに満ちているんだ」と語ったが、慣れ親しんだ会場でプレーしなくなる現実と向き合うには時間も必要と、続けた。

「チーム、チームメートがここでプレーしていて、そこに自分はいない。そういう状況に慣れるには、時間がかかる」

マイクを掴んだウェイドは、「どういう終わり方が相応しいかは分かっているよ」と言うと、コートサイドのテーブルの上に立った。そして、『家族に近い存在』を意味するスラング、countyを用い、「ウェイド・カウンティ」とファンに呼びかけ、「愛しています」の一言で締めくくった。