「エースを守るという指示は、みんながされるようなことではない」
大阪エヴェッサは開幕4連勝から3連敗を喫するなど波がある中、前節のレバンガ北海道戦で同一カード連勝を果たし、西地区3位に浮上している。
勝利時は平均86.8得点を挙げているのに対し、敗戦時は平均87.6失点と、ディフェンスの安定が成績を伸ばすために必要となる。こうした状況で特にディフェンス面で期待されるのが飯尾文哉だ。4年前に特別指定選手として大阪に加入した飯尾は昨シーズンにプロ契約を結んだ。昨シーズンは56試合中8試合で先発を務めたが、今シーズンは9試合を終えた時点で3試合に先発と出場機会を増やしている。
藤田弘輝ヘッドコーチは「とにかくディフェンスを頑張ってほしい」と言い、飯尾のディフェンス力に期待している。「長崎ヴェルカ戦はパンチ力のあるマーク・スミス選手と馬場(雄大)選手のラインナップだったので、彼をスタートで起用しました。彼はフィジカルですし、アスリートレベルも高いので、もっと成長してくれたらと思っています」
ディフェンス力を買われプレータイムを伸ばしている飯尾は、前半に0-14のランを許し敗れた長崎戦をこのように振り返る。「スタートで出ましたが、出だしで走られてしまいました。自分がファウルで止められる部分もありましたし、もっとクレバーに考えてプレーしていかないといけなかったです」
ビッグランは一人が原因ではなくチーム全員の意識が共有されていない状況で起こりやすいが、飯尾はそれを自分の責任としてとらえている。それはエースキラーを任されることへのプライドがあるからだ。「(スコアラーへのマークを任されるのは)素直にすごくうれしいです。相手のエースを守るという指示は、みんながされるようなことではないので。ディフェンスは少しずつ良くなってきて、今年もコーチから託されていますし、継続してやっていきたいです」
一歩ずつ成長の歩みを進めている飯尾だが、今後はディフェンスに加えオフェンスで存在感を示すことが求められる。今野翔太ゼネラルマネージャーも「要所ですごく良いプレーを見せてくれています。もう少しスコアも伸びてきたら、彼の輝く時間が増えてくるんじゃないかと思っています」と、期待を寄せている。
今野GM「原修太君になれ」
飯尾もオフェンスが課題であることは理解している。精度を上げることは当然だが、今はリングにアタックする意識を高めることに注力している。実際にシーホース三河戦では2試合計でわずか2本のフィールドゴール試投数に留まったが、直近の3試合では10本に伸ばしている。飯尾は言う。「前回の三河戦では2日で2本しかシュートを打てなかったです。もう少しアグレッシブに攻めなければ存在価値がなくなると思っています。シュートこそ入らなかったですが、長崎戦はアグレッシブに攻めることができました。もっと果敢にアタックに行って、チャンスを作っていきたいです」
飯尾のオフェンス面での成長は大阪の向上に直結する。今野GMはリーグ屈指のディフェンダーの名前を例に出し、彼が目指すべき姿について語った。「ディフェンスを求められているので、そこから評価を上げてスコアも4点の日、6点の日、8点の日と作っていけば、彼にスコアを任せる日が出てくると思います。(千葉ジェッツの)原修太君になれと、藤田HCもそういうキャラになってほしいと言っています。ゴツくし過ぎたらあかんけど、身体も分厚くなっています。外国籍とのマッチアップも任されて、スタートで起用されるということは、それだけ評価されているということ。何を求められてるのかということだけは忘れずに、いつか2桁得点を挙げる時が来ると思うので、そこから一気に波をつかんでほしいですね」
昨シーズンに『B.LEAGUE ASIA RISING STAR GAME』に初選出されたように、リーグから見ても飯尾は期待の若手だ。そのため、『ヤングスター』と称されることもあるが、彼はもっと上を目指している。「そう言われるのはすごくうれしいですけど、『ヤングスター』止まりで終わってしまうような選手にはなりたくないです。チームで中心を担う選手になりたいですし、オフェンスもファーストオプションを任されるようになりたい。自分はディフェンスから相手を苦しめて、流れを持ってくる選手として今はディフェンスを徹底してやっていますが、チャンスがあればいつでも得点を狙っていきます」
ディフェンスで評価を高め日本代表まで上り詰めた原のように、飯尾が攻守両面で存在感を高めることができれば、2020-21シーズン以来のチャンピオンシップ出場も見えてくるだろう。