開幕前にケガ人続出、昨シーズンの再現を避けられるか
河村勇輝も開幕戦のロスターに加わったグリズリーズは、『反撃のシーズン』に臨みます。2021-22シーズン、2022-23シーズンと2年連続で西カンファレンス2位と躍進し、強豪としての地位を確立したかに見えましたが、ジャ・モラントがプライベートで起こした問題で長期欠場となったことに加えてケガ人が続出。離脱者だらけの昨シーズンは13位に沈みました。モラントが開幕から出場する今シーズンは、上位への返り咲きが期待されます。
しかし、そんな簡単に物事が進まないのがNBAです。1年の間にスティーブン・アダムス、ディロン・ブルックス、タイアス・ジョーンズ、ザイール・ウィリアムズ、ゼイビアー・ティルマンSr.、デイビット・ロディーと多くの選手がチームを去り、かつては誰が出てきても変わらぬチーム力を発揮していたグリズリーズの強みには変化が生じているはずです。
プレシーズンゲームではペイント内得点や速攻といった2年前までの長所を発揮しきれておらず、何より平均21ものターンオーバーは連携面が未熟であることを示しています。その一方で3ポイントシュートのアテンプトが増え、新たな特徴も出始めました。『2年前までの強さ』を追い求めるのではなく、新しいチームとして再出発することが重要です。
特に重要になるのはモラントとデズモンド・ベインの2人のエースに加えて、マーカス・スマートを並べるガード陣のコンビネーションと役割分担です。ハンドラーとして仕掛ける機会の多いモラントとベインに対して、シューティングに難のあるスマートをどのように組み合わせるのか。ゲームコントロール力を持ち味とするスマートが、トランジション主体のチームオフェンスにどんな相乗効果を生み出せるのか。スマートのプレースタイルはこれまでのグリズリーズからすると異物ですが、これを上手く取り込み有効活用できるかが上位浮上の一つのカギとなってきます。
また、大事な開幕を前にジャレン・ジャクソンJr.を始めローテーションプレーヤーにケガ人が相次いでいるのも問題です。それで河村がベンチ入りのチャンスを得ているわけですが、選手層が決して厚いとは言えないグリズリーズが、長いシーズンに乗り出すこのタイミングですでに離脱者を何人も出している状況は不運では片付けられません。この時期にケガ人が多いと戦術の浸透や連携の構築にも遅れが出ます。昨シーズンはケガ人続出で自滅しただけに、その失敗を繰り返さないための対策が不可欠です。
とはいえ、結局のところグリズリーズはモラントのメンタリティに左右されるのでしょう。銃にまつわる問題を繰り返さないのは当然として、リーダーとしてチームを引っ張り、コート上ではチームメートのために自己犠牲を厭わず動き、そして試合終盤には圧倒的な個人技で勝利をもたらすこと。チームの変化やケガの問題など課題はありますが、そのすべてを吹き飛ばすスーパースターの姿をモラントが見せられるかどうかが、グリズリーズの命運を左右します。