ドンテ・ディビンチェンゾ

「ヤツらに任せるからこんなことになるんだ」

ドンテ・ディビンチェンゾはカール・アンソニー・タウンズのトレードの一部としてニックスからティンバーウルブズへ送られた。一緒に移籍したジュリアス・ランドルはニックスで5シーズンを過ごしたが、トレードを『NBAのビジネス』と割り切っている。一方でディビンチェンゾはこの2年で4チームと移籍を重ねており、ビラノバ・カルテット解散は惜しいとしても、1シーズンしかプレーしなかったニックスへの愛着はさほどないかと思われた。

だが、そうではなかった。トレードから2週間、プレシーズンゲームでマディソン・スクエア・ガーデンに戻って来たディビンチェンゾは荒れていた。フリースローを放つ直前、ニックスのベンチにいる指揮官トム・シボドーに向かって「ヤツらに任せるからこんなことになるんだ」と叫び、「僕は決められないんだよな、ティブズ?」と言い放ってフリースローを決めた。

そして試合後には、両チームの選手やスタッフが健闘を称える中、彼はニックスのアシスタントコーチでジェイレン・ブランソンの父親であるリック・ブランソンと口論をしている。ブランソンやジョシュ・ハートと抱き合うシーンもあったが、彼がトレードに納得していないのは明らかだ。

ディビンチェンゾは感情的になりながらも27分の出場で15得点3リバウンド7アシストと素晴らしいプレーを披露した。ただ、試合後は口論について質問攻めになった。

彼は昨年に4年4600万ドル(約69億円)の契約を結んでニックスの一員となった。試合後はそれを引き合いに出し、「4年契約を結んで1年でトレードされたいとは思わないものさ」と語る。シボドーへのトラッシュトークは「冗談を言っただけさ」とかわし、リック・ブランソンとの口論は「男同士、僕らだけの間に留めておく」とコメントを避けた。

同時に、ウルブズのユニフォームを着て入場した彼を大きな拍手で出迎えたニックスファンに対してわだかまりはないことを強調する。「ニックスのファンへの愛は際限がない。昨シーズンは僕の人生で最高の1年だった。だから『NBAのビジネス』とファンは切り離して考えたい。ここのファンは僕の心の中でずっと特別な存在だ」

また、この試合を前にディビンチェンゾは、ミカル・ブリッジズの加入により出場機会が減ることに腹を立てたという噂を「全くのデタラメ」と否定している。「みんな先発出場したいのは当然だけど、チームには様々なラインナップがあることも理解している。僕はミカルの加入に腹を立ててはいない。むしろ素晴らしい選手の獲得を喜んでいた。僕の役割が減る、出場時間が減るという話は一度もなかった。それは外部の憶測でしかないよ」

オフ終盤に突然決まった移籍だけに、ディビンチェンゾはまだ引っ越しをしておらずニューヨークの自宅をそのままにしている。今回はアウェーでの試合にもかかわらず、前夜は自分のベッドで眠った。「奇妙な経験だった」と彼は言い、トレードをこう振り返る。

「トレードを知らされたのは家にいる時だった。その経緯はいろんな噂で知ることになった。ウルブズに行くのは良いとして、それ以外はすべて納得しづらかった。トレードされたいとは思っていなかったから動揺したし、傷付いた。ただ、すぐに次のことに目を向けた。それが僕のやるべきことだからだ」

タウンズは試合後にアンソニー・エドワーズはユニフォームを交換した。「もう誰かと約束していたとしても、絶対に僕と交換してもらう」というエドワーズに応じたもので、タウンズはつい先日までのチームメートと和やかに談笑していた。ただ、全員がそう振る舞うことができるとは限らない。このトレードはシーズン開幕後にも余波がありそうだ。