ダニー・グリーン

「こうして身を引くことを誇りに思っている」

ダニー・グリーンが自身のポッドキャスト番組で現役引退を発表した。2009年のNBAドラフトで2巡目46位指名を受けてキャバリアーズに加わったグリーンは、2年目の開幕前に解雇され、スパーズに拾われたもののDリーグ(現在のGリーグ)からの再スタートを余儀なくされた。

だが、そこから彼のサクセス・ストーリーが始まる。スパーズ2年目の2011-12シーズンにローテ入りを果たすと、そこからチームに欠かせない『3&D』へと成長した。『3&D』とは3ポイントシュートとディフェンスでチームに貢献する選手のことだが、当時まだこの言葉は一般的ではなかった。エースではなく、セカンドオプションだったこともないが、そういった選手が攻めきれない時にボールを外に出せば、そこに待ち構えていたグリーンが3ポイントシュートを決める。ディフェンスがこれをケアすれば中が空き、エースや2番手の選手が攻めやすくなる。スパーズの完璧な連携は、この仕組みを最大限に活用し、グリーンの価値は急上昇した。

2014年にNBA初優勝を手にして、2018-19シーズンにカワイ・レナードとともに移籍したラプターズで2度目の優勝。その翌年にはレイカーズで自身3度目の優勝を勝ち取った。エースのレブロン・ジェームズ、セカンドオプションのアンソニー・デイビス。彼らのためにスペースを生み出し、3ポイントシュートを決める。『3&D』の集大成としてのグリーンの活躍がそこにはあった。

しかし、次に所属したセブンティシクサーズで左膝の前十字靭帯を断裂する大ケガを負う。この時すでに35歳になる直前。9カ月の戦線離脱を経て復帰したものの、かつてのようなインパクトは残せなかった。

現地10月10日、自身のポッドキャスト番組に出演したグリーンは髪を短く切っていた。「変化の時期が来たからなんだ」と彼は言う。「みんな何か悪いことがあったり失恋したりすると髪を切る。僕の場合も似たようなものだけど、良い目的のためだ。セカンドキャリアのために、と言うべきかな。髪を短くしたのは手入れが楽になるのと、メディアの世界でこれまでとは違う印象を与えるためだ」

「僕はバスケットボール選手を正式に引退する。37歳になって身体が少しずつ老いてきたと感じるし、心も同じように情熱を失いかけている。ほぼ1年間ゲームから離れて、自分がまだ動けることをアピールするのがキツいと感じるようになった。残念だけど僕のプレーは若い頃のように求められない。自分自身で納得できているし、こうして身を引くことを誇りに思っているよ」

髪を切った説明からも分かるように、グリーンは引退後に解説者やアナリストになることをイメージしている。「コーチ業にすごく興味があるわけじゃないけど、絶対にコーチをやらないとは言わない。良い機会があればやってみよう、何でも試してみようという感じだ。でも、大学で4年、NBAで14年やるのは心身ともにすごく大変だった。引退を決めた今、ストレスのかかる状況からしばらく離れたい気持ちがある。メディアの一員としてこの競技の魅力を伝えたい。一般のファンだけでなく、若い世代にも、そして僕の子供たちにもアドバイスができたらいいと思う」

「簡単な決断ではなかったけど、時が来た。チームから声が掛からなくなったこと以外にも兆候はいくつもあった。この1年は努力してきたけど、もう同じことはできない」