持ち味の3ポイントシュート復活へ、2試合で10本打つことを意識

アルバルク東京は9月7日、8日にそれぞれホームでプレシーズンゲームを実施。7日は広島ドラゴンフライズに98-50、8日は長崎ヴェルカに76-62と、ともに持ち味の堅守からリズムを作って勝利を収めた。

リーグ創成期の連覇達成時からメンバーも大きく変わったA東京において、今シーズンが在籍4年目の安藤周人は3ポイントシュートと粘り強いディフェンスで確固たる地位を確立している。安藤を始め、A東京は昨シーズンの主力メンバーが揃って残留しており、チームが始動したばかりだが、見事な組織力を発揮していた。

安藤はチームの現状について次のように語る。「去年とほぼ同じメンバーなので何か大きく変わることはないですが、ディフェンスのシステムでまだ忘れているところもあります。そこをもっと突き詰めないといけないといけないです。この2試合を通してたくさん課題が出たので(9月21日から23日の)天皇杯に向けて、修正をしていきたいです」

そして、自身の仕上がり具合をこのように分析している。「練習では本当に良いシュートタッチが続いていましたが、こうしてファンの皆さんの前でプレーすることで気持ちが昂るというか、普段に比べてブレてしまうところがありました。その違いに合わせるのが難しかったなと。天皇杯へ向けしっかりと準備をしていきたいです」

リーグ有数のシューターである安藤だが、昨シーズンは代名詞の3ポイントシュートで本来の爆発力を発揮できなかった。チーム戦術との兼ね合いもあるだろうが、シーズンが深まるに連れてスムーズな形でシュートを打てる機会が減っていき、それに伴って成功率も落ちていった。特に第3戦までもつれる激闘の末に敗れた琉球ゴールデンキングスとのチャンピオンシップクォーターファイナルでの3ポイントシュートは、3試合合計で11本中1本のみの成功と完全に沈黙してしまった。

持ち味の復活に向け、まず安藤に求められるのはしっかりと打ち切ることだ。本数については、このような意識を持ちたいと語る。「平均して5本くらいは打ちたいです。そこでいかに確率良く決められるのかが大事になっていきます。そして各試合で5本打つより、2日間で10本打とうと意識する方が、自分の中であまり考えなくて済みます。2日で10本打って4本入ればという考えだと、気も楽になる。チームのためにしっかりと打つことを考えていきたいです」

「やっと自分に合っているモノに気付けたと思います」

今年で30歳と安藤もベテランの域に達してきた。キャリアを重ねる中で個人のエゴを消し、仲間の持ち味を生かすための献身的なハードワークもより強みになってきた。だが、チームファーストの姿勢に重きを置くあまり、良くも悪くも強引さが減り、安定感と引き換えに怖さがなくなりつつあったのも事実だ。

そういった変化に安藤自身は、どこかで違和感を感じていた。「去年に関してはシーズンを通して、何をしたらいいのかなという感じでした。CSだけでなく、シーズン全体で納得がいくものではなかったです。今シーズンはしっかりと割り切ってやりたいです」

このように安藤は、昨シーズンの苦悩を明かす。その上で導いた『割り切る』姿勢とは貪欲に長距離砲を狙っていくことだ。新シーズンでは、次のマインドセットで臨むという。「2番ポジションとしてピック&ロールも使わないといけない、アシストも増やしていきたい、という考えでした。でも、ここ最近思ったのは、(そういう部分を強く意識するのは)自分の性に合わない。そんなことばかり考えているからうまく行かなかったと。まずは、やっぱりシュート第一で攻める気持ちを強く持ちたい。その姿勢でやることで練習中も良い感じですし、自分の性格にも合っています。30歳になってあらためて気づけたところで、去年とは違う、貪欲に点数を取りに行く姿を見せたいです」

そして、安藤は「もちろんパスやリバウンドも大切です。ただ、自分にとってシュートを入れることの楽しさがバスケットボールの始まりでした。全力で点数を取りに行って楽しむことを目標にしたいです」と語る。

『バスケを楽しむ』という言葉だけを見れば、とてもシンプルだ。しかし、様々な役割にトライし、試行錯誤を重ねた上で辿り着いた答えであることに大きな意味がある。一見すると回り道に思えるかもしれないが、安藤はこれまでの歩みは大切なものだったと言い切る。

「ここに来るまでいろいろと考え抜きました。名古屋(ダイヤモンドドルフィンズ)にいてスタッツが1番良かった時はその考えだったのが、スタッツもどんどん下がっていく中で考え方が変な方向にいってしまいました。去年のシーズンがあったからこそ、自分の性格に合っているプレースタイルがどんなものか深く考えることへと繋がりました。やっと自分に合っているモノに気付けたと思います」

最後に安藤は、A東京ファンに見せたい新シーズンのプレーをこう締めくくってくれた。「新しいというより、戻った自分を見せたい。どれだけシュートが外れても打ち続ける、得点を狙って楽しんでいる姿をお見せできたらと思います」

ちなみに安藤の最もスタッツが良かったシーズンは2018-19シーズンで、平均14.6得点、3ポイントシュート成功率は40.8%。さらに3ポイントシュート成功本数はリーグトップで、一瞬の隙も逃さず積極的に放つ長距離砲で、相手に大きな脅威を与え続けていた。原点に立ち返った安藤が、この時と同等のパフォーマンスを見せることができれば、A東京の王座奪還はより現実的なものとなる。