SNSを通してアレハンドロHCにコンタクトを取り、代表合宿に参加

9月2日からヨルダンで行われる『FIBA U18アジアカップ』へ向け、男子U18代表は強化合宿を行っている。8月27日のメディア公開の時点で、強化合宿には14名が参加しており、12名のメンバー入りをかけてのサバイバルレースは大詰めとなっている。

この14名は、今年のインターハイで東山高校を優勝に導いた瀬川琉久、昨年6月に行われたU19ワールドカップに出場した主将の内藤耀悠(レバンガ北海道)、204cmのビッグマン渡邉伶音(福岡大学付属大濠高)など、4月にドイツで行われた国際大会『アルバート・シュバイツァートーナメント』に出場したメンバーが主体となっている。また、唯一の中学生である四日市メリノール学院中の白谷柱誠ジャックも注目の存在だ。

そんな中、異彩を放っているのがオーストラリア在住の16歳、シリル・ミュロだ。これまでにも山之内勇登(ネバダ大)やロロ・ルドルフ(カリフォルニア州立大フラトン校)など海外で活動している選手が代表入りしているが、彼らは総じてアメリカ育ちだ。オーストラリアで生まれ育ったミュロは、これまでにないバックボーンを持った選手と言える。

175cmでポイントガード登録のミュロは、西オーストラリア州のWilletton Senior High Schoolに在学中。ただ、オーストラリアの高校バスケは日本と違い、1年中活動している訳ではない。メインとなるのはクラブチームで、ミュロもワーウィック・セネターズというNBL(オーストラリアリーグ)の下部リーグであるNBL1のユースチームに所属している。また、地元で1番のビッグクラブであるNBLの強豪パース・ワイルドキャッツのアカデミーにも参加している。そして、4月にはそれぞれの各地域毎の選抜チームが戦うU18オーストラリア選手権にウェスタン・オーストラリア・メトロチームで出場し、ランキング3位の平均4.8アシストを挙げている。

ミュロの日本代表との接点だが、これは本人の売り込みだ。母親が日本人である彼は元々、日本代表に関心を持っていたという。「(昨年9月の)U16アジア選手権で、ケニー(ベネディクト研一郎)や(白谷柱誠)ジャックなどの代表が素晴らしいプレーをしていたのを見て、より日本代表でプレーすることを考えるようになりました。そしてSNSを通してアレハンドロ(マルチネス)ヘッドコーチに自分でコンタクトを取り、彼がJBAに相談してくれたのがきっかけです」

「日本の文化をリスペクトしていますし、代表になって日本のためにベストを尽くしたい」

このように経緯を教えてくれたミュロは、4月のドイツの大会前の合宿にも参加していたが、その時はメンバー入りできなかった。しかし、再び今回招集され、アジアカップのメンバー入りまであと一歩に迫っている。

自身の持ち味について、ミュロは「シュートに自信がありますし、僕はとてもアグレッシブなディフェンダーです。他の選手を生かすこともできます」と語る。さらに、チーム事情に応じて様々な役割をこなせると続けた。「僕はコンボカードで、チームが求めた役割をこなすだけです。オーストラリアでは、所属チームで主に得点を求められています。ただ、このチームではみんなが得点を取れるので、チームメートをオープンにすることなどをより意識しています」

また、「最も好きな日本人選手の1人は、富永(啓生)選手です。彼は素晴らしいシューターで、オフボールの動きに優れています。彼はどんなチームでもそのシュート力でプレーできると思います」と語り、好きなNBA選手を聞くと、ニックスの大黒柱を挙げる。

「NBAではジェイレン・ブランソンが好きな選手です。ペイントアタックからオープンの味方を見つける、彼のプレースタイルが気に入っています。そして、慌てることなくしっかりと我慢して自分のペースでプレーするところは参考にしていきたいです」

サバイバルは終盤を迎え、14名までメンバーが絞られた現在の心境をミュロは次のように語る。「まず、日本代表としてプレーする機会を得られるチャンスを与えてもらったことに感謝しています。日本の文化をリスペクトしていますし、代表になって日本のためにベストを尽くしたいです。合宿ではハードにプレーし、自分だけでなく他の選手が成長する手助けをしたい。もし、自分が代表に選ばれなくてもチームがヨルダンで最高の結果を残してくれることを望んでいます」

本人が語るように、彼が本大会メンバーに選出されるのかは分からない。だが、もしメンバー入りを果たした場合、バスケ大国オーストラリア仕込みのどんなプレーを見せてくれるのか注目したい。