スペンサー・ホーズ

写真=Getty Images

プレースタイルを変え、Gリーグで奮闘中

2007年のドラフト全体10位でキングスから指名されたセンターのスペンサー・ホーズは、その後6チームを渡り歩き、2017年9月、サラリーキャップに空きを作りたかったバックスから解雇された。NBAで10年という立派なキャリアを送った彼だが、ビジネスが優先される手法に嫌気がさし、解雇された直後は気持ちが切れた。そして、引退するつもりでいた。だが、しばらく時間が経ち、自らの意思ではなく、解雇されたことで現役生活にケジメをつけた自分に苛立ち始めた。

ホーズは当時の心境を、『OC Register』に次のように語った。

「(解雇されて)はじめは、『もう10年もやった。もうおしまい。やってられるか。これからは自分の人生は自分で決めたい』という感じだった。ストレスに対する反応のようなものだね。でも、心のどこか、ハートのどこかでは分かっていたんだ。まだ止める準備はできていないということをね」

一念発起したホーズは、ビッグマンであっても機動力、3ポイントシュートが求められる現代のNBAスタイルにアジャストできるよう、故郷のシアトルでトレーナーと共に練習を始めた。現役時代に評価してくれたNBAチームの関係者から声をかけられることはあっても、契約を打診されるまでには至らない時期が続き、彼はGリーグでプレーすることを決意する。そして、3月はじめにサウスベイ・レイカーズと契約し、これまでに7試合に出場。平均16.9得点、7.4リバウンド、3.4アシスト、1.4スティール、1.7ブロック、フィールドゴール成功率48.2%、3ポイントシュート成功率56.3%を記録している。特に大きく変わった点は、3ポイントシュートに対する意識だ。

NBAでのキャリア最多となる3ポイントシュート成功数は、1試合5本というパフォーマンスが10年で2回だったのに対し、Gリーグでプレーするようになってからは、すでに2試合で5本の3ポイントシュートを成功させている。無論、NBAとGリーグではレベルの差は存在するものの、久々の実戦で、しかも短期間でこれだけの成績を収められているのは猛特訓が実った証拠。サウスベイ・レイカーズを傘下に持つレイカーズはプレーオフ争いから脱落したため、状況次第では来月の最終戦までにコールアップされる可能性も出てくるかもしれない。

ホーズは「何もせずに不平不満を言うか、自分の力で立って、元いた場所に戻るかは自分で決められる。これは競争。自分にとって慣れ親しんだ場所。コートに出て、いくつかプレーを決めた時に気づくんだ。『自分が大好きなことって、これだったんだな』とね。それに、まだ得意なことだし」と言う。

いくらGリーグで結果を残したとしても、来月31歳になる選手がNBAに復帰できる保証などない。ましてや、Gリーグはこれからの若手が成長する場だ。それは、ホーズ本人が一番よく分かっている。

「余裕なんてないよ。自分のような状況の選手に、未来予想図があるかどうかも分からない。ただ、やってみるしかないんだ」

NBA復帰を果たせるかどうか、ホーズの挑戦の行方を追い続けたい。