ケンテイビアス・コールドウェル・ポープ

「ディフェンスに集中していれば、あとは上手くいく」

ケンテイビアス・コールドウェル・ポープはレイカーズ、ナゲッツと異なる2つのクラブでNBA優勝を勝ち取った。NBAキャリア11年目を終えて31歳で迎えた今オフ、彼はフリーエージェントとして自分の行くチームを選べる立場となった。ナゲッツの居心地は良かったはずで、サラリーキャップの縛りがなければ延長契約を結んで残留していたかもしれないが、ナゲッツにその余裕はなかった。ナゲッツについて彼は「受け入れるのに時間がかかった」とだけ話す。そして外を見回した時、彼の目に魅力的に映ったのがマジックだった。

マジックと結んだ契約は3年6600万ドル(約100億円)だが、高給を得てキャリアの余生を送るつもりは彼にはない。オーランドにやって来た彼は「この1年間でのチームの成長とプレーオフ進出を見てきた。チームに足りないものを僕が補えると感じた」と語る。

コールドウェル・ポープはキャリアを通じてスター選手ではなく、その周囲を固める有能なロールプレーヤーだ。それでもマジックのジェフ・ウェルトマン球団社長は、スター選手以上の価値を彼に見いだし、地元メディアにこう紹介した。「すごいスタッツを記録するわけではないが、私が思う『チームが勝つために必要な要素』をすべて備えている。常に試合に出て、常に相手のエースをマークして止める。そんな選手のプレーが私を興奮させるんだ」

レイカーズが優勝した2019-20シーズンにはレギュラーシーズンとプレーオフを合わせて90試合に、ナゲッツが優勝した2022-23シーズンには同96試合にコールドウェル・ポープは出場している。ディフェンスのスペシャリストとして、フロアを広げて相手の警戒が甘ければ決めてくる堅実なシューターとして、コールドウェル・ポープは常にチームに貢献し続ける。そのプレーは選手と選手の個性を繋ぎ、チームとしての機能性を高める。これが目立つスター選手ではない彼が2度のNBA優勝を勝ち取っている理由だ。

ウェルトマン球団社長が熱く説いた結果、地元メディアの『Orlando Sentinel』はこんな記事を書くことになった。「必死のシクサーズと競り合ってポール・ジョージを獲得していたら、近い将来にはサラリーキャップ地獄に陥っていた。マジックにはパオロ・バンケロ、フランツ・バグナー、ジェイレン・サッグスという将来のスター選手がいる。彼らを導き、チームをさらに上のレベルに引き上げるのは、ジョージではなくKCP(コールドウェル・ポープの愛称)だ──」

熱の入りすぎた記事がどこまで正しいかはさておき、このチームに必要なのはきらびやかな才能ではなく汗を流すのを厭わない戦士だ。指揮官ジャマール・モズリーはディフェンスを重視し、タフに戦ってロースコアゲームに競り勝つバスケでマジックをプレーオフチームへと成長させた。そのスタイルにコールドウェル・ポープがフィットするのは間違いない。

「僕にとってディフェンスとは、試合に勝つために必要で、このリーグで優勝するために必要なものだ」とコールドウェル・ポープは言う。「ディフェンスに集中していれば、あとのことは自然と上手くいく。このチームはオフェンスもディフェンスも徹底的にやる。それは僕のスタイルでもあるから、難なく溶け込めると思っている。新しい環境に入っていくのだから、いきなり何かを要求したりはせず謙虚にやるよ。新しい環境に馴染み、みんなにとって居心地の良い環境を作り、みんなが力を合わせて目標に向かっていくグループを作る手助けをしたい」

彼は表立ってリーダーシップを発揮しようとはしていないが、自分の姿で若い選手たちにあることを伝えようとしている。「勝者のメンタリティとは、犠牲を払うことだ」と彼は言う。「チームのために犠牲を払い、状況次第で臨機応変に動く。そして何があっても謙虚であること。犠牲を払わずして成功は手に入らない」