「アグレッシブにプレーすることだけを考えた」
ニックスとペイサーズのカンファレンスセミファイナルは『GAME7』にもつれたが、ファンが期待するようなテンションの試合にはならなかった。第1クォーターで39-27とリードしたペイサーズが、残るすべてのクォーターで上回って130-109の完勝。ペイサーズの持ち味であるハイテンポな攻撃バスケは存分に発揮されたが、それはニックスに戦う力が残っていなかったからでもあった。
ニックスはこの『GAME7』にハムストリングを痛めて3試合を欠場していたOG・アヌノビーを復帰させ、腹部の肉離れで第6戦を最後までプレーできなかったジョシュ・ハートも先発に据えた。アヌノビーは試合序盤に2本のシュートを決めて好調かと思われたが、4分半プレーしただけで動けなくなってしまった。そしてハートも37分プレーしたものの、攻守ともに彼らしい激しさは出せず。さらにミッチェル・ロビンソンのケガで唯一のセンターであるアイザイア・ハーテンシュタインが前半からファウルトラブルに陥り、ニックスのゲームプランは崩れてしまった。
それでも戦い続けたニックスだが、決定打は第3クォーター中盤に訪れた。アーロン・ネスミスのドライブを止めにいったジェイレン・ブランソンが、相手の身体に左手を引っ掛けてしまい骨折。ベンチに下がって様子を見て、一度はコートに戻って来たものの、プレーを続けることはできなかった。
ペイサーズはタイリース・ハリバートンが第1クォーターだけで4本の3ポイントシュートを決めてオフェンスを牽引。ハリバートンは後半の頭にニックスが7-0のランを見せた時にも、3ポイントシュートを沈めて嫌な流れを断ち切っており、試合を通じては26得点6アシストを記録した。
ハリバートンは「ただアグレッシブにプレーすることだけを考えた」と振り返る。「僕が攻め気を出せば、それはチームメートのためになる。だからこの2人(マイルズ・ターナーとパスカル・シアカム)のスクリーンからできる限りリムを攻め、そこからキックアウトして2人に決めてもらうんだ。僕にとって大事なのは、試合の局面局面で何が必要かを正しく感じ取ること。今日は『GAME7』だし、ちゃんと分かっていたよ。ここで積極的に攻めなかったら、夏の間ずっと文句を言われるんだからね(笑)」
ペイサーズはチーム全体でフィールドゴール79本中53本成功、成功率67.1%というプレーオフでの新記録を打ち立てた。ターナーはこれについて「彼(ハリバートン)がプレーを作り、みんながそれに合わせて動く。それを敵地での『GAME7』でやれたのは驚異的だけど、僕たちにとってはシーズンを通してやってことなんだ」と語り、こう続ける。「ウチには15得点から20得点できる選手が7人も8人もいるけど、みんなお互いのためにプレーして、エゴがない。そんなチームに所属していることを誇りに思うよ」
ニックスは刀折れ矢尽きての敗戦となった。ホームでの『GAME7』で敗れるのは大きな失望だが、それでも最後にジョシュ・ハートがベンチに戻る際には、ニックスファンは立ち上がって静かな拍手でその健闘を称えた。指揮官トム・シボドーも落胆を隠せなかったが、それでも最後にこう語っている。
「選手たちは1年を通してベストを尽くしたのだから、この結果を受け入れよう。残念だが、最後の最後までハッピーなのは1チームだけで、29チームは屈する。このチームは最後まで死に物狂いで戦ったんだ」