「マグシー・ボーグスの記録を超えたい」
セルティックスのファンにとって、アイザイア・トーマスは今も特別な愛情の対象だ。2011年のNBAドラフトでキングスに指名されたトーマスは、4年目にサンズに移り、セルティックスへと移籍した。ルーキーイヤーから2桁得点、3年目には20.3得点を記録しながら、175cmとサイズがないことで確たる評価を受けられなかったが、セルティックスではエースとして存在感を発揮した。
その得点力はもちろん、ファンはトーマスの不屈の闘志、チームへの忠誠心を高く評価し、選手としてだけでなく一人の人間として愛情を注いだ。特に印象的だったのは、2017年のプレーオフで股関節のケガを抱えながらプレーし続けたこと。さらに妹を交通事故で失った翌日に試合に出場したことだ。
しかし、トーマスがセルティックスでプレーしたのは3シーズンだけ。どれだけ結果を残しても「小さいから」というマイナス評価が付いて回る。2017年、チームのために無理をしてケガを悪化させた彼を、セルティックスは非情な判断でキャバリアーズへとトレードした。ファンはショックを受けたし、何よりトーマス自身がショックを受けた。素晴らしい人間性を持つ彼が、この時ばかりは当時のトレードを主導したダニー・エインジ球団社長について「彼とは二度と話をしたくない」とコメントしている。
その後の彼はジャーニーマンとして多くのクラブを渡り歩いたが、そのほとんどで結果を出せなかった。そして今シーズン、2年間のブランクを経てシーズン後半にサンズと契約を結んだものの、出場はレギュラーシーズンの6試合、プレーオフでの1試合のみ。合計23分の出場で8得点3アシストという数字に終わった。
試合に出る機会に恵まれないが、身体のケアは怠っていないため、かつてのケガの影響は完全になくなっており、「どんな時よりもコンディションは良い」と彼は語るが、もう35歳になった彼がチャンスを手に入れるのはそう簡単ではない。
その彼はセルティックスとキャバリアーズが戦ったカンファレンスセミファイナルの途中、ボストンでの試合中継にゲスト出演した。そこで彼は「まだ数年は現役を続けるつもりだ」と語る。「僕はNBAで14年のキャリアを目標にしている。小兵の選手としてマグシー・ボーグスの記録を超えたい。それが一番の目標であり、達成するつもりでいる。きっとチャンスは巡って来るはずだ。それを最大限に生かすことを考えるよ」
年齢的にも能力的にも、トーマスがNBAの主役に返り咲くとは考えられない。しかし、彼はまだ自分のプレーを必要とするクラブがあると信じているし、多くのチームにとってプロフェッショナルを体現する彼が他の選手に良い影響を与えることを否定はしないはずだ。