「正直、自分たちがディフェンスで崩れてしまったと思っています」
Wリーグファイナル、デンソーアイリスは富士通レッドウェーブを相手にシリーズ通算1勝2敗で敗れ、皇后杯との二冠達成を逃した。
レギュラーシーズンを2位で終えたデンソーは、セミファイナルからプレーオフに登場すると、ENEOSサンフラワーズとの初戦を77-58、第2戦を82-66で連勝。これまで何度も大舞台で敗れてきた相手に対し、皇后杯決勝に続いての勝利と勢いに乗ってファイナルに駒を進めた。
だが、ファイナル初戦は富士通の強度の高いプレーの前に受け身に回って57-64で敗れた。第2戦はオフェンスリバウンドでアドバンテージを取り73-62と雪辱を果たしたが、第3戦はディフェンスが崩れたことが響き79-89で敗れ準優勝に終わった。
髙田真希、赤穂ひまわりと並ぶデンソーの中心選手として、攻守でチームを牽引した馬瓜エブリンは、第3戦について敗因をこう振り返る。「富士通さんのペースにやられてしまった。正直、自分たちがディフェンスで崩れてしまったと思っています。初戦、2戦目と富士通さんを60点台に抑えていて、今日も60点台に抑えて、自分たちのオフェンスを遂行すればというところでした。それがディフェンスで負けてしまいました」
馬瓜は「富士通さんは本当に上手です。(町田)瑠唯さんだけでなく、周りの選手もしっかり外にパスを出して3ポイントシュートを決めていきます」と相手を称えつつ、「自分たちが考えていたことができなかったです」と、準備してきたプレーができなかったことに悔いを残した。
馬瓜個人でいうと、初戦で21得点7リバウンド5アシスト2スティール、第2戦は17得点6リバウンド2スティール、第3戦は23得点7リバウンド5アシストと、3試合続けて攻守でハイパフォーマンスを披露した。また、試合中は闘志を全面に押し出すことで、チームを鼓舞するモチベーターとしても大きな役割を果たした。そして何よりも苦しい時間帯にタフショットを決めて、背中でもチームを牽引したことが印象的だった。
「本当に良いシーズンだったので、優勝して終わりたかったです」
チームを鼓舞する役割を担うには、自身がコートでしっかりと結果を残すことが求められる。そこに対して「もちろんプレッシャーはあります」と馬瓜は語ったが、その厳しい環境にあえて自らを置いたのは、チームになんとしてもタイトルをもたらしたい強い思いがあったからだ。
「鼓舞するのは、態度や雰囲気だけでなく、自分がしっかりと得点に絡むことでみんなに少しでも流れをつかんでほしいという思いからです。その意味では、自分のことをちゃんと褒めたいですが、やっぱり勝たせられなかったことが最も辛いです」
「自分がこれだけ言うのだから、しっかりしなければいけないと思っていました。なおかつ(トヨタ自動車時代にリーグ連覇の)経験者として、みんなに伝えられることもあります。そういう面でプレッシャーにもなりましたけど、過去のファイナル2大会、皇后杯、パリ五輪の最終予選と、今まで乗り越えてきたことを思い出しながら、今回のファイナルに臨みました」
このリーダーとしての在り方については、デンソーに加入することでより磨きをかけることができたと馬瓜は言う。「自分がどうやってリーダーシップを取るのか。それと同時に自分のモチベーション、パフォーマンスをどう上げていくのかに関しては、このチームに来て学べたことがとても多いです」
馬瓜は『人生の夏休み』と題して、昨シーズンを充電期間に充てた。そしてデンソーに新たに加入すると、皇后杯優勝、Wリーグのファイナル進出の原動力となった。また、パリ五輪最終予選でも日本の五輪出場に大きく貢献し、ブランクを全く感じさせないシーズンを過ごした。
「今年1年は、とんでもないシーズンになったんじゃないかと思います」と振り返る馬瓜だが、試合後には涙を見せ、取材対応中にも涙がこぼれ、「悔しい、めっちゃ悔しい!!」と何度も語った。そこには1年の休養を経ても全く変わらない勝利への飽くなきこだわり、ハングリー精神がある。「多分、アスリートになっていなくても自分はハングリーさが絶対に元からある性格です。みんなが優勝して終われない、1チームしか優勝できないのは分かっていますけど、やっぱり勝ちたい。今シーズンは本当に良いシーズンだったので、優勝して終わりたかったです」
復帰してからの確かな手応えと、勝って終われなかったことへの不完全燃焼。いろいろな思いを抱える馬瓜だが、今夏にはパリ五輪という大舞台が待っている。「自分はいつも通り少しだけ休んで、オリンピックに向けていろいろと準備をしていきたいです。まだまだバスケット界を賑わせていけたらいいなと思っているので、引き続き頑張ります」
馬瓜が今後も持ち前のポジティブなエネルギーで様々な話題を提供し、バスケ界を賑わせてくれることを多くのファンが楽しみにしている。