写真=Getty Images

むき出しの敵意を浴びながら集中を乱さなかったデュラント

31勝24敗で西地区7位、プレーオフ進出に向けて戦うサンダーが、西の首位を走るウォリアーズをホームのチェサピーク・アリーナに迎えた。

ウォリアーズではなく「ケビン・デュラントを迎えた」と表現するほうが相応しいだろう。今シーズン開幕前にウォリアーズ移籍を決めたデュラントが、初めてオクラホマシティに戻ってくるゲームだったからだ。

『英雄の帰還』ではない。オクラホマシティのファンにとって彼は『裏切者』である。ウォーミングアップからブーイングで出迎えられたデュラントだが、最も盛大だったのは試合前の選手入場だった。場内アナウンスが「オクラホマシティに帰って来たケビン・デュラントを出迎えてください」と煽ると、アリーナは大ブーイングに包まれた。

デュラントはいつものように無表情でコートに入り、そして試合がスタートした。

試合が始まっても敵意は消えない。むしろヒートアップした。観客はデュラントがボールを持てば大ブーイング、シュートを落とせば総立ちで大喜び。ただ、そんなむき出しの敵意を浴びながらも、デュラントはプレーに集中しきっていた。「相手チームのことだけを気にかけていた。コートに立っていない存在など問題ではないと考えていた」とデュラントは試合後に語った。

サンダーファンのキーワードは『カップケーキ』だった。これはかつてのサンダーで使われていたトラッシュトーク(対戦相手を煽る言葉)で、「見た目は派手だが中身はソフト」という意味から「腰抜け」を表す。デュラントの移籍が決まった時にラッセル・ウェストブルックがSNSにカップケーキの写真をアップしたことからファンに広まった。

会場にはカップケーキのTシャツを着る者、カップケーキが描かれたボードを掲げる者、さらにはカップケーキの『ゆるキャラ』や覆面レスラーまで登場。デュラントがフリースローを投じる際のゴール裏では無数のカップケーキが揺れた。

デュラントは『カップケーキ』のチャントについて「影響はなかった。もっとひどい言い方をされたこともあるから」と冷静に受け流した。結局、彼はこの試合でチームハイの34得点を記録。やりづらくなかったはずはないフリースローにしても、7本すべてを成功させている。

サンダーは善戦するもセカンドユニットで明暗が分かれる

立ち上がりにリードを奪ったのはサンダー。ウェストブルックは感情の高まる試合でも冷静にパスをさばき、ビクター・オラディポをオフェンスの牽引役に仕立てる。1点差に詰め寄られたところで自らドライブで切り裂きレイアップを決め、バスケット・カウントのワンスローも決めて22-18とリードを守った。

それでも第1クォーターの終盤にウェストブルックがベンチに下がると、アンドレ・イグダーラとステフィン・カリーの3ポイントシュートを許し逆転され、第2クォーターにはウォリアーズのオフェンスが爆発。ウェストブルックが下がった時点で22-22だったスコアは30-45となっていた。

主力が出ている時にはウォリアーズと互角に渡り合うことができても、2桁のビハインドを背負ってしまうと挽回するのは容易ではない。この後は常に15点から20点の差を追いかける展開となり、ウォリアーズに余裕を与えてしまった。

第3クォーター途中、タイムアウトでベンチに戻る際にウェストブルックとデュラントは激しく罵り合った。ウェストブルックが「やってやるぞ!」と言い、デュラントは「なんだと?」と返す。もっとも、試合中に感情が昂っただけのこと。試合後、デュラントは「あれは試合の一部だよ」と受け流した。

第4クォーター、サンダーのセカンドユニットが今度は踏ん張り、残り6分52秒の時点で110-98と12点差まで詰めるも、ウォリアーズもそれ以上は許さない。

クレイ・トンプソンが3ポイントシュートを狙う際にウェストブルックのファウルを誘い、3本のフリースローをすべて決める。このプレーから10-2のランで125-104と突き放したウォリアーズが、最終スコア130-114で勝利した。

ウェストブルックは47得点を挙げたが、サンダーで2桁得点を挙げたのはオラディポ(20得点)とスティーブン・アダムス(13得点)の3人だけとバランスの悪さは相変わらず。ウェストブルックにしても11ものターンオーバーを記録。これはウォリアーズのターンオーバー総数と同じ。ちなみにカリーは9アシストを記録してターンオーバーは一つもなかった。

ウォリアーズは前日にメンフィスで、そしてオクラホマシティに移動するアウェー連戦で2連勝。この試合では穏やかではない状況でのプレーを強いられるデュラントへの気遣いがあちこちに見られ、チームとしての充実ぶりが目立つ一戦だった。

試合終了のブザーと同時にロッカールームへと引き上げたウェストブルックは試合後、デュラントとの関係性についてこう語っている。「もう終わったこと。これだけ関心を持たれることが理解できない。彼は彼のチームで、俺は俺のチームでやっている。好きにやればいい。俺は自分のことをやるまでだ」