「結果を残して恩返ししたい思いが一番にあったので、ファイナルに行けなくて悔しい」
Wリーグのシャンソン化粧品シャンソンVマジックは、2戦先勝方式となるプレーオフセミファイナルで富士通レッドウェーブと対戦。レギュラーシーズン1位の相手に対し、初戦は序盤からリードを奪われ59-73と完敗。第2戦でも第1クォーターで6-23と大きく出遅れたが、ここから見事な粘り強さで徐々に追い上げると、残り5分半に追いつき、最後までもつれた激闘を71-70で制す大逆転勝利を挙げた。しかし、第3戦でも再び第1クォーターで14-34と劣勢を強いられると、2️試合続けてカムバックできる余力はなく72-93で敗れた。
これでシャンソン化粧品は3シーズン連続でのセミファイナル敗退と、またしてもファイナル進出を逃した。それでも、過去2回はトヨタ自動車アンテロープスに連敗し、しかも4試合すべてで2桁点差での敗北と差を見せつけられたが、今シーズンのクォーターファイナルではトヨタ自動車に最大18点のビハインドをつけられながらも、残り1分からの連続3ポイントシュートで88-82と逆転勝ちを収めた。過去2年間、ポストシーズンでトヨタ自動車に敗れた雪辱を果たし、さらにセミファイナルで1勝と、確かな進歩を見せた。
このチームとしての成長は、個々の進化の積み重ねによって生まれたものだ。ガードの小池遥は、持ち前の得点力に加え、クラッチショットを決める抜群の勝負強さを発揮。昨シーズンのアーリーエントリーを経て、初めて開幕からプレーすることになったセンターのイゾジェ・ウチェは、恵まれた身体能力と機動力でゴール下を支配した。
2大エースに加え、プレーオフに入ってステップアップした選手として取り上げたいのがガードの知名祐里だ。2020-21シーズンに沖縄の西原高から加入した知名は1年目、2年目とほとんど出場機会がなかった。しかし、テンポの良いパスさばきを生かしたゲームメークによって3年目の昨シーズンから徐々にプレータイムを得ると、今シーズンはローテーション入りを果たし、プレーオフの大舞台でも安定した出場機会を得た。そしてセミファイナル2戦目では無得点ながらも6アシストを記録し、第4クォーターはフル出場と逆転勝利に大きく貢献。また、第3戦も6得点3リバウンド2アシストに加え、4スティールと爪痕を残した。
シーズン最後の試合となるセミファイナル第3戦の終了後、知名は「やっぱり悔しいです」と語り、何よりも自分たちを支えてくれている人たちのために勝ちたかったと続けた。「チームメートの声掛けだけでなく、ファンの皆さんの声はすごく届いていました。プレーオフでも一つずつ勝ち上がっていくたび、いろいろな方に『頑張ってね』など声をかけていただき、自分たちは本当に支えられてバスケットができていると感じられました。今まで応援してくださった方々に結果を残して恩返しした思いが一番にあったので、ファイナルに行けなくて悔しいです」
「試合に出ているだけで満足することはないです」
自身のプレーに関しては「コートに立っている間は、もう足が壊れてでも全力でプレーしようと思っていました」と強い決意を持って走り続けた。「最後まで全力を尽くしてやれたことは良かったですが、やはり要所で決め切ることができなかった。そういった弱さは、まだまだ成長していかなければいけない部分だとすごく感じました。1番と2番で起用してもらっていて、1番ではゲームコントロールとみんなを引っ張る力を身につけないといけない。2番の時はアシストだけでなく、得点を取れるようになっていきたいです」
チーム4年目を迎えた今シーズンの知名は、キャリアベストと言える内容だった。しかし、彼女は「試合に出ているだけで満足することはないです」と手応えよりも、悔しさの方が大きい。「最初に比べたらヘッドコーチからの信頼を勝ち取ってプレータイムは長くなりました。ただ、勝負の世界なので、自分が出ている時間帯でチームが勝っていなければ意味はないと思っています。試合に出ているからこその責任があり、自分が出ているからこそチームは勝つことができる。それくらいの選手になっていかなければいけないと思っています」
非凡なパス能力を持ち、味方のシュートチャンスを作りだす知名だが、自らシュートを打つ積極性や決定力が欠けていると反省する。「プレーオフで打てるチャンスはいくつかありましたが、なかなかシュートに行けなくてベンチで見ている先輩から『もっとシュートを打ちなよ』と言われていました。今日は自分でも打とうとコートに入りましたが、打つなら決め切らないといけない。得点力はまだまだ欠けているので、そこも向上させていきたいです」
味方を生かすアシストだけでなく、得点力を備えることができれば知名が相手に与える脅威は段違いに増す。来シーズン、知名がどこまでアグレッシブに仕掛けていくのか楽しみだ。