竹内譲次

文=鈴木健一郎 写真=FIBA.com

「ガード陣がこぼれ球を拾ってくれたから走れた」

昨日行われたイラン戦に97-89で勝利。バスケットボール日本代表は、自分たちの一つ上の順位にいたイランを破ることで、ワールドカップ出場に大きく前進した。

イランはフィジカルもスキルもあり、戦術的にも引き出しの多い『アジアの強豪』だった。出だしはシュートが確率良く決まり、打ち合いで上回ってリードを奪ったが、リバウンドでは圧倒的に相手が上。10点前後のリードはあっても、シュートが落ちるようになったら一気に流れを持って行かれる怖さがあった。

そんな試合中盤、日本が優位をがっちりと確保するために大きな仕事をしたのが竹内譲次だ。前半はリバウンドの劣勢を挽回しようと早々にファウルトラブルになり、太田敦也と交代。それでも後半から、譲次は飛ばす。「前半は自分がファウルをしてしまってほとんど試合に出られず、後半どうにか巻き返してやりたい気持ちは大きかった」

強豪イランにも弱点はある。インサイド陣にスピードがなく、走る展開に持ち込めないことだ。後半の譲次はそこを突いた。攻守の切り替えで譲次が走り始めれば、相手は簡単に置いていかれてしまう。日本のシュートの当たりが鈍り始めたまさにそのタイミングで、譲次は立て続けにファストブレイクに走り、3本の速攻を決めた。苦しい中での大仕事だったが、「(田中)大貴、比江島(慎)、(馬場)雄大が相手のエースにずっとついてくれていました。前半は結構シュートが入っていましたけど、後半に落ち始めたのは彼らが一生懸命に守ってくれたから。ニック(ファジーカス)だったり富樫(勇樹)だったり(篠山)竜青だったりガード陣がしっかりこぼれ球を拾ってくれたから走れました。そこは自分が疲れていても、彼らももっとディフェンスで疲れていたと思うので。自分がしっかり走らないとと思っていました」

「前回のWindowでもファウルトラブルになって、正直『またか』とも思いましたが、後半しっかり仕事ができてホッとしています」と語る譲次だが、ファウルをするのも仕事の一つだ。「コーチからはディフェンスを一番に求められていますし。僕の代わりはたくさんいます。僕がファウルする方が、ニックがファウルするより良いです。そこはディフェンスの激しさというのは、特にそういう部分で僕は抜いてはいけない」

竹内譲次

田中大貴とのコンビネーションは「阿吽の呼吸がある」

ファウルトラブルで出遅れはしたが、終わってみれば24分の出場で17得点を積み上げた。特に田中大貴とのピック&ロールを主体としたコンビネーションは抜群。3ポイントシュートも3本中2本成功と効果的に決まった。「打ってやろうという気持ちではなく、流れの中で打てたというか、すごく良いタイミングでした。それに大貴が良いパスをくれました。そういうアルバルクでやっていることが、この代表でも出せたのかなと思います。アルバルクで何百回と練習しているプレーだったので、そこは阿吽の呼吸みたいなものがあります」

この日の予選突破はならなかったが、24日のカタール戦に勝てば自力での突破が決まる。『ほぼ決まり』の状況は作ったが、譲次は「まだ1試合あるので」と冷静だ。

「本当に今日はオフェンスで勝った試合でしたが、僕らが勝つのはディフェンスからだとコーチからいつも言われていて。そういう意味では今日はちょっと反省かなと思っています。ディフェンスで勝てなかったと。だからまずは次の試合ですね」

「しっかりディフェンスリバウンドを取れればもっと良い試合ができたし、今日はやはり失点が多かったので、そこは反省です。直前のレバノンとの練習試合でリバウンドのイメージは持っていたんですけど、やられてしまったという点ではもっともっと意識を強めなきゃいけない。あとチームの戦術としてももっと考えていかなければならないのかもしれないですし」

それでも「全員がこの状況に自信を持てていますし、それをコートの上で表現できていると思います」と、ラスト1試合に向けて死角はない。勝ってワールドカップ出場を、そして自国開催のオリンピックへの出場をつかみ取るために。譲次はコートを駆ける。