ラジョン・ロンド

「僕のキャリアはもう終わった。もうやれない」

ラジョン・ロンドがポッドキャスト番組『All the Smoke』に出演し、現役引退を正式に発表した。ホスト役のマット・バーンズに「NBAで君を見ることはもうないのか?」と問われたロンドは「もちろん」と答え、「僕のキャリアはもう終わった。もうやれない。今は子供たちと一緒に過ごしたいんだ」と語っている。

2006年にセルティックスでNBAデビューを果たしたロンドは、セルティックスで8シーズン半プレー。キャリア2年目の2007-08シーズンにポール・ピアース、レイ・アレン、ケビン・ガーネットの『ビッグ3』とともに初優勝を経験し、リーグ屈指のポイントガードへと成長してチームを支えた。2012年に右膝の前十字靭帯断裂の重傷を負い、2014-15シーズン途中で初めての移籍を経験することになった。

ロンドはコート内で起こるすべてをコントロールする異能のポイントガードだったが、ヘッドコーチからの完全な理解を受け、チームを託されないと機能しない。膝の大ケガの後は環境にも恵まれず苦労が続いたが、2019-20シーズンのレイカーズで自身2度目の優勝を果たす。新型コロナウイルスのパンデミックにより『バブル』で行われたこのシーズンのプレーオフこそ、自らのスキルとバスケIQを用いて相手を研究し尽くす中で4勝を取りに行くロンドの才能が最大限に発揮された場だと言える。

ベンチから16試合に出場し、平均24.7分のプレータイムで8.9得点、6.6アシスト、1.4スティールを記録。ロンドが積み上げた105アシストという数字は、マヌ・ジノビリの95を抜いてプレーオフでのベンチプレーヤーの最多記録となった。レブロン・ジェームズ、アンソニー・デイビスのデュオが軸ではあったが、ロンドもまたレイカーズの優勝に欠かせない戦力だった。

しかし、『プレーオフ・ロンド』の才能が発揮されたのはそれが最後だった。翌2020-21シーズンはホークスに加入するが、彼を信頼して呼び寄せたロイド・ピアースの早期解任により彼も居場所を失った。クリッパーズに移るも噛み合わず、2021-22シーズンにはレイカーズに復帰するも、ラッセル・ウェストブルックがいたことで彼の居場所はなかった。シーズン途中にキャバリアーズに移籍するもプレーイン・トーナメントを勝ち抜けず。この試合が彼のNBAキャリアの最後となっている。

「素晴らしい時間だったよ」と、ロンドは16シーズンのNBAでの冒険を振り返る。「試合をやっている時、それが当たり前だと感じたことは一度もなかった。すべての瞬間を愛してきたし、そんな年月を分かち合った兄弟たちとの絆を本当に大切に思っている」

「僕にとってプレーすることは必ずしもお金のためじゃなかった。それは、この競技に出会った瞬間からずっとそうなんだ。NBAで学んだ多くのことが、今の僕を形作っている。僕にとってNBAは夢ではなく目標だった。だから集中し続け、規律を保つことができた。大学時代はほとんど遊ばなかったけど、人生の望む場所にたどり着くための犠牲には、その価値があったと思う。浮き沈みの激しいキャリアの中で、自分でも多くのことを成し遂げたと感じている。幸運なことに、僕は支えてくれる人たちに恵まれた」

最後にプレーしてから2年が経過した。今のロンドは、NBAドラフトを受けたことで中退したケンタッキー大に戻り、大学生として勉強をしている。それとともに子供たちにバスケを教えているそうだ。

「最近は日々、良き人間であろうとしているよ」と、ロンドは穏やかな表情で語る。NBAのコート上で見せた隙のない顔つきはもう見られないが、『プレーオフ・ロンド』はファンの記憶に永遠に残り続ける。