ヤニス・アデトクンボ

写真=Getty Images

「彼は、恩返しをしたいと考えているんだ」

2019年のオールスターファン投票で、東カンファレンス最多となる437万5747票を得たバックスのヤニス・アデトクンボは、キャリア6年目にしてNBAの顔に成長した。インターナショナルプレーヤーの代表格としてもリーグを背負って立つ彼は、慈善活動にも力を入れている。

今回のオールスターゲームでも、各チームのキャプテンが選んだ開催地の慈善団体に寄付をすることができ、チーム・ヤニスを率いたアデトクンボは、シャーロットのフードバンク団体『Second Harvest Food Bank』を選択。惜しくも試合には敗れたが、NBAから同団体に15万ドル(約1660万円)が送られた。

今では年俸だけで2500万ドル(約28億円)を超える大金を掴んだアデトクンボだが、幼い頃は食べるものに困る生活を送った。ナイジェリアからギリシャに移住した両親が仕事に就くのは簡単なことではなく、ヤニスと兄のタナシスも行商などを行い、家族の生活を支えた。そんな生活を一変させたものこそ、バスケットボールだった。

弱冠17歳でギリシャ2部のチームでプロデビューを飾ったヤニスは、NBAのスカウト陣から注目され、2013年のドラフトにエントリーを決意。そして全体15位でバックスから指名され、現在に至っている。彼はNBA選手として大成功を収めると、自分たちのように貧しい環境に生まれた子供たちをサポートする活動に力を入れ始めた。代理人のアレックス・サラチスは、『Front Office Sports』とのインタビューで、アデトクンボが慈善活動に熱心な理由を、こう語った。

「ヤニスにとっての中心は、バスケットボールと家族。この2つのことを中心に、彼の世界は回っている。彼は、コート内でのことが上手くいっていなければ、オフコートでのことも上手くいかないことを理解している。その部分はリーグで成長した今も変わらないし、最近では、財団を通じての社会貢献活動にも力を入れている。彼も幼い頃に慈善団体のプログラム、特に食べ物を寄付する地元のフードバンクのおかげで食べられた。彼は、恩返しをしたいと考えているんだ」

そして、サラチスは、アデトクンボがジャンルの枠を超えられるアスリートになれると信じているという。

「アメリカでは、ファンも彼の人柄を理解してくれている。そういう機会に恵まれた。ギリシャからアメリカに渡った時のエピソードも60 Minutes(ドキュメンタリー番組)で放送されたし、愉快で、おどけた性格もCMや広告で見せられている。バスケットボール選手としてだけでなく、一人の人間としてのヤニスもファンに知ってもらいたい」

「ヤニスは、慈善活動に情熱を持って取り組んでいる。プロのアスリートになっても、実際に地元地域で何がやれるかを理解するのに数年はかかる。どういう形での行動が、最も大きなインパクトを与えられるかが分かるまでには、時間がかかるものなんだ。ヤニスは、アフリカでの活動、そして世界規模での活動にも力を注ごうとしている。世界中に彼の人柄を知ってもらいたいので、戦略的なコンテンツ開発が、今後数年の鍵になる」

どれだけビッグな存在になろうとも、アデトクンボの性格は、彼が17歳の時に出会ってから変わらないと、サラチスは言う。

「彼はいつだって、周りの人に親切に対応するし、敬意を表する。どれだけのスーパースターになっても、変わらない。いつも目を見て、敬意を払ってくれる。彼を見ていると、自分もこうあるべきと、いつも思わされてしまう」

ギリシャから大応援団がアメリカまで応援に駆けつければ、どれだけ疲れていてもファンの前に立ち、感謝の気持ちを言葉で伝えている。名実ともにバックス、リーグを代表する選手になったアデトクンボは、これからも変わらず、彼にできる活動を積極的に行っていくに違いない。