渡嘉敷来夢

「チーム全員で試合前から集中することができた成果が出ました」

3月31日、Wリーグのプレーオフクォーターファイナルが行われ、連覇を目指すENEOSサンフワラーズがトヨタ紡織サンシャインラビッツと対戦。高い集中力と強度を保つことで、最後までディフェンスが崩れなかったENEOSが71-58で勝利し、デンソーアイリスが待つセミファイナルへと駒を進めた。

試合は互角の立ち上がりとなったが、ENEOSは第1クォーター終盤から第2クォーター序盤にかけて、本日11得点を挙げたルーキー鈴置彩夏の活躍などでリードを奪う。そして渡嘉敷来夢、長岡萌映子、岡本彩也花など、大舞台の経験豊富なベテランたちが堅実なプレーで牽引し、37-26と先行してハーフタイムを迎える。

第3クォーターに入ると、トヨタ紡織も反撃を開始。都野七海の積極的なアタックに加え、河村美幸の3ポイントシュートと、内と外からバランスよく加点。守備では渡嘉敷に対し、時にトリプルチームを仕掛けるなど徹底的にプレッシャーを仕掛けたことで流れを引き寄せ、一時は点差を1桁に縮めることに成功する。

だが、ENEOSはここで守備のギアをさらに上げることで、トヨタ紡織の勢いを食い止める。さらに長岡がゴール下に、3ポイントシュートと連続得点を決めることで56-39と突き放した。第4クォーターに入っても、トヨタ紡織の3ポイントシュートが22本中3本成功のみと沈黙したこともあり、余裕を持って逃げ切った。

19得点に6リバウンド3アシストとさすがのプレーを見せた渡嘉敷は「昨シーズンも経験しましたが、(クォーターファイナルは)一発勝負で緊張感がすごくありました。その中でもチーム全員で試合前から集中することができた成果が出ました」と勝因を語る。

また、自身のパフォーマンスについては、6本中3本成功に終わったフリースローについての反省が目立った。「個人的にはフリースローがあまり良くなく、シュートが強かったり、うまくアジャストし切れなかったです。リーグ戦では1点差の負けもあったので、この(失敗した)3本が重要になってくるのは分かっています。そこを調整しつつ、あとはもっとボールを持った時にアグレッシブに攻めて勝利に導けたらと思います」

渡嘉敷来夢

セミファイナルのデンソー戦へ「守りに入るのではなくて攻め続けます」

ENEOSは今シーズンからティム・ルイス新ヘッドコーチが就任した。2013-14年に日立サンロッカーズのヘッドコーチ、2020年から23年にかけてNBAティンバーウルブズのアシスタントコーチなどを務めてきた指揮官は、これまでのENEOSには見られなかった積極的なプレータイムシェアを導入し、プレーオフの大舞台でもこのスタイルを変えなかった。

昨年のプレーオフでは渡嘉敷、長岡はフル稼働だったのが、今日は渡嘉敷が30分26秒、長岡も31分13秒とプレータイムを抑えている。そして、日本代表の星杏璃に藤本愛瑚と、主力の2人が故障で欠場した中でも、9選手が15分以上に渡ってコートに立った

渡嘉敷は「若い選手たちは勢いがありますし、出ている間は自分のやるべきことにフォーカスできるのは良いなと考えています。(大一番では)何年も40分間ずっと出ていたので、出ている時間に踏ん張れるのはすごく良いと思います」とタイムシェアの恩恵を語る。

そして、新ヘッドコーチの新しいスタイルへの適応に苦戦した部分もあるが、今は確実に良くなっていると見ている。「ティムさんのバスケは難しくて、ディフェンスもいろいろな種類があります。だからこそ、交代で出てきた直後にミスをすることがあったりするので、出ている5人で毎回、確認するようにしています。リーグ戦に比べると、今日はミスが少なかったです」

この完成度の向上には、ルイスヘッドコーチも自信を見せる。「このチームは毎週成長していて、正しい時期にピークを迎えています。互いを理解し、チームとして一つになってプレーできている。(シーズン序盤は完成度がまだまだで)スロースタートだったのが、今はしっかりと噛み合って強みを出せています」

来週のセミファイナルでENEOSはデンソーと対戦する。皇后杯ファイナルで56-89と痛恨の大敗を喫した後、レギュラーシーズンでは3月9日、10日に対戦し、初戦は81-69で勝利するも、2試合目は80-81で競り負けた。

「今は優勝というより、まずはデンソーに勝つこと。レギュラーシーズンは1勝1敗ですけど2連勝できたと思うので、しっかりと課題を修正して今の勢いで勝ちに行きたいです。守りに入るのではなくて攻め続けます」

このように意気込みを語った渡嘉敷だが、このプレーオフには「後がない」という危機感を抱えている。そこにはタイトルと共にキャリアを歩んでいた渡嘉敷だからこその譲れない思いがある。「ここまで14年間ENEOSでプレーしてきて、毎年何かしらタイトルを取っています。それが今シーズンは皇后杯を勝てていないので、(残るタイトルは)Wリーグ優勝だけで後がない。去年より勝ちたい気持ちが強く、絶対に今回も勝ちたいです」

渡嘉敷の飽くなきタイトルへの渇望はチームにも伝播していく。だからこそ、ENEOSの選手たちはここ一番でギアを上げることができ、今シーズンも勝利に飢えている。来週末のセミファイナルで、デンソーへのリベンジに燃える渡嘉敷がどんなパフォーマンスでチームをけん引していくか注目が集まる。