ビクター・ウェンバニャマ

オールスターブレイク以降は絶好調「興味はある」

レギュラーシーズン終了まであと1か月、どのチームも15試合前後を残す段階で、DPOY(ディフェンシブ・プレーヤー・オブ・ザ・イヤー)争いが過熱している。

開幕から数週間前までは、ルディ・ゴベアの評価が他を圧倒していた。『他』というのはスパーズのビクター・ウェンバニャマ、キャバリアーズのジャレット・アレン、ヒートのバム・アデバヨ、レイカーズのアンソニー・デイビスといった選手たちだ。

ゴベアは2018年、2019年、2021年と3度のDPOY受賞経験を持ち、ティンバーウルブズ加入2年目の今シーズンは周囲との連携も出来上がり、リムプロテクターとしての活躍でチームを西カンファレンスの首位争いへと押し上げていた。ただ、ここに来て評価は急落している。彼とインサイドでコンビを組んだカール・アンソニー・タウンズが戦線離脱し、ディフェンスの連携が崩れたことでゴベア個人のパフォーマンスも落ちることに。チームも3月に入ってから3勝4敗と失速し、首位の座をナゲッツとサンダーに明け渡した。

ゴベアと入れ替わるように評価を急上昇させているのがウェンバニャマだ。ここまで3.4ブロックはリーグ1位の数字で、ゴベアの2.1を大きく上回る。しかもオールスターブレイク以降は4.6ブロックと絶好調。多少出遅れたり体勢を崩されてもコンテストに行くサイズとウイングスパンがあり、NBAでの試合数をこなすにつれてその武器を生かす術を会得しつつある。

現地3月3日にペイサーズは彼に6ブロックを食らい、TJ・マッコネルは「ウェンバニャマが待ち構えているのを見ると、リムに行くのを躊躇してしまう」と正直な心境を明かした。スパーズのトレ・ジョーンズは、多くの対戦相手が『躊躇』するのを見てきたと語る。「何の問題もなく決められるレイアップ、イージーシュートの場面でも、相手は疑問を持たざるを得ない。そして踏ん切りがつかず逃げのドリブルをしてしまう。それはこのリーグのトップ選手でも例外ではない。彼にはそれだけのディフェンス力があり、今後さらに伸びていくと思うと恐ろしいよね」

もう一つ恐ろしいのは、ゴベアはタウンズという『相棒』を失って評価を落としているのに対し、ウェンバニャマはリーグの底辺で戦うスパーズで孤軍奮闘しながら、それだけのパフォーマンスを見せていることだ。トレ・ジョーンズは言う。「彼がDPOYを争う上で一番不利なのは僕らの成績だ」

ただ、ウェンバニャマ本人はチームの低迷は自分の責任でもあると感じ、「僕はスパーズの一員であり、この旅の一部なんだ。このチームを成長させ、これまで以上のものにすることが僕の目標だ」と語る。

今までルーキーがDPOYを受賞した例はないが、すでにルーキー・オブ・ザ・イヤー受賞をほぼ確実なものにしているウェンバニャマには、その可能性がある。彼自身、DPOYの可能性を問われて「興味はあるけど、今シーズンのDPOYはルディだろうね。彼はそれに値すると思う」と答え、こう続けた。「でも次からは僕が勝ち取るよ」