2年ぶりの『おいさー』を披露した田口「ホームで勝つことで秋田県民を元気にできます」

秋田ノーザンハピネッツはシーホース三河との第23節で同一カード連勝を果たし、バイウィークを迎えた。

第1戦は19-3とスタートダッシュに成功したものの、三河のゾーンディフェンスに苦しめられ、すぐにその貯金を吐き出した。それでも後半になるとゾーンを攻略し、内外バランスの良いオフェンスを展開して97-90のハイスコアリングゲームを制した。第2戦は初戦と打って変わり、ロースコアの守り合いとなったが、持ち味である3ポイントシュートを高確率で沈め、信条とするタフなディフェンスで72-64で勝利した。

第1戦でビッグショットを連発した田口成浩は6本中4本の3ポイントシュートを成功させ、この試合のヒーローとなった。「前が空いているならシュートを狙おうと強く思いながらプレーしました。とりあえず、原点に戻ろうと。まず、自分のやるべきことをやろうというマインドで今日は入りました」

昨シーズンの田口は、Bリーグのレギュラーシーズンでは過去最高となる平均12.3得点を挙げ、持ち味の3ポイントシュートは42.9%と高い成功率を記録した。しかし、12月下旬に左膝前十字靭帯断裂、大腿骨骨挫傷の重傷を負い、その後のシーズンを全休。ケガへの恐怖心はほぼ拭えたというが、復帰した今シーズンは好不調の波が激しかった。そのため、ホームで勝利の立役者となる活躍を見せたのは久しぶりで、約2年ぶりの『おいさー』披露となった。

「昨シーズンに限っては活躍しても勝てないことが多く、もどかしい気持ちはありました。あれだけ応援してくださる中で勝ち切れないというのは、本当に申し訳ない気持ちでした。やってって言われたらアウェーでもやりますけど、ホームで勝たないとインタビューがないので(おいさーは)できないです(笑)。ホームで勝利し、みんなが『おいさー』って言ってくれることはやっぱり気持ちいいです。ホームで勝つことで秋田県民を元気にできます」

前田顕蔵ヘッドコーチもMVPを獲得した田口の活躍を喜んだ。「ちょっと泣きそうなりますね。彼が苦しんだことをみんな知っていますし、彼が活躍すれば勢いに乗ります。こうやってMVPの舞台に立って、元気な姿をもう1回見れたのは彼の頑張りだと思います。チームも彼を信じてパスを出しているので本当にうれしかったです」

そして、ここまで苦労してきたゾーンディフェンスを攻略し、全員バスケで勝てたことも誇った。「ゾーンに対してしっかり練習ができていなかったり、準備はしているけどプレーを忘れてしまうなど、セカンドユニットのところで困惑したのはありました。最後に田口選手と古川(孝敏)選手を出したのは、なるべくコートを広く取りながら相手の隙を突こうと決めていたからです。『効かないですよ!ゾーンは!』って言ってみたいですけどね(笑)。こういうことが学びになって、同じミスを繰り返さないのが強いチームだと思います。今日のゲームは非常に学びになりました」

「全員があきらめずに戦っているからこそこういう状況になった」

秋田はこの連勝で21勝18敗(東地区4位)とし、ワイルドカード争いで2位の島根と1ゲーム差につけ、終盤戦へ突入する。新戦力の負傷離脱や外国籍選手の入れ替えなど、ここまでの秋田は決して順風満帆ではなかった。11月を終えた時点で3勝11敗だったことを考えれば、よく巻き返したと言える。前田ヘッドコーチもこのように現在のチームを評価した。

「以前は降格が見えるラインにいて、今CSが見えるラインにいることはよく盛り返したと思います。全員があきらめずに戦っているからこそこういう状況になったので、本当にあきらめないことは大事だと思います。1ゲーム取ることでガラッと変わるので、良いチャレンジができているなと思います」

選手のあきらめない姿勢を称賛するが、それは柔軟かつ迅速な対応をしてくれるフロントの行動力、そしてファンの声援があってこそと前田ヘッドコーチは強調する。

「僕の立場からすると、現場とフロントが一体になって、ブースターの人たちがそれを後押ししてくれて、本当に一緒になって戦わないと、この成績には持ってこれなかったなと思っています。外国籍選手を変えた判断もそうですし、(スティーブ)ザック選手がケガをして、すぐに(アンジェロ)チョル選手が入ってきたことも、フロントの理解と本当に勝ちたいという気持ち。同じ熱量でやってくれているので、そこは本当に助かっています。よりチームの色を出そうというところでフロントとブースターさんが、選手たちはコート上で頑張ってくれているので、それが良い結果に繋がっているのかなと」

田口も「チームが一つになりつつあるからこそ、この結果になったと思う」と同調し、さらに「ここ数年で1番、我慢ができているシーズン」と続けた。そして、バイウィーク明けのさらなる上昇に向け、このように意気込んだ。

「新しいプレーも増えてくると思うので、何故これをやるのかということをチームとして理解しながら練習する。あとはボックスアウトの徹底だったり、本当に細かいところの精度が今後の鍵になると思います。過去はもう戻らないので、ケガ人が戻ってきた時に『やっぱり秋田は強かったな』って言ってもらえるように、準備していきたいです」

選手、フロント、ブースターが一丸となり、CS進出が手に届くところまで浮上した秋田。逆境を乗り越えたチームは最後まで頂点を目指す。