「ネクスト・マン・アップの精神で戦い続ける」
ホークスは現地2月25日のマジック戦で、エースのトレイ・ヤングを欠きながらも109-92と快勝し、オールスター休暇を挟んでの連敗を3で止めた。だが、試合後のチームの雰囲気は決して良くなかった。前の試合で左手小指の靭帯を痛めたトレイは手術が必要で、少なくとも4週間の戦線離脱が決まり、試合後の会見では勝利よりもその質問が多かったからだ。
デジャンテ・マレーはトレイの穴を埋め、25得点9リバウンド11アシスト2スティールと攻守にフル回転。それでも会見で最初に聞かれたのはトレイのことだった。「NBAで言い訳は許されない。誰が抜けてもネクスト・マン・アップの精神で戦い続けるだけだ。彼が抜けることでチャンスを得る選手もいる。自分がなぜNBAにいるのかをここで示すんだ。そうやって全員で頑張りながら、彼の復帰を待つよ」とマレーは言う。
ジェイレン・ジョンソンは、トレイの分まで活躍が期待される若手の一人だ。NBA3年目の今シーズンに初めて先発に定着して15.7得点と、トレイとはポジションこそ違えオフェンスで存在感を示している。「プレーメーカーのトレイの不在は大きな痛手だ。だからこそ僕らは今まで以上にボールを動かし、助け合ってチャンスを作らなきゃいけない」。そう語るジョンソンは7アシストを記録してターンオーバーなしと、トレイのプレーメークの一部を見事に肩代わりして見せた。「無理に何かを作り出そうとせず、映像で見た相手のプレーをちゃんとイメージして、ギリギリまで見極めてプレーを選択できたことが結果に繋がったと思う」と彼は言う。マレーとジョンソンを中心にホークスはボールがよく動き、チーム合計で31アシストを記録している。
また、ディフェンスでは高さでもインテンシティでも弱点になり得るトレイの不在で、タフに戦えるようになった。ディフェンスで今シーズンに躍進しているマジックを相手に、ロースコアのディフェンス勝負で互角に渡り合い、第3クォーター終盤からの18-1のランで突き放すまで集中を切らさなかった。
ジョンソンは「みんなディフェンスによく集中していた。ベンチから出た選手たちがさらに強度を高めてくれた」と振り返る。そしてマレーは18-1のランについて「特別なことはしていない。みんなで力を合わせ、正しいプレーを心掛けた。良いディフェンスをして、良いオフェンスへと繋げた」と語った。
トレイのポジションであるポイントガードの先発はマレーが引き継ぎ、2番手を務めたのは1巡目15位指名のルーキー、コービー・バフキンだった。まだNBAで出場6試合目だが、11分のプレーで2得点3アシスト1スティールを記録し、39分出場のマレーに貴重な休憩時間を作り出し、その時間帯を得失点差プラスで乗り切った。バフキンは経験を積むためにGリーグの試合に回っていたが、トレイの離脱が決まって急遽ホークスに呼び戻された。チームと合流してからずっとマジックの映像を見続けていたという。指揮官クイン・スナイダーは「ただコートに出て思いきりやっただけの結果じゃない。彼のバスケに取り組む姿勢、規律は、彼を成功に導いてくれるだろう」と語る。
ひとまずトレイ不在の最初の試合には勝てた。それでも、現在東カンファレンス10位のホークスがプレーオフ戦線に踏み留まれるかどうかは際どいところだ。トレイの復帰が4週間後の再検査からさらにズレ込むことになれば、プレーオフに間に合わなくなる。その場合はプレーオフをあきらめてロッタリーに回るべきとの判断が下されるかもしれない。
最終的に何位でレギュラーシーズンを終えるにせよ、トレイがいつどんなコンディションで戻って来るにせよ、少なくとも今のところホークスはファイティングポーズを崩していない。マレーが言うように、全員で戦いながらエースの復帰を待つことになる。今シーズンここまでのホークスは、トレイがいても良い戦いができていたとは言い難い。トレイの長期離脱は痛いが、最終的にホークスが成功を収めるにはこのピンチでチームが大きく変わることが必要となる。