主力の負傷離脱を乗り越え、地区優勝マジック13を点灯
大野篤史ヘッドコーチ体制になり2シーズン目の三遠ネオフェニックスは、34勝5敗と中地区を独走する形で地区優勝マジック13を点灯させ、バイウィークに突入にした。
この地区優勝マジックは他地区を見てもまだ点灯している地区はなく、三遠の好調さを象徴している。特筆すべきはクラブの記録を塗り替えた連勝記録だろう。東地区首位のアルバルク東京との第23節でストップしたものの、連勝を『16』まで伸ばし、クラブ記録を樹立した。どのスポーツでも連勝を続けることの難しさは重々理解されており、戦力の偏ったリーグ構成でもないBリーグでこの記録は目を見張るものがある。
大野篤史ヘッドコーチは「過信をしないように」と前置きをしつつも、「16連勝ですか。強くてもなかなかできないレコードだと思いますし、それはしっかり自分たちの自信にしてもいいと思います」と、一定の評価を下した。
この連勝記録を樹立できた理由について、大野ヘッドコーチは「リレントレス(Relentless)」という言葉を用いて語ってくれた。「リレントレス」は直訳すると「冷酷な」、「情け容赦のない」という、いささかチームスポーツにとっては受け入れ難い言葉にも聞き受けられる。しかし、大野ヘッドコーチは『Relentless』を用いている本質として、2つ目の翻訳に近い『絶え間なく』という意味で使っていることを明らかにし、「良い時も悪い時も絶え間なく努力をして支えていこう。というテーマをチームに掲げ浸透させていっている」と説明した。
大野ヘッドコーチが提唱するシステム、ゲームプランを体現できるかはもちろん個々によって差があり、選手全員が行動に移せるようにボトムアップを行っていくことは強固な組織を作る上で必須条件である。バスケットボールは交代が自由にできる競技であることから選手全員が共通認識を持っていないといけない。そのためにも『絶え間ない』コミュニケーションは必要不可欠なスキルの一つなのである。
また、大野ヘッドコーチは『Relentless effort』という言葉も用いているということを明かしてくれた。つまりは『絶え間ない努力』だ。昨シーズンは『+1 effort』という言葉を用いて選手だけでなく、新しく集まった新チームに関わるすべてのスタッフにも、今までよりも1段階上の努力を心掛けるように求めていたという。
A東京との頂上決戦を終え「CSに向けて良いトレーニングになった」
『絶え間ない努力』を求めている今シーズンの進化として、大野ヘッドコーチも「二人には言い続けてきた成果が出てきている」と言うように、サーディ・ラベナと金丸晃輔の存在を挙げた。ラベナは昨シーズンよりも速く、強い気持ちでリングにアタックし、三遠のお家芸になっているファーストブレイクの筆頭としてオフェンスを引っ張る存在へと成長した。また、オフェンスマシーンと称されていた金丸はベテランの域に達しているが、得意ではないと言えるディフェンスに対して最も高い意識で臨む姿を見せており、進化を止めることがない。このような『絶え間ない努力』がこの連勝を樹立した礎になっていることは間違いない。
実にここまで多くのテコ入れをしてきたように見えるが、大野ヘッドコーチの信念、求めるものは千葉ジェッツ時代から何も変わっていない。そこには過去の自分が選手としてある一定のレベルで満足し成長を止めてしまったことの後悔がある。だからこそ、今、プロバスケットボールプレーヤーとして限られた時間を過ごす選手たちには後悔する選手生活を送って欲しくはなく、そのためにも成長をし続けること、コミュニケーションを取り自分の思っていることを伝える重要性を提唱し続けている。クラブが変わっても確固たる信念が根底にあり続け、所属している選手に合った言葉を用いて投げかけている。
単発で言うことは簡単だ。しかし、行動に移すこと、それを継続していくことは簡単ではない。確固たる信念を持って伝え続けるヘッドコーチと、それを素直に受け止める選手たち。その強い信頼関係が今の成績を物語っている。
A東京との頂上決戦を1勝1敗で終えた後、大野ヘッドコーチは「身体的なタフさと、全体的タフさを持ち合わせてないと、やはり勝ち抜くことはできない。CS(チャンピオンシップ)に向けて良いトレーニングになった」と総括した。バイウィーク明けも『Relentless』を胸に進化を続ければ、大野ヘッドコーチがあえて口に出していない『自分たちが求める場所』に上り詰める日はそう遠くないだろう。
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