ジェイレン・ブラウン「65試合は少し厳しいかも」
ジョエル・エンビードは1月末の時点で35.3得点、11.3リバウンド、5.7アシストを記録し、シーズンMVPの最有力候補だった。NBAオールスターのスターターにも選ばれたが、彼は左膝半月板の手術により戦線離脱し、この舞台に立てなかった。
今シーズンからNBAはMVPやオールNBAといった個人賞に、少なくとも20分以上のプレータイムで65試合以上に出場するという条件を付けた。現地1月30日のウォリアーズ戦、2試合を欠場していたエンビードが出場を決断した際、この条件がどれだけ影響したのかは分からない。だがこの試合での彼は走るにも跳ぶにもキレを欠いており、痛みを抱えたまま強行出場したのは明らかだった。挙句、ルーズボールを巡ってフロアにダイブした時、痛めていた左膝の上に相手選手が倒れてきた。これでケガを悪化させたエンビードは長期欠場となり、オールスターもシーズンMVPもその可能性を失った。
半月板の修復手術となれば、『65試合ルール』がなくてもエンビードのシーズンMVP受賞はなかっただろう。だが、このルールがエンビードに無理を強いて、結果として大きなケガを引き起こした可能性はある。NBAオールスターという『お祭り』の舞台にあっても、そのことを気にかけていたのはニコラ・ヨキッチだ。
ヨキッチはエンビードが昨シーズンにMVPを受賞するまで2年連続でMVPに輝いており、この栄誉を争うという意味ではライバルだ。それでも1月中旬に対戦した時には、コート上では全力で戦うが試合が終われば健闘を称え合い、互いにリスペクトする姿勢を示していた。エンビードが65試合の条件をクリアできなくなった今、ヨキッチはMVPに最も近い存在となったが、彼はエンビードの不在を悲しんでいる。
NBAコミッショナーのアダム・シルバーは『65試合ルール』への異論があることを知りながらも、「機能していないと決まったわけではない」と当面は続けていく考えを明らかにした。だが、選手の多くはこれをネガティブに受け止めている。ヨキッチは言う。「ケガをしている時でもプレーしろということだ。ジョエルに起きたことは、僕は気に入らない。ケガをした選手にプレーを強制するなんて……」
リーグとしては、各チームとそのスター選手がコンディション調整を重視することで、レギュラーシーズンの試合を軽んずる傾向に歯止めをかけたい意図があった。だが、それが選手のケガを引き起こし、リーグの価値が下がるのでは意味がない。そして選手たちは、現場を知らない『背広組』が決めたルールに縛られて無理やりプレーさせられるのを良しとしない。
タイリース・ハリバートンは先日、プレー中にフロアで滑って左ハムストリングスを痛めた。当初は2週間の予定だった戦線離脱を10日で切り上げて復帰したものの、やはりケガが癒えておらず再びの離脱となった。この時ハリバートンは、65試合ルールの存在により復帰を急いだことを明かしている。彼はオールNBAに選出されることで、スーパーマックス契約を結ぶ資格を得られる。今の活躍ぶりであれば、オールNBAはほぼ確実。だからこそ『65試合ルール』は絶対にクリアしなければならない。
レギュラーシーズンの試合を軽んじてはならないことは選手の側も理解している。ただ、『65試合』という数字に確たる理由はなく、ここに議論の余地があるとする意見も多い。ジェイレン・ブラウンは「何らかの賞を受賞するには、シーズンの相当な部分をプレーすべきだと思う。だけど65試合は少し厳しいかもしれない」と言い、その条件を58試合に引き下げることを提案している。