富樫勇樹

4本連続長距離を失敗するも、尻上がりに調子を上げて試合を支配した富樫

天皇杯準決勝、千葉ジェッツvs宇都宮ブレックスの一戦はディフェンスの質で上回った宇都宮が序盤から主導権を握った。宇都宮は富樫勇樹を筆頭に千葉Jのボールマンに対して激しいプレッシャーをかけ、オフェンスを簡単にエントリーさせずにタフショットを打たせ続けると、開始から約6分半を無失点に封じる。オフェンスはスペースを生かした連動したチームバスケットを展開。オフェンス優位な状況を次々と作り出してはイージーシュートを放ち、さらにオフェンスリバウンドへの意識も高く、セカンドチャンスポイントで圧倒し、24-6と大量リードを奪った。

第2クォーターに入っても宇都宮のペースが続く。オフェンスリバウンドを拾われての失点や富樫の個人技から失点することはあっても、素早いローテションでノーマークで打たれる場面をほとんど作らない。序盤と同様に、一人に頼らないオフェンスも機能し、45-29で試合を折り返した。

後半に入ると、千葉Jが反撃を開始。前半はわずか1本しか決まっていなかった3ポイントシュートを、アイラ・ブラウン、ゼイビア・クックスが続けて沈めて勢いに乗る。ディフェンスの強度も上がり失点を最小限に留めると、富樫のプルアップスリーがようやく決まり、第3クォーター残り5分半で49-42と点差を1桁に戻した。

流れを止めたい宇都宮だったが、残り4分54秒に比江島慎、残り4分にギャビン・エドワーズと、個人4つ目のファウルを犯したことで特にオフェンスの火力が上がらなかった。こうして、主導権を握った千葉Jは富樫のディープスリーで締めて、55-58で最終クォーターを迎えた。

千葉Jは追いかける展開が長く続いたが、残り7分に富樫が再びタフなプルアップスリーを決めてついに逆転。それでも、比江島が原修太から個人4つ目のファウルを誘いフリースローを決めて同点と、ここから一進一退の攻防が続く。

残り4分13秒に比江島がオフェンスファウルを犯し退場となったが、千葉Jはなかなか突き放すことができない。それでも、同点で迎えた残り1分41秒に富樫のアシストから西村が3ポイントシュートを射抜く。さらに西村は鵤からルーズボールファウルを誘発して、フリースローを1本沈めて2ポゼッションのリードを得た。こうして、残り約2分間を無失点に抑えた千葉Jは、ムーニーのダメ押しダンクも飛び出し、78-72で勝利して決勝進出を決めた。

千葉Jは富樫が5本の3ポイントシュートを含むゲームハイの29得点に加え、9アシストも記録。さらにインサイドで身体を張り続けたムーニーが19得点12リバウンドのダブル・ダブルを達成。終盤にクラッチシュートを決めた西村は「ホームの力。この言葉に尽きるのかなと思います」と言い、選手の背中を押したファンの力を勝因に挙げた。

一方、敗れた宇都宮はニュービルがチームハイの14得点を挙げ、フォトゥが13得点で続いた。比江島は11得点3アシストを挙げ、序盤に大量リードをもたらす立役者となったが、「5ファウルでコートにいれなかったことが敗因」と、終盤の大事な場面の前にファウルアウトになった自分を責めた。