文=丸山素行 写真=小永吉陽子

「ディフェンスで注目を浴びるような選手になりたい」

1月29日に行われた栃木ブレックスとサンロッカーズ渋谷の一戦。再延長にまで突入した接戦に終止符を打ったのは、遠藤祐亮のブロックショットだった。リーグを代表する「守備のスペシャリスト」となった遠藤だが、初めから脚光を浴びていたわけではない。栃木との育成選手からキャリアをスタートさせ、プロ契約を交わした後も年を追うごとにプレータイムを伸ばし、先発出場の機会を増やしていった。

Bリーグが開幕した今年は全試合に先発出場。栃木にとってなくてはならない存在となり、昨年のウィリアム・ジョーンズカップで日本代表デビューを飾った。

才能はあっても様々な理由で数字が伸び悩む選手は多い。そんな中、毎年順調にステップアップできている理由を遠藤はこう説明する。「自分のストロングポイントを毎年見つけることができたからです。今はディフェンスでチームに貢献できているので、そこを第一にやっています。代表に呼ばれることでオフェンスにも自信がつき、それがプレータイムや自分のレベルアップにつながっています」

「相手のエースにつくことが多くなり、プレータイムが増えていきました。ディフェンスを第一に考えることで、どの試合でも集中できました」と、遠藤はディフェンスに自分の生きる道を定めた。「得点を取る選手はたくさんいる」と前置きした上で、「完璧なディフェンスというものはないかもしれないですが、相手に嫌がられるようなディフェンスをどんどんやって、ディフェンスで注目を浴びるような選手になりたいです」と語る。

第2回重点強化合宿のディフェンス練習の時にも遠藤の向上心は見て取れた。テクニカルアドバイザーのルカ・パヴィチェヴィッチは遠藤に対し熱心にアドバイスを送った。「こうして代表に呼ばれてるのはディフェンスを買われてだと思うので、ディフェンスの練習で目立てるようにと心がけています」

遠藤を近くで見るとその体格の良さに驚く。185cm86kgという数字以上に分厚く屈強な体格は、この数年で作り上げたもの。「2、3年前は大きくて速い選手にやられることが多かったので、そういう選手にポストアップされても、当たり負けしないような身体作りを心がけてやりました」

守備だけでなく攻撃でも中心になれる選手を目指して

遠藤は「緊張感があって自分のためになりました」と今回の合宿の感想を述べた。その中で、世界と戦うためにディフェンスで必要となってくることは「積極性」と「運動量」だと語る。

「日本は小さいので、アグレッシブさだったりディフェンスでの連動など組織で守るということがすごく大事です。身体能力で勝てない分、アグレッシブさと激しさが必要です。海外の選手には技術以外の部分でプレッシャーを与えて、運動量を多くしてやっていかないといけません」

遠藤は残念ながら2月10日、11日に行われるイランとの国際強化試合のメンバーには入らなかった。ディフェンスのスペシャリストとしての地位は確立したかもしれないが、何かもう一つの武器が必要なのかもしれない。

遠藤自身もオフェンス面のレベルアップを課題に挙げる。「自分のチームでもボールを持つことが少ないです。ピック&ロールや合わせをもうまくならなければいけない。合宿でピック&ロールの良い練習ができました。チームに帰ったほうがよりやりやすいと思うので、うまく使いながらやっていけば、オフェンス面でもレベルアップできると思います」

そして、NBAでディフェンスの名手として有名なジミー・バトラーとカワイ・レナードの名前を挙げて、自身の目指すスタイルを説明してくれた。「ディフェンスもできて、オフェンスも最後のフィニッシャーになれるような、攻守において中心でいられるようなプレーヤーになりたいです」

日本代表候補の30人に選ばれながらも最終的に落選した遠藤は「選ばれなかったこの悔しさをチームでぶつける」とポジティブに言い放った。リーグナンバー1の守備力を誇る栃木の『最強の盾』はオフェンス力を上乗せし、リーグの優勝とその先に待つ代表の座を目指し邁進していく。