パスカル・シアカム

若手コアを失うことなくシアカムの獲得に成功

パスカル・シアカムのペイサーズへのトレードが決まった。ペイサーズはブルース・ブラウンとジョーダン・ウォーラ、1巡目指名権3つをペイサーズに送り、ペリカンズのカイラ・ルイスJr.もここに加わる。

ペイサーズはタイリース・ハリバートンの急成長とともに飛躍のシーズンを過ごしており、今回のトレードはその勢いを加速させるものになる。スピーディーかつパスファーストの全員バスケで鮮烈な印象を残し、インシーズン・トーナメントで準優勝してはいるが、現状は23勝17敗でニックスとともに東カンファレンス6位。すでにトレードに使える指名権、キャップスペースの余裕があるペイサーズにとって、今こそが勝負の時であり、契約最終年を迎えたシアカムが移籍市場に出て来たのを見逃さなかった。

ペイサーズにはハリバートンというエースはいるが、ここからステップアップしてセルティックス、バックス、セブンティシクサーズと張り合うにはスターパワーが必要で、特にパワーフォワードの補強が求められていた。

ペイサーズの高速オフェンスにフィットできる走力とバスケIQ、プレーエリアの広さについては、シアカムは申し分なく備えている。ハリバートンとマイルズ・ターナーの2メンゲームはペイサーズの大きな武器だが、シアカムの加入でそのバリエーションが何倍にも広がる。ハリバートン、バディ・ヒールド、ベネディクト・マサリン、アーロン・ネスミス、ターナーとどこからでも3ポイントシュートが打てる布陣で、シアカムのポストから得点もアシストもできる多様性はこれまで以上に生きるはず。ただしキャリア平均32.7%に留まっている3ポイントシュートの改善は、彼にとって新天地でのチャレンジとなる。

ディフェンス面では高さとパワーを備えた相手のエースを抑える役割を担うことになる。ヤニス・アデトクンボ、ジェイソン・テイタム、パオロ・バンケロといった東カンファレンスのライバルチームの大型ウイングを止められないことがペイサーズの課題で、それ以上に点を取ることで解決しようとしてきたが、シアカムの加入でここは劇的に改善できそうだ。

シアカムは契約最終年を迎えており、今シーズン中のトレードについては「契約延長を確約しない」ことで本意でない移籍を強いられるのを牽制していた。ペイサーズにとっては今シーズン終了後に彼が契約延長を選ばず出て行ってしまうリスクがあるものの、新鮮味があってシアカムにフィットしそうなペイサーズのプレースタイル、チーム内での役割、そしてペイサーズが提示するであろうマックスかそれに近い新契約を考慮すれば、この数カ月でよほどの失望を味あわない限りは契約延長に応じると見ていいだろう。

ペイサーズは再建から今のチームの勢いをもたらした若手コアを失うことなく、シアカム獲得に成功した。噂に上がっていたマサリンやジェレス・ウォーカーは放出せず。1巡目指名権3つにしても、そのうち2つは今年のペイサーズのもの、そしてサンダー、ジャズ、ロケッツ、クリッパーズの指名権のうち最も順位の低いもので、『不作』と見られている今年の下位指名権であり、額面通りの価値を手放したわけではない。

ハリバートンがハムストリングを痛めて戦線離脱しているが、幸いにも軽傷で済んだ。ハリバートンが復帰し、シアカムのフィットが進むにつれて、ペイサーズには今まで以上の勢いが出てくるはずだ。