指揮官カーはアンドリュー・ウィギンズの起用を優先
ウォリアーズにとって現地1月4日のナゲッツ戦は、ニコラ・ヨキッチの決勝ブザービーターで大逆転負けを喫する悔しい結果となった。この試合、ジョナサン・クミンガは16得点4リバウンド4アシストと上々のプレーを見せたが、出場時間はわずか19分。第3クォーター残り6分、同点の場面でベンチに下がって以降は出番がなかった。
その時点でのクミンガは、ベンチで一呼吸置いてからコートに戻るつもりだった。無期限出場停止のドレイモンド・グリーンに代わって先発パワーフォワードを務める彼は好調で、ベテラン揃いのチームに不足しがちなプレー強度を攻守に渡って出すことができる。
ただ、彼の能力は必要とされなかった。チームはその後、ナゲッツを圧倒して最大18点のリードを奪い、そこから突如として攻撃も守備も機能しなくなって猛追を浴び、最後は逆転負けを喫した。クミンガはその一部始終をベンチに座って眺めていた。
指揮官スティーブ・カーはクミンガのプレーが良かったと認めた上で、「本来なら第4クォーター残り6分か5分で戻すところだが、ウィギンズが素晴らしいプレーをしていたので交代させなかった」と振り返る。第4クォーター残り6分は、ウォリアーズが18点リードしていたタイミングで、カーの判断が間違っていたとは言い切れない。
クミンガを戻すかどうかが勝敗にどれだけ影響したかは分からない。ただ、クミンガが試合後に怒っていたのは事実であり、さらに指揮官のこの発言は状況を悪くしそうだ。「クミンガとウィギンズのコンビネーションは良くない。2人を同時に起用すると無駄が多く、実際にスタッツも良くない。2人が共存できる連携をこれから見いださなければ」
アンドリュー・ウィギンズは2年前の優勝に貢献したことでカーの信頼を得ている。それは王朝を支え続けるクレイ・トンプソンも同様だ。ただ、今のパフォーマンスではなく過去の貢献度を評価軸に組み込まれ、結果として下の序列に置かれるクミンガからすれば、これはフェアではない。彼の我慢は少しだけ限界を超えて、こんなコメントとなって表に出ている。
「時々、何をやっているのか分からなくなる。僕はパスもできるし、他の役割もこなせるのにね」
自分の実力に対してプレータイムが短かったり、与えられる役割が少なかったりして選手が不満を抱えるのは、どのチームでも起きることだ。ヘッドコーチの役割は選手個々の能力を組み合わせてチームとして最大のパフォーマンスを発揮させることで、一人ひとりを満足させることではない。ただ、自分の犠牲がチームの成功に繋がらず、その状況が長く続いて先行きも明るくないとなれば、不満は漏れ出してくる。クミンガからすれば、今シーズンのパフォーマンスでウィギンズに負けているつもりはないのだろう。試合で使えば使うだけ経験を積んで成長していく21歳の自分をベンチに置く理由が分からず、彼は混乱している。
もっとも、不満を持っていることを理由にウォリアーズがクミンガをトレードに出すと考えるのは間違っている。昨年にはジェームズ・ワイズマンを放出したが、これはケボン・ルーニーがセンターで確たる地位を築き、ワイズマンには伸びしろがないと判断した結果だ。今のウォリアーズでクミンガは最も優れたフォワードの一人であり、若くてサラリーも安いために手放すわけにはいかない。
ただ、この状況が続けば事態は悪化するばかりなのも間違いない。これまでカーは、ベテランに最大級の敬意を払ってきた。ただ、今後はそのバランスを変えていくことも必要だろう。ウィギンズは2年前の優勝に貢献したが、昨シーズンは個人的事情を抱えて半分しか稼働できず、今もベストパフォーマンスにはほど遠い。そのウィギンズを過度に尊重し、クミンガに正当な出場機会を与えないのは間違っている。
ドレイモンド・グリーンの出場停止が明ければ、クミンガの出場機会はより限られたものになるだろう。同じく3年目のモーゼス・ムーディも同じような不満を抱えているとされる。ウォリアーズはいつまでも『王朝』とは言っていられない。どういう形でウォリアーズのピークを引き伸ばすにしても、カーは自分のやり方をチーム状態に合わせて柔軟に変化させなければならない。それができないのであれば、過去の栄光がどれだけあったところで、彼もまた表舞台を去ることになる。