金本コーチ「ロースコアに持ち込むことを選手たちが徹底してくれました」
ウインターカップ男子準々決勝で藤枝明誠が前年度の大会王者である開志国際に76-74で勝利し、昨年のベスト4で敗れた雪辱を果たした。
試合の立ち上がりはともにシュートタッチが良くない中、藤枝明誠は大黒柱の赤間賢人がこのクォーターだけで8得点とさすがの決定力を見せる。また、シュートをしっかりと打ち切ってオフェンスを終えることで、開志国際の持ち味であるトランジションを封じ21-12とリードする。
見事な先制攻撃で試合の主導権を引き寄せた藤枝明誠の勢いは、後半に入っても止まらず。第3クォーター序盤には相手のお株を奪う速攻を繰り出すことで、52-39と突き放した。だが、ここから開志国際は平良宗龍が非凡な個人技で得点を重ねると、ようやく得意とする走るバスケットを展開。第4クォーター開始早々に14点のビハインドを背負ったが、残り2分半には平良のシュートで74-72とついに逆転する。
それでも、藤枝明誠はこの劣勢の中でも各選手が積極性を失うことなくアタックを続ける。その結果、フリースローで確実に得点を重ねて再逆転に成功。また、最後までしっかり脚を動かして守備をしていたことで、第4クォーター残り6秒の時点でチームファウルは1つのみ。その結果、2点リードで迎えた開志国際のオフェンスに対し、シュート前にファウルを重ねることで時間を削り、最後にタフショットを打たせることで激闘を制した。
藤枝明誠の金本鷹コーチはこう勝因を語る。「プラン通りというか、開志さんは走ってリズムを作る印象が強いので、『今日は絶対に走らせないよ』と伝えていました。ロースコアに持ち込むことを選手たちが徹底してくれました」
また、指揮官は、試合中に「楽しんでプレーしよう」と選手たちに声掛けをしていたが、選手たちがその期待に応えてくれたと振り返る。「思ったよりもリラックスしてゲームに入っていました。試合前に裏で入場を待っている時も、福岡大濠と美濃加茂の試合を見ていて、『今から自分たちの試合があるのかわかっているのかな?』という雰囲気でした(笑)。また、4つファウルをした大塚(絢心)は、コートに戻った後、ニコニコしながらディフェンスをしていましたし、安心して見ていられました」
そして、金本コーチは次のようにチームの攻守にわたる成長を示せたと続ける。「夏に走り込んだり、ディフェンスを中心にチームを作ってきました。それが最後の粘りとなり、残り6秒までチームファウルを1つでいけました。また、赤間だけでなく、周りがすごく点を取ってくれたのがチームにとってプラスだと思います」
「パスだけにならず、自分でシュートを狙っていけたのが良かったです」
この試合、藤枝明誠は2枚看板の赤間が18得点、ボヌ・ロードプリンス・チノンソは19得点と、際立っていた訳ではなかった。だが、大塚が16得点、斎藤佑真が14得点7アシストを挙げるなど、2人以外の積極的なプレーも光り、それが勝利へと繋がった。
司令塔として得点、アシストの両方でインパクトを残した斎藤は、「(赤間)賢人のマークが激しくなるのは分かっていたので、それ以外の選手がリングに強くアタックする。パスだけにならずに自分でシュートを狙っていったのが良かったです。自分がポイントガードとしてコントロールしたり、点数を取りに行かないとリズムに乗れないと思っています」と、自ら仕掛けることを重視したと語る。
夏のインターハイ、藤枝明誠はベスト8で東山に敗戦。赤間が40得点を挙げたが79-89で敗れ、あらためてチームで勝つことの大切さを実感した。そして、個々がより強気で攻めていく姿勢を高めていった成果をウインターカップでしっかり示した。斎藤も「インターハイでは、賢人に頼りすぎて負けてしまいました。そこからチーム全員の得点への意識は上がったと思います」と、自信を見せる。
また、2人に依存しないことでチーム全体がより精神面でタフになった。第4クォーターに反撃をくらい、2桁リードを逆転された場面でも、斎藤は冷静でいられたと振り返る。「苦しい時間帯というか、相手のリズムになる時間が来るのは分かっていました。だから、焦ることなくディフェンスで我慢することを徹底できました」
昨年の藤枝明誠は、ベスト8で今年と同じく優勝候補の福岡大濠を撃破するも、ベスト4で敗れてしまった。だが、1年前と比べて、確実にチームの総合力は高くなっている。引き続き、赤間とロードプリンスに頼らない全員バスケを40分間継続できれば、悲願の日本一は十分に勝ち取れる。