山﨑翔一朗

すでに全国屈指の強豪となった京都精華学園中学男女。そして、高校女子に続き、高校男子も初めて全国の舞台に立つ。就任4年目、35歳の山﨑翔一朗コーチは大会ごとにチームをステップアップさせてきた。ウインターカップ京都府予選では洛南を92-88で撃破し、インターハイ準優勝の東山を78-82と追い詰めた。『日本一』を目標に掲げて臨む1回戦の相手は帝京長岡。強豪にも気後れせず、全国デビューからの快進撃を狙う。

「いかに選手のプレッシャーを取り除いてあげられるか」

――自己紹介をお願いします。

大阪府東大阪市出身、35歳の山﨑翔一朗です。就任4年目になります。スラムダンクの影響で小学生の時にバスケットを始めました。中学に上がった年に、赴任された先生が卒業生で、在校時は府内屈指のチームだったそうです。その先生が部を強化したいと指導してくださいました。1年時から「将来は先生になってコーチがしたい」と思い始めました。大阪工業大学高校から摂南大学に進学し、バスケ部には入らずに母校の高校を手伝いました。その段階で、コーチになる意志は固まっていました。

大学卒業後、母校で講師を数年経験して、京都精華学園に着任しました。3年間、中学のアシスタントコーチをして、2019年に全国優勝。高校も中高で繋げて選手を育成したいという方向になり、私が高校のヘッドコーチになりました。中学で育った子たちを高校でさらに成長させるという流れができつつあります。

――ここまで4年間で苦労したことは?

中学が強くなるプロセスは知っていて、1期生が中学3年時に全国ベスト4に入ったんですけど、1年目は勝てなかったんです。コツコツやっていけば高校でも結果は出ると思っていました。また、「中学男女、高校女子が勝っているのに」という外発的なプレッシャーもあります。3カテゴリーが京都府を制覇して全国でも勝っているのに、高校男子が京都でベスト8ぐらいで、当時が一番しんどかったかもしれません。

――打開できたきっかけは。

一大会ごとにステップアップしていくことができました。就任後、コロナ禍になり2021年にインターハイ予選が再開された時にはベスト8のシードも落としていました。全国大会の予選を戦う度に府内でのポジションを上げられました。2022年のインターハイ予選準々決勝で、東山と延長まで戦えた。当時は留学生もいなくて、自信になりましたね。ただ、その年のウインターカップ予選でベスト4になりましたが、両洋が東山を先に倒したので、その時の周りの風当たりは一番きつかったです。ウチがダメというより、「両洋すごいよ」と思いました。今年の新人戦で優勝して周りの見方が変わりました。

――京都精華学園は中高・男女で指導を統一しているのでしょうか。

どこの学校も「ディフェンスからブレイク」と言われると思います。ウチも男女で統一しています。そこにはこだわりがあって、中学3年間、そのベースでやってきて高校から留学生が入ってきます。

――一貫指導でマンネリ化する時はありますか。

ありがたいことに目の前の敵がどんどん大きくなっていっています。入学時から全国の常連で、日本一を争うところだと、マンネリするかもしれません。トップリーグも始まり、天皇杯を勝ち上がっていこうというチームもあります。その分、マンネリ化はまだないかなと。

――強化に不可欠な練習環境が整っていますね。

山本綱義校長もずっと体育館が欲しいとおっしゃられていました。体育館を4カテゴリーで使い回していて、今年、念願の八瀬体育館ができました。初の全国大会出場も決めることができたのは、この環境が大きいです。

――今年の京都府は激戦でした。

3連戦のリーグ戦は1試合目の洛南戦前は絶対に負けられない戦いなので緊張しました。鳥羽との2戦目は蓋を開ければ107-53でしたが、試合が終わるまで気は抜けなかったです。

山﨑翔一朗

「6年の重みを常に考えている」

――指導する上で大事にしていることは何でしょう。

試合は嫌でも緊張するので、「今日の試合は大事だよ」などのプレッシャーはかけたくないと思っています。試合の責任や外野の声を引き受けるのは私の仕事。思い切ってプレーするのがみんなの仕事と伝えています。

3年じゃなくて6年の重みを常に考えています。中学1年生の時は子どもなんです。筋肉もついてきて、髭も生えて、大事な時期を預かるのは重要な任務です。輝かせてあげたいという使命感を持っていて、「6年で日本一」に対するあこがれもあります。

文武両道で、どちらも頑張らせます。中学校の時にすでに才能のある良い選手が入ってきてくれているので、足を引っ張るような指導じゃなく、力を引き出してあげたいです。

――今大会の目標は。

日本一を置いていますが、ならなければならないみたいなものは全くなく、プレッシャーも全くありません。京都府予選はプレッシャーが多くあり、坂道を降りている時にさらに背中を押されるような感覚です。元々、ウチは東山に負けています。東山が夏に準優勝してくれたおかげなので、東山に感謝して思い切って全国に行くだけです。

絶対にネガティブよりもポジティブな精神状態の方が自信がつきます。足りないものは自信ですね。まず1回戦の帝京長岡に勝てれば、すごい自信に繋がってまた強くなれるかなと。生徒の力を存分に引き出してあげられれば、日本一もなくはないと思っています。

――チームのスタイルは。

ディフェンスからブレイク、リバウンドを大事にしています。ウチのさらなる特長はクリエイティブな選手が多いことです。一つのセットプレーでも、いくつかの選択肢がある中で、選手ごとにどこまでフレームワークしてあげるか。やりすぎさせたら潰してしまうと思うので、「この幅の中だったら自由にやっていい」という言葉を与えながら、ハーフコートでもクリエイティブなプレーを展開したいです。

――キーマンは。

藤内翔真ですね。3年生唯一のスタートで、残り4人は2年生です。エースの藤内と、2年生ポイントガードの東郷然。187cmと大型で、ゲームの流れや相手の特徴をとらえるのがうまい。ゲームを作るという意味では2人に期待しています。あとは2年生の留学生ソロモン・レイモンド。日本人よりも日本人らしく、泥臭いこともできます。

――レイモンド選手は、イゾチェ・ウチェ選手(元京都精華女子、現シャンソン化粧品シャンソンVマジック)の親戚ですよね。

ウチェが3年でレイモンドが1年でした。本当にお母さんみたいな感じで面倒を見てくれました。男子の留学生は初めてで、他の留学生は女子だったので馴染めるか気になっていました。ウチェは小さい時から世話をしていたみたいで、お節介すぎてレイモンドが逃げるくらいでした(笑)。

――最後に全国のファンへメッセージを。

初の大舞台なので良い顔で楽しいバスケットをして、しかも勝ち上がって、子供たちもさらに成長してという姿をお見せできたらと思います。校長先生をはじめ、同僚の方々、他の強化クラブの先生方とも切磋琢磨させてもらいました。勝つことが1番の恩返しですし、子供たちからしたら親孝行になります。すべてを懸けて頑張ります。