「間違いを犯しても自分を再構築する機会はある」
グリズリーズを率いるテイラー・ジェンキンスは、ジャ・モラントの復帰を前に「彼のコンディションは仕上がっている」とコメントした。それは嘘ではなかった。昨シーズンのプレーオフ以来となる実戦で、34得点6リバウンド8アシスト2スティール1ブロックを記録。極め付けには113-113で迎えた残り9秒から、彼らしいステップからゲームウィナーを決めた。
ジェンキンスは言う。「彼はこの瞬間を楽しんでいた。チームメートと一緒にコートに立ってバスケができることに、この上なく興奮していた」
ニューオリンズでの試合、ティップオフの瞬間からモラントがボールを持つとペリカンズのファンからはブーイングが浴びせられた。ただ、彼は全く動じることなく、ブランクを感じさせない動きを見せた。モラントは言う。「最初は噛み合わなかったり、何をすればいいのか迷ったりするだろうと思った。僕は25試合も欠場していて、チームは僕抜きのスタイルで戦っていた。僕が復帰することでチームに変更を強いるつもりはないけど、僕はジャである必要がある」
ただ、すべては杞憂だった。チームメートが戸惑っていたのはモラント抜きでどうプレーするかであり、彼が戻って来ることは問題ではなかった。そんなチームで彼は、久々の実戦を存分に楽しみ、ジャ・モラントらしさを発揮した。
銃とSNSにまつわるトラブルで、彼は長くコートから遠ざかることになった。「自分自身を学ぶ時間がたくさんあった。辛いことも多かった。でも、バスケは僕の人生であり、ここに戻って来られたことに興奮している」
前半のモラントは7得点。チームは第2クォーター後半に0-23のランを浴びて最大24点のビハインドを背負った。それでもペリカンズのランを止めたモラントは、後半に積極性を増して27得点を奪う。グリズリーズはバック・トゥ・バックの2試合目でエネルギー不足に陥っていたが、モラントにとっては待ちに待った試合だ。「この8カ月近く、この試合のために準備してきた。可能な限りのベストコンディションで臨み、みんなのために戦えるよう努力してきた」
極め付けは同点で迎えたラストプレーだ。タイムアウト明け、リスタートのボールを自陣で受け取ったモラントは、残り時間が9秒だったにもかかわらず、落ち着いてボールを前に運び、いきなりトップスピードへと加速した。ディフェンスに長けたハーブ・ジョーンズが行く手を阻むが、それまで止められなかったモラントはやはり止められない。それまでに12本のフリースローを与え、ファウルができないシチュエーションだったこともある。
モラントはすべてを理解してリムへと突っ込み、スピンムーブでジョーンズをかわして、縦ではなく横にジャンプする不規則なアクションからシュートを放った。ボールは一度リムで跳ねて、ネットを通過──。次の瞬間、モラントはチームメートに揉みくちゃにされていた。
「復帰戦なのに激しすぎた。息は上がっていたし、足は攣る寸前だった」とモラントは言う。ベンチに戻ると酸素を吸い、ふくらはぎをマッサージしてもらって、何とか最後まで持ちこたえた。それでも最後は、最高にモラントらしいプレーで勝利を引き寄せた。「長くやっているからね。やるべき時がいつかは分かっているつもりさ」
試合後のモラントは、父親を含む彼をサポートしてくれる人たちにこう語った。「彼らはたくさんのサポートをしてくれた。少し厳しくもあったけど、それは必要なことでもあった。人は間違いを犯すけど、間違いを犯しても自分を再構築する機会はある。僕のメッセージは、サポートしてくれる彼らにも届いた。『お前は変わった』と言ってくれる彼ら自身の日々の過ごし方も変わったんだ。これは今回の一連の出来事で良かったことだ。起きてほしいことじゃなかったけど、僕の家族や周囲の人たちを次のレベルへと引き上げてくれた」
グリズリーズの連敗は5でストップ。いまだ7勝19敗と勝率5割、プレーオフ進出ラインははるか先だが、モラントが戻って来たことでグリズリーズのストーリーは変わるはずだ。