伊良部由明 境さくら

前回ウインターカップ3位の東海大学付属福岡をまとめるのがダブルキャプテンの境さくらと伊良部由明だ。境は桜花学園撃破に繋がる3ポイントシュートを決めたシューターで、伊良部は1年時からポイントガードとして経験を積んできた。初戦で対戦する四日市メリノール学院は組み合わせ発表直前に練習ゲームを行ったという間柄。エースの浜口さくら(3年)を欠いて臨む今大会、目標の2年連続メインコート、そして日本一への思いを聞いた。

「『今年は勝てないチーム』と言われたのは苦しかった」

――境選手、自己紹介をお願いします。

 宮崎県三股中学校出身、シューティングガードです。3ポイントシュートとディフェンスが得意です。好きなタイプはバスケットとかスポーツしている人です。米須玲音選手(日本大)のファンです。

伊良部 チームキャプテンとして、常にチームを最優先して、全員とコミュニケーションを取ります。1年間苦労もあったと思うけど、まとめてくれて信頼が厚いです。ただ。プレー中と違って、普段はめっちゃふわふわしていて、プライベートはアホです(笑)。

 違います(笑)。由明はポイントガード、ゲームキャプテンとして、私が気付けないところを気付いてくれます。由明抜きではチームは成り立たないですし、二人三脚でやってきました。チームのことしか考えない3年間でしたが、由明とダブルキャプテンになれてよかったです。

沖縄出身で『沖縄タイム』で行動します。朝ごはんを食堂で全員で食べるんですが、みんな由明を待っているんですよ。納豆を一生懸命混ぜてご飯に乗せて、全部混ぜて、口いっぱいにしてご飯を食べるんですが、準備も食べるのも全部遅いです(笑)。

――3年間を振り返って。

伊良部 3年生になってから、なかなかチームを勝たせられなかったことはキツかったです。求められていることは分かっているのにできなくて、足を引っ張ってしまいました。勝ち切れなくて、応援してくれる人に申し訳なかったです。

盛り上がったのは県予選福岡大学附属若葉戦で負けていて、最後に伊東友莉香(2年)が逆転シュート決めたことです。あきらめずに全員が戦う気持ちを持っていたから勝てて、自分の気持ちも上がりました。

 インターハイ県予選で精華女子に負けて、直後の九州大会も優勝できませんでした。去年もらった賞状やトロフィーを全部返す形になって、『勝てないチーム』って周りからも言われたり、「去年は」って比べられました。キャプテンである私は「チームにできることがもっとあったんじゃないか」と考えましたが、正解が分からないままウインター予選を迎えるまでの時期は苦しかったです。

うれしかったのは、県予選で精華女子に勝った時です。勝てたうれしさ、チーム全員でつかんだ優勝の喜びが大きくて。若葉戦の勝利からチームとして上がっていって、精華に大差で勝てました。

――境選手は前回大会、桜花学園との3回戦でミラクルな3ポイントシュートを決めました。桜花にあそこまで戦えたのは自信に繋がりましたか。

 応援してくれる人が増えました。本当に感謝しかないし、あの場面も含めて、応援してくれる方やファンの存在はうれしいです。インターハイ予選で勝てなくても応援してくれた方もいます。一方で応援してくれなくなった人もいました。勝っても負けても見てくれる人を楽しませるバスケットが目標になりました。

――エースの浜口さくら選手がケガで大会に間に合わないと聞きました。

伊良部 浜口が一番辛い思いをしていると思います。今はチームに何ができるのかを考えて、笑顔でいてくれます。彼女の振る舞い、貢献しようという気持ちから、コートに立てなくてもずっとエースなんだと思いました。抜ける穴は大きいですけど、周りがレベルアップして、一致団結して浜口をメインコートに連れて行きたいです。

東海大学付属福岡

「日本一へ、毎日の小さな目標を達成していく」

――チームが成長した部分は。

 精華さんに勝つのが予選までの目標でした。勝って、次はどうすれば日本一になれるのかと目標のレベルが上がりました。毎日、小さな目標を立てて、達成できたかどうかを個人、チームとして反省することで、レベルは上がってきていると実感します。

伊良部 上級生が少ない中、下級生が試合に多く出ています。学年関係なくコートの中で言い合えるのが強みなので、コミュニケーションが前よりも取れるようになって、自分たちから先生に質問もしますし、どうしたらいいのかをみんなで考えられるようになりました。

――寮生が多い中、どのように結束力を高めましたか。

伊良部 遊びに行くことはあまりないんですけど、相部屋は下級生と上級生で一緒です。寮に帰ると、部屋でも食事も一緒で家族みたいな感じです。後輩が気遣わずに話してくれます。相部屋の後輩の誕生日は全員で祝った後に、部屋でも祝うようにして、個人的にも後輩たちが楽しめるように考えています。

――初戦でメリノールと対戦します。

伊良部 組み合わせ発表の前日にメリノールさんと練習試合をしました。その時は相手のエースや得点源にアジャストできず、内容の悪い試合になってしまったんです。そこからビデオミーティングを重ねて相手の弱点や自分たちのストロングポイントを確実に生かせるようにゲームメークを考えています。一人ひとりが役割を果たして、集中していれば絶対に勝てると思います。

伊良部由明 境さくら

「留学生が走れるのが強み、全員で速い展開を」

――今年のチームのストロングポイントは。

 今年はアミが走れるのが一番の武器です。留学生が走れるチームは少ないし、それに加えてインサイドに(伊東)友莉香がいます。全員が速いバスケットを展開できます。ディフェンスは1対1が強くて、ローテーションなどの動きも全員が理解しているのが強みです。

伊良部 流れが悪い時間帯にシュートが入らなくなると、リバウンドを取れない間に流れを相手に渡してしまうので、シュートの決定力は上げたいです。相手の流れを止められないまま、やり続けてしまうのは弱点なので、確実に決め切って、リバウンド、ルーズボールへの執着心はどこにも負けないように改善していきたいです。

――宮﨑優介コーチとの3年間を振り返って。

 1年の後半に足首をケガして手術しました。毎日のように電話をかけてくれて、気にかけてくれました。キャプテンになって、うまくいかないことも多い中、その度にバスケノートに赤ペンで、「集大成、実現してください」と書き込んでくれました。試合に向けて「先生も楽しむから、3年生4人が力を合わせれば、絶対優勝できます」ということも書いてくれます。怒られたりして、理不尽なことがあったりしても生徒と向き合ってくれます。「こんなバスケットもあるんだ」と知らなかったアイデアも教わりました。大好きな先生と一緒に日本一を取りたいです。

伊良部 オンコートでは厳しいし、バスケットに対してのこだわりが誰よりも強いです。選手よりもバスケが好きなのかと思うくらい。1年生から試合に出させてもらって、うまくいかない時には強く言われるんですけど、愛情があるからこそ言ってもらえると思っています。宮﨑先生のバスケットがしたくて入学したので、選んで間違いはありませんでした。最後は先生を胴上げしたいです。

――お世話になった方々へメッセージを。

 中学から親元を離れて下宿して、高校でも離れて、母と父がいなかったら東海にも来ていないと思うので、両親に感謝しています。キャプテンになってから大変なことが多くて、周りにも言えなかったから、母に当たってしまったこともありますが、全部受け止めてくれて、応援してくれて、感謝しかありません。そのためにも優勝したいです。笑顔で1番楽しそうにバスケットする姿を皆さんに見てほしいです。

伊良部 粘り強いディフェンスから速いトランジションのオフェンスを注目してほしいです。見ていて一番面白いバスケットをするのが東海です。親元を離れてから、自分のことを気にかけて、金銭面でもメンタル面でも支えてくれた両親、応援に来てくれて、身の回りのことを常に気にかけてくれた姉、兄、家族に、成長した姿を見せて日本一になって恩返しがしたいです。