セス・カリー

文=神高尚 写真=Getty Images

リラード欠場の試合、マッカラムとカリーが大活躍

トレイルブレイザーズはデイミアン・リラードとCJ・マッカラムの2人のエースを中心に順調に勝利を積み重ねていますが、先日のホークス戦ではそのリラードが今シーズン初めて欠場することになりました。平均26.2点、6.2アシストのリラードの代役はセス・カリー。リラードとタイプが違うものの、3ポイントシュート成功率48%のシューターを起用し、ガードコンビが得点する形を継続しました。

リラード不在で気合が入っていたのか、試合開始からマッカラムの動きが非常に良く、早い反応で6つのリバウンドを奪うと、自分でボールを運んでオフェンスを組み立てます。ポイントガードのリラードの役割をそのまま引き継ぐ形で、起点となってアシストを重ねれば、いつも通りスクリーナーを利用してアウトサイドからシュートを決めていきました。第1クォーターだけで12点4アシストのマッカラムに引っ張られ、チームで40点とリラード不在を全く感じさせない順調な滑り出しになりました。

しかし、第2クォーターになりマッカラムがベンチに下がると一気にホークスのペースに。ルーキーのトレイ・ヤングと2年目のジョン・コリンズを中心にしたパスワークで次々にイージーシュートに持ち込まれ逆転されてしまいます。再建中のホークスですが若い選手にチームオフェンスが浸透し、魅力的なパッシングゲームを展開できるまでに成長しており、その勢いに逆らうことができず、前半は互角で終わりました。

前半はマッカラムに悩まされたホークスでしたが次第に対応していき、ヘルプディフェンスを複数用意し、ドライブを止めた上でパスが出てくる先を読んで止めていきます。このディフェンスの動きを見たブレイザーズは、後半早々にカリーをベンチに下げ、ガードをマッカラムだけにしたビッグラインナップにシフトします。

この作戦によって第3クォーターはリバウンドを記録しなかったマッカラムですが、ポイントガードとしての役割がより明確になり、特にミスマッチが多くなったモーリス・ハークレスにパスを通していきます。普段は自分が走る役割だったのが、逆に走る選手に合わせてパスを出す役割に変更されても質の高いプレーを披露しました。またパス&ゴーでリターンをもらってのシュートも決め、再びチームにリードをもたらしました。

しかし、マッカラムがベンチに下がった第4クォーター前半はベンチメンバーがオフェンスを構築できず、この試合30点のヤングと21点のコリンズに加えて、誰もが積極的に3ポイントシュートを打つホークスのオフェンスに再び追い上げられ1点差に迫られました。

勝負どころのブレイザーズは後半に限ればリーグで2番目に多い得点を稼ぐ勝負強いリラードに託すチームであり、リラード不在の試合で若いホークスに勢いを与え第4クォーター後半を迎えてしまったことは、嫌な空気を感じさせました。

しかし、そんな空気を払拭したのはセス・カリーでした。ゲームを組み立てるマッカラムからのパスを受け3ポイントシュートを連続で決め、このクォーターだけで11点を稼ぎ、見事にリラードの代役を務めました。そしてマッカラムの10本目となるアシストを受けたハークレスのレイアップがとどめとなって接戦を制しました。

リラードとマッカラムという2人のガードを中心に構成されているブレイザーズですが、今シーズンのマッカラムはシュートに安定性を欠き、リラードに頼る試合が増えていました。そんな中で迎えたリラード欠場の試合でマッカラムは28点を稼ぎながら、普段はリラードが担当するアシスト役をこなすだけでなく、リバウンドにも積極的に絡み、キャリア初のトリプル・ダブルを記録。彼が得点以外でも貢献することで大きなリードをもたらしました。

その一方で、この試合チームで120点を奪いながらベンチメンバーは22点のみと結果を残せませんでした。スターターの強さは上位チームにも通じるだけに、ベンチのレベルアップが求められる中で、普段はベンチから出場するカリーが大事な3ポイントシュートを連続で決めて勝利に貢献したことはシーズン後半戦に繋がるポイントになりそうです。昨シーズンをケガで棒に振り、今シーズンも序盤は苦労しましたが、次第に調子を上げてきています。オールスターウィークエンドの3ポイントシュートコンテストに参加することも決まっており、飛躍が期待されます。

シーズンも折り返しを過ぎ、各チームが対戦相手のデータから様々な対策を立てています。そうなるとデータを上回る要素をチームもたらす選手が重要になります。リラードがいなかったからこそ目立った2人のガードはシーズン後半戦のキーマンになりそうです。